高橋由佳利さんへのファンレター

1999.9.5から47544番目の訪問. 最終更新[2001.6.12]
 りぼんを舞台に、「お月さま笑った?」、「プラスティック・ドール」等の傑作を生み出した高橋由佳利さんの作品紹介を兼ねたファンレター集です。投稿も受付中。

「お月さま笑った?」

by HIT(1999.9.5)

 高橋由佳利さんは、80年代前半にかけて、「りぼん」で活躍した作家です。短編も長編もこなす作者ですが、今回は初の単行本の短編集の表題作でもある「お月さま笑った?」を紹介してみましょう。この作品は、りぼん1979年10月号に掲載されました。

 高橋由佳利さん描く主人公の少女達は、一風変わっています。元気少女、いたいけな少女、いじけた少女などは、他の少女マンガでも出てきますが、作者の描く少女達は、いじけを通り越して、「しらけている」のです。これは、りぼん漫画賞に入選したデビュー作『コットンシャツに夏の風』(1978年りぼん夏の増刊号掲載。りぼんマスコットコミックス「お月さま笑った?」に収録)から、一貫して変わりません。いろいろな少女がいる中、作者は、こうした諦めを通り過ぎてしらけてしまった少女達のハッピーエンドを描き続けます。こうした、気が強く、しらけてしまった女性というのは、実は、私のタイプでもありまして、そういった意味で、作者の作品群に引かれるのかも知りません。

 この作品は、いとこ同志3人で切り盛りしているお好み焼屋「月夜亭」が舞台です。主人公のチイは、いとこの耕平が好き。でも、耕平は店の事ばかりで、昔の夢(宇宙飛行士)も忘れたみたいだし、ライバルも登場して....。というものです。ストーリー自体は、少女マンガにはよくあるもので、とりたてて珍しいものではありません。でも、この作品の良さは、ラストシーンのうまさにあります。

 昔の夢を捨てた訳じゃない、という耕平は、毎晩、店の帰りに月を見上げて、心をなごませていた、とチイにいいます。それから、月をじっと見ていたら、時々チイの顔に見えてくると。「私の顔はあんなに真ん丸か」と怒るチイに、耕平が続けます。

耕平「それから どうなるか 知ってる?」
チイ「知らない! どうせ べちゃっと つぶれでも するんでしょ」
耕平「……それから 笑うんだ」
チイ「え?」
耕平「笑うんだ」

 最後は、チイの驚いたような感動したような横顔で終わるのですが、このラストシーンには、やられました。まさか、こんな告白シーンがあるとは。

 今まで好きだとも何ともいっていなかった耕平が、(昔の夢である)月を毎晩見ていたら、自分の顔に見えてきて、そしてそれが最後には笑うとは...。こんなセリフを聞いたら、もし私が女性ならば(^^)、感動の余り、例え好きでない人でも、告白を受け入れてしまいそうです。

 私も、かなりの数の少女マンガを読破していますが、こんな変わったそして感動した告白シーンはありません。初の単行本の表題作になったのもうなずけるというものです。

 単純なラブストーリーでは飽き足らず、少しヒネたラブストーリーと感動を味わいたい方にお勧めします。

「お月さま笑った?」(りぼんマスコットコミックス・集英社・新書判)

P.S.この作品のラストシーンは、新書判ではなく、雑誌サイズの大判で読みたいですね。(今更無理だけど。)


「倫敦階段をおりて」

by HIT(1999.9.7)

 高橋由佳利さんのファンレター2作目は、短編の「倫敦階段をおりて」です。この作品は、りぼんマスコットコミックス『過激なレディ(後編)』(集英社・新書判)に収録されています。

 この作品は、高橋由佳利さんお得意の、ちょっとヒネた少女の恋の物語です。留年と失恋を同時に体験した高校3年生の主人公一乗寺此春さん(というと、なにやら谷川史子さんの『抱きしめたい』(単行本「一緒に歩こう」に収録)に設定が似ていますが、もちろん、こちらの作品の方が先です。)が、たくましく過ごし、素直に自分の気持を言えないうちに、卒業式が来る、というものです。

 ハデな同級生や元担任の先生を交えて、なかなか面白い人間模様が描かれています。

 特に、印象的なのは、主人公がいいと思っている少年が、卒業記念に「北壁」を踏破する、というイベントです。ちなみに、北壁というのは、『理科棟の北側の壁』です....。

 この説明を読んだ時は、あまりの意外さに、おなかをかかえて笑ってしまいました。

 このシーンは、何のことはない、ぼろぼろの校舎の壁をフリークライミングするのですが、なかなか感動的です。伝説の部員の正体も明らかになったり、最後は、もちろん大団円します。

 少しヒネた少女と少年の感動的なラブストーリーをどうぞ。


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