by HIT (1997.12.11)
プチコミックに長期連載された「麒麟館グラフィティー」をまとめて読む機会がありましたので、感想を。
吉村明美さんは、この連載の前に、「PSあいらぶゆう」(この作品、単行本になってないみたいで、大変残念です。)という連載があり、結構気に入っていましたが、その後の初の本格的な連載が、この「麒麟館グラフィティー」です。私も連載が始まった時には、まさかこの作品が5年以上にわたる長期連載(単行本も13冊+番外編)になるとは、思いませんでした。
ストーリーは、「札幌の古風なアパートの管理人妙は、雪の夜人妻の菊子を拾った彼女は、自分を人間として扱ってくれない夫、宇佐美から逃げてきたところであった。実は、宇佐美は妙が長年あこがれていた人であった。その後、菊子は妙といっしょに住み、菊子に思いを寄せる下宿人の火野などもからんで...」というような物です。
ストーリーだけを見ると、ありきたりのようですが、これが結構半端じゃありません。特に、悪役の宇佐美の極悪非道ぶりは徹底しています。それでも、悪の魅力といいますか、仕事は人一倍できてたりして、不思議な人物です。また、菊子に思いを寄せる火野の献身ぶりも徹底しており、見ていて痛々しくなるくらいです。妙や菊子を中心に、登場人物の心理的な葛藤が見事に表現されており、暗く重いストーリーなのに、毎話すがすがしい気分になれる不思議な作品です。
実のところ、私、吉村明美の絵は好きではありません。また、暗い話も大嫌いで、コメディー系統の方が好きなのですが、吉村さんの作品については、なぜかすんなり読めてしまいます。多分、毎話読み切りスタイルになっており、各話にかならず、それなりのカタルシスがあること、毎話ごとのテーマが明確である、という点もあると思います。
吉村明美は、この作品のあと、「薔薇のために」というこれまた長大連載(全16巻)をしているようです(まだ読んでいない)が、吉村作品の原点(?)麒麟館をとりあえずお勧めします。
「麒麟館グラフィティー」全13巻+番外編 フラワーコミックス(小学館)