よみの国研究所 > マンガ探偵団 > セントポーリアの村へ >

「数日間のできごと」Vol.2

〜マーカスとルディのエピソード〜

参考:水上澄子「花かざりの道」,「銀色のリフレイン」

by しい [2000.10.3]

[ 戻る | Vol.1 | Vol.2 | Vol.3 ]


マーカス,ルディの後をつける

 よかったら案内してあげて、 とおばさんには言われたけれど。 別にルディは案内なんていらないような。 だって、 あちこちわかったふうに歩いてるもの。 ぼくは今まで船の上でばかりくらしていたから、 同じくらいの年のやつとなんて友だちになることもあまりなかったし―――。 ジョディはおばさんの手伝い中。 つくづく、 えらい。 にしても、 あいつ、 何してんだろ? 庭師のドンとずっと話をしてたり。 ぼくは植え込みをまわってちょっと近づいてみた。

「―――植物はね、 人間のことがわかるんですよ。 がんばって大きくなって、 きれいな花をさかせておくれと願って育てるのとそうでないのとではぜんぜんちがう。
 人間どうしが言葉をかけあうように、 おはようとか、 調子はどうだいとか、 きれいに咲いたらちゃんとほめてあげたり……そうやって気にかけてあげると植物だって喜ぶんですよ。 こっちがいっしょうけんめい世話をすれば、 花のほうもいっしょうけんめいに咲いてくれる。 葉だって茎だってシャキッとしてね。 反対に、 いいかげんにいやいやながら世話しているとね、 植物たちもだんだん元気をなくしていってしまう。 自分の身に絶望して死んでしまうこともあるんです。 人間の子を育てるのとおんなじことなんですよ」
「ふうん―――。 それだからぼくのあの花は枯れちゃったのかな」
「ルディぼっちゃんの花ですか? どんな?」
「うん、 あのね―――」

 話のあとでルディは今度、 家政婦のばーさん、 もとい、 グレイスのところへいった。 それにしてもつけまわしたりして、 ぼくはいったい何をしてるんだか。

「―――お野菜だってね。 たとえばほら、 このキュウリ。 こっちのトマトも。 ナイフでいざ切られんって時にはね、 きっと断末魔のさけび声をあげてますよ。 気も狂わんばかりにもう、 キャアアーッとね。 野菜だって生きてるんですもの、 必死ですよそれは。 だからお料理をする時には、 ゴメンナサイね、 そしてありがとうねと思いながら―――あ、 実際にいう時もありますけどね私は―――まあ、 そうやってお料理をするわけです。 私たちは植物やほかの動物たちに生かされているワケですよ」
「―――でもさ。 そんなこと聞いてしまったら、 やたらに食事を残したりはできなくなるね。 ぼくもいつもは家だと―――」

「マーカス。 ―――なにコソコソ、 やってんの?」
 いつのまにジョディ! ジェスチャーでダ・マ・レとやってみせたのに伝わらないのは、 どっちが良くてどっちが悪いんだか。 ただ返ってきたのは、 「へんなマーカス」 。

 この夏のおわりごろ、 ぼくもはじめての学校へかよう。 同じくらいの友だちだってできるだろうけれど、 でも―――とうさんとずっと海でばかり暮らしていたぼく。 うまくやっていけるか心配してる。
 ほんとうは興味があるんだ。 ミス・シャロンのことを 『シャロン』 とよぶのは、 いくらおばと甥と言えど気にくわないんだけど。 ルディの通う学校はどんななのか、 とか聞ければななんて思ってもみたり。 ―――ウイリアムおじさんと血のつながりがないのにおじさん、 と呼ぶこととかも。 今さらって気もするんだ。 だって―――。
 おばさんは、 ぼくのことを見ぬいて 「カンタンだわ」 なんて言った。 首をかしげるぼくに 「川へつりにでもいってみるなんてのはどう」 とさらに言った。

 はじめジョディも行くと言った。 でも何とかひとりで出かけることに成功。 でっちあげたのは 『川での息とめ練習』。 聞いてピューと逃げていった。 ごめんなジョディ、 また今度相手してやるからさ。

[ 次(Vol.3)へ ]


[ お茶とパイの店(掲示板) | セントポーリアの村へ | マンガ探偵団 | よみの国研究所 ]