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曽祢まさこさん/作品紹介

最終更新:[2000.3.20]


「夢の園のミア」 by HIT [1999.12.6]

 ホームページを設けた時から、曽祢まさこさんの作品紹介第一号をどの作品にしようかと迷っていたんですが、少し変わった作品の「夢の園のミア」に決めました。

 曽祢まさこさんというと、最初の単行本である「幽霊がり」に代表される、サスペンスー&ホラー作品が有名で、次に「不思議の国の千一夜」に代表されるファンタジー物とくるのですが、この作品「夢の園のミア」は、そのどちらにも属さない作品です。あえていうのなら、「世にも不思議なラブストーリー」というところでしょうか。

 表題作の「夢の園のミア」は、不思議なお話しです。主人公もミアは、9歳の時、逃げた青い鳥をさがして、マリオンに会います。いっしょに逃げた鳥を探してくれたマリオンの夢を何度も見るミアですが、現実のマリオンは、遠くに引っ越していってしまいます。でも、夢での邂逅はそれからも続き、青い鳥を二人で探す日々は続くのでした。

 しかし、あるとき、転機が訪れます。青い鳥をくれたリンジーおばさんの新婚旅行の写真の中に、マリオンを見つけたのです。おばの協力もあって、マリオンの住むローズベィに転校することに成功したミアは、マリオンとの再会を楽しみに待つのですが...。

 誰でも、恋をすれば、好きな人の夢を見ることはあるでしょう。でも、それは、自分の夢の中だけの話であって、現実とは違います。しかし、相手も夢の中で自分の夢と同じ夢を見ていてくれるとしたら、これはもう現実に会ったのと同じことです。ミアとマリオンの夢は、こういう不思議な夢でした。

 二人は、現実には、たったの1回しか会っていないのですが、不思議な夢の中では、毎夜のように「現実に」出会っています。ただ、世間の常識からすると、夢はあくまでも夢ですから、ミアもあの疑似現実夢を、現実ととらえていいのか、単なる夢ととらえていいのか、悩みます。このあたりの心の葛藤が、この作品のメインテーマともいえるもので、何度も出てきます。

 ミアがマリオンと再会するべく、ローズベリィに転校するのも、必ずしもマリオンがそこにいて自分を待っていてくれる、と確信している訳ではなく、もしいなくても、また、いたとしても6年前にたった一度だけあった自分も事を忘れていても、その事を確かめる方が、現在の宙ぶらりんの状態よりはまし、という理由からです。こうした細かい心理描写があって、この作品は、単なる不思議なラブストーリーではなく、厚みのある作品に仕上がってます。

 デイビスというマリオンの親友とのエピードもうまくはめ込まれており、ミアの心の揺れと葛藤は、読者の胸に響いてきます。最後は、私好みのハッピーエンドに終わるのですが、読後感は、単なるハッピーエンドを読み終えたあたたかさだけでなく、奇妙な出来事に出会った感じ、例えるなら、良質のSFを読んだ後の感じも味わえます。

 何とも不思議な感じのする、素敵な作品です。

 同時収録作品は、「少女たちは午後…」と「しあわせ日記」の2作品です。

 「少女たちは午後…」は、曽祢まさこさん得意のホラー系の作品。男の子に仕返しする少女たちの話ですが、男性の私としては、自分にこの力が使われたらどうしよう、と少々背筋が寒くなった作品です。

 「しあわせ日記」は、日本が舞台のごく普通の日常的なお話です。いってみれば、アンハッピーエンドが大嫌いな尚子の、アンハッピーエンドなお話です。でも、自分がアンハッピーな理由に気がついて終わっていますので、今度は、きっとタイトルの通り、しあわせになれますよ、きっと。

曽祢まさこ「夢の園のミア」(講談社コミックスなかよし KCN288)


「扉の向こうには…」 by HIT [2000.3.20]

 曽祢まさこさんの作品紹介の第二段は,ハロウィンコミックスから出ている「扉の向こうには…」です.

 この作品集には,「扉の向こうには…」,「鹿の住む里」,「ジェニーの微笑」,「魔ケ淵の公園」,「幽霊がり・魔犬シリウス」の5作品が収録されています.いずれも,このコミックス・シリーズのテーマである「怪奇と幻想のこわい」作品です.

 表題作の「扉の向こうには…」は,1983年週刊セブンティーン40号に掲載された作品です.「開けてはならない扉」にまつわるオムニバス風の作品です.

 出てくる話は,「妻との約束を違えて,妻の秘密を見てしまった夫」,「古城のないはずの扉を開けそうになった子供」,「妻の浮気現場を押さえようとして扉を開けてしまった嫉妬深い夫」の三話です.一番恐いのは,最後の話です.扉を開けることによって,度を越えた嫉妬心から開放され,良い夫になり,大団円...のはずですが,あっと驚くどんでん返しが待っています.曽祢まさこさんらしい,考えられたストーリーの傑作です.

 「鹿の住む里」は,1987年ハロウィンナイトNo.2に掲載された作品.絵柄が大分現在風になっています.奈良旅行で鹿に追いかけられる女性の話です.追われる理由が分からないのが,ちょっと恐い話です.オチはない方がもっと恐かったような気もしますが...

 掲示板でもおなじみのはんすかさんが大のお気に入りの「ジェニーの微笑」は,1981年なかよし11月号に掲載さふれた作品.私もリアルタイムに読んだ作品です.

 ジェニーは,とてもかわいらしい女の子.だけど,ちょっとわがまま.誕生日に祖母から自分にそっくりな人形をもらいます.「人形は魂をうつす鏡なり」という手紙のついたその人形をリトル・ジェニーと名付けて,かわいがりますが,飽きっぽいジェニーは,すぐに忘れてしまいます.

 その後,ジェニーのわがままは,ますますエスカレートして,どんどんいやな子になって行くのですが,なぜか表面のジェニーはどんどん愛らしくなって行きます.どんな悪意もジェニーの微笑で許されてしまうのです.

 しかし,ある日,戸棚の奥にしまったリトル・ジェニーを見つけたことで,悲劇が起こります.そして,世にも恐ろしいラスト・シーンが...

 人の内面と外面のギャップを人形を媒介して描き出した傑作だと思います.

 しかし,掲示板にも書きましたが,この作品.夜遅く見るべきではありません.眠れなくなりますので,ご用心.

 「魔ケ淵の公園」は,1986年Me-twin夏の号に掲載された作品.魔の世界とつながっている,どこにでもあるような小公園を舞台にした3つのエピソードのオムニバス作品です.

 第1話「砂場の怪」は,物語の導入部.この公園の機能の説明(?)です.第2話「なに描いているの?」は,絵に描いたとおりのことが起こるという恐いお話.こんな場面に自分が出会ったら,パニックになってしまいそうな,ヒタヒタと迫る恐怖があります.第3話「ミッドナイト・パーク」は,別の意味で恐い作品.公園のアベックが魔に襲われる話なのですが,魔に襲われたことよりも,恋の不実の方を嘆く女性に,思わずうーんとうなってしまうと同時に,笑ってしまった私は,不謹慎でしょうかね.

 最後の作品「幽霊がり・魔犬シリウス」は,1975年別冊なかよし1月号に掲載されたもので,いわずと知れた,曽祢まさこさんの代表作「幽霊がり」シリーズの第2作です.

 このシリーズは,目が見えない代わりに,不思議な力を持つダニエルが,その力を使うことで,難事件を解決していく,というものです.ただし,彼は誰からも感謝されないし,逆に失うものも多い,という本当に,読むのがハードな(辛い)シリーズです.

 今回の作品は,ダニエルに初めてなついた犬のシリウスの話.誘拐して殺された女の子の飼い犬だったシリウスは,女の子の復讐に魔犬へと変化します.初めて心が通じ合った仲間のシリウスを退治しなければならないダニエルの心の葛藤は,見る者をしめつけます.しかし,結果的には,これで良かった,という若干のカタルシスと,「人にいぬを裁く権利があるのだろうか?」に始まる,数々の考えさせられる命題が頭の中を駆け巡る,とてもとてもハードな,すばらしい作品です.(もちろん,KCなかよしの「幽霊がり」を読んで置かないと.背景が分からず,面白みが半減するのは,確かです.)

 以上,厳選された作品ばかりが収められたこの短編集は,曽祢まさこさんの恐怖系マンガの入門書といってもいい位の,本当にお勧めの1冊です.ぜひ,古本屋で見つけて,読んでくださいね.

曽祢まさこ「扉の向こうには…」(ハロウィンコミックス/新書判/朝日ソノラマ)


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