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谷川史子/作品紹介

最終更新:[2000.9.7]


『花いちもんめ』 by HIT (1999.4.20)

 谷川史子さんのデビュー作を含む5作品が載っている単行本「花いちもんめ」の紹介です。

 谷川さんは、デビューは1986年と古いのですが、デビュー当時は極端な寡作でして、この5作品がたまるまで、4年の歳月がかかっています。

 デビュー作の『ちはやぶるおくのほそみち』は、りぼんの新人漫画賞の受賞作ですが、かわいらしい絵柄と、新人離れした表現力には私も感動しまして、次回作を楽しみにしていました。しかし、いつまでたっても次回作が掲載されず、「もうマンガをやめてしまったのか」と思ったものです。

 1年以上経過して、やっと受賞後第一作『祭・長月』が増刊誌(りぼんオリジナル)に掲載されました。この作品は、谷川さんの出身地である長崎を舞台にしたストーリでした。

 3作目の『きみの夏にとびたい』は、更に1年以上経過した後の発表でしたが、これが私は大変気に入りました。次の4作目『早春(はる)に降る雪』も水準の高い作品で、デビュー作のアレンジ版5作目『花いちもんめ』と傑作が続き、私の中で谷川さんの評価は確立しました。

 さて、デビュー作『ちはやぶるおくのほそみち』と表題作『花いちもんめ』は、ほぼ同じ設定の同じ話です。兄の高校教師を慕う女子高校生の淡い恋の物語です。何でも、谷川さんには、高校教師をする兄がいるそうで(巻末の告白物語より)すが、兄とは別に何ともないようです(^^)

 花いちもんめの中には、とても気に入った台詞があります。主人公の桜子が、『実の兄を好きだなんておかしい』と男の子に問い詰められた時に
「しってる
でも いまは どうしようもないの
そういうことも あるの」
というものです。妙にリアリティーがある台詞で、感心したものです。

 『きみの空に飛びたい』は、谷川さん初の明るめ(?)の作品です。主人公小萩の明るさと、ハイジャンプの小松少年のりりしさ(その後の谷川マンガのかっこいい男の原点?)をお楽しみ下さい。そして、この頃から、谷川さんの絵は、メキメキかわいくなってきまして、本当に絵に見入ってしまう位でした。

 クライマックスのハイジャンプのエピソードは、絶対にありそうもない事で、谷川さんも絵にも表現しにくかったようで、分解写真風のいかにも説明風のコマになっているのは、笑えてしまいます。

 『早春に降る雪』も心暖まる作品です。主人公の少女が、最初は何とも思っていなかった先輩に心が傾いていく様が、丁寧にエピソードを重ねることによって描かれています。

 この作品中にも、印象的な台詞がいくつかあります。

「会いたいなあ ただ会いたい
それだけで 会いにいっても……
いいかな?」

「この気持ちを
 恋とよんでは いけないのなら
 あたしは 恋なんて
 しらなくていい」

 どちらも、主人公の少女の心理を素直に的確に表現する名台詞です。

 特に、後者の台詞などは、その後の、私の実際の恋愛の中で、心の中がぐちゃぐちゃになった時など、この台詞によって、何度、自分に言い聞かせ、また自分を励ますことがあったでしょうか。実体験でもお世話になった作品です。

「花いちもんめ」谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

By HIT(1999.4.20)

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『きみのことすきなんだ』 by HIT (1999.4.21)

 谷川史子さんの2冊目の単行本です。この当たりまで、私はリアルタイムで(雑誌上で)谷川作品を読んでいました。以降は、単行本での出会いとなります。

 この単行本の収録作品は3本。表題作である『きみのことすきなんだ』(りぼん本誌初掲載作品)と、連作(あるいは本編と続編)の『乙女のテーマ』、『騎士(ナイト)のマーチ』です。

 表題作の『きみのことすきなんだ』は、タイトルから分かるように、男の子の側から描かれた作品で、主人公が、彼女の奈美ちゃんのかわいさに感動するシーンが何度も出てきます。でも、本当に奈美ちゃんはかわいい。学生時代に、こんなかわいい恋がしたかったなー、と思える作品です。二人の真摯な恋に、感動すること請け合いの作品です。

 『乙女のテーマ』は、その後谷川さんが多用することになるオムニバス連作形式の初作品です。三人の少女、晴、文香、由子の恋の物語です。第一話が晴、第二話が文香が主人公となっており、由子のエピソードは続編に当たる『騎士のマーチ』にあります。

 どのお話しも、すてきで、そして少しだけおかしなエピソードで彩られた恋の物語となっています。特に、第一話の晴が「グンちゃん」と呼ばれることになったエピソードなど、ばかばかしくて、笑えてしまいます。

 谷川さんの作品は、主人公が一生懸命で、シリアスに流れる傾向が強いですが、こうしたマンガらしいばかばかしい展開もいいですね。

「きみのことすきなんだ」谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

By HIT(1999.4.21)

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『きもち満月(フルムーン)』 by HIT (1999.4.23)

 谷川史子さんの3冊目の単行本です。谷川さん初の連載作品である表題作と、『緑の頃わたしたちは』が収録されています。

 表題作『きもち満月(フルムーン)』は、谷川さんの作品中では異色の作品です。恋愛描写が少なく、荒唐無稽なストーリーという点で、谷川さんの他の作品とは傾向が異なっています。

 それを理由に、この作品を評価しない人もいるようですが、私はこの作品を大いに評価しています。

 谷川さんの作品は、確かに珠玉の佳品というべき感動を呼ぶ傑作は多いのですが、エンターテインメント性の高い作品は数が少ない(特に初期)のです。肩の力を抜いて気軽に読めて、それでいて谷川さんらしい感動が得られる作品、その数少ない作品がこの『きもち満月(フルムーン)』です。この作品のような軽目の作品を沢山発表していたら、谷川さんはもっとメジャー(もしかすると,りぼんを背負って立つ位)になっていたのに、という気がしないでもありません。

 さて、お話は、ある事故(?)で、頭に白くて四角物を乗せると、怪力が出るようになった少女のハチャメチャの物語です。事故に巻き込まれた小梅くんや、目撃した下級生もからんで、お話しが進みます。

 最初に言ったように、谷川さん得意の恋愛描写が少なく、物足りない人もいるでしょうが、設定からエピソードに至るまで、奇想天外なものが多く、何度読んでも楽しめる作品で、私は大好きです。かといって、谷川さんらしさが全くない訳ではなく、サイドストーリーとして、目撃者の少女の恋の話が展開しますので、2重に楽しめる作品です。たった3回の連載でしたが、続編が読んでみたいと思いました。

 最後に、作品とは直接関係ありませんが、小梅くんが、物理部だというのが気に入りました。私も中学校時代に物理部に所属しており、それが高じて(?)大学でも物理を専攻してしまったおちゃらけ者(?)ですので、小梅くんに親近感を覚えました(^^)

 でも、小梅くんは、後に他の作品(くじら日和)に脇役で再登場しますが、なんと、医大生になっているじゃありませんか。物理の道を捨てて、医学に転ぶとは、根性がないぞ、と小梅くんにひとこといいたいHITでした。(小梅君が転んだ理由に関する考察は、別レポートで。)

 『緑の頃わたしたちは』は、一転してシリアスはお話。少女の年上の図書館司書への恋を描いたものですが、谷川さんの作品中で唯一の悲しい結末になります。それでも、彼女に思いを寄せる同級生の男の子の支え等が救いになって、読後感は透明感を含むさわやかなものとなっています。

「きもち満月(フルムーン)」
谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

By HIT(1999.4.23)

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『各駅停車』 by HIT (1999.4.24)

 谷川史子さんの4冊目の単行本は、お得意のオムニバス連作の表題作と、『両手でもたりない』が収録されています。

 まず、オムニバス連作の『各駅停車』ですが、鎌倉の江の島電鉄の沿線を舞台にした、恋のお話しが3つ続きます。どのお話も、適度のコメディとシリアスが微妙にまじって、谷川さんらしい、いい感じの作品です。

 ちょっと面白いのが、主役をやった娘が、他のお話で見せる意外な一面です。第一話で、おもいっきりシリアスに恋を演じた美雪が、第二話では、

「ねえ
あの問題児
始末してくれるんなら
なんでもするわよ」

なーんて、おそろしい言葉使いをしたりして、驚かせてくれます。でも、恋って得てしまうと、守るために何でもしたくなるんだよね。美雪ちゃんの気持ちもとっても良く分かります。

 最後は、三話、6人の主役達がいっしょに電車に乗って楽しくはしゃいでいくシーンで終わります。ハッピーエンドで、本当、読んだ後、幸せになれる作品です。

 『両手でもたりない』は、りぼんの付録に掲載された作品です。「りぼん」や「なかよし」は、たまに読み切りの付録が付きますが、あれって、何だか単行本みたいで、得をしたような気がしますよね。(私だけか?)たまに古本屋で、読み切り付録だけが売りに出されていることもあり、佐藤真樹の『星の子守歌(ララバイ)』なんか買った覚えがあります。

 さて、話は、谷川さんが良く使う、少女マンガの定番、お幼なじみ物です。鼓太郎と真澄は、幼なじみの中1。鼓太郎はずっと前から真澄が好きだけれど、真澄は、バレンタイン・デーを知らない位に、恋には鈍い。そこへ、プレイボーイの池宮が現れ...、ということで、先のストーリーは、皆さまのご想像通りです。(^^)でも、谷川さんの場合は、ストーリーだけじゃないんですよね。独特の間というか、雰囲気というか、ふわっとした暖かさが作品からにじみだしているんですよね。この作品も、最後の真澄から鼓太郎へのプレゼントは、少女マンガでは良くあるパターンにもかかわらず、思わず涙が出てきました。

 ところで、谷川さんは、単行本の目次のページの余白に、いつも全作品の登場人物達がいっしょになにかをしているカットを描いています。この単行本では、「ハンカチ落とし」をしています(^^)

「各駅停車」谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

By HIT(1999.4.24)

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ちょっと古い『各駅停車』の感想 by HIT (1997.5.27)

 谷川史子さんといっても、ほとんどの人は知らないと思いますが、「りぼん」の増刊を中心に活躍(?)している少女マンガ家です。デビューは、86年と古いのですが、何しろ寡作で、初の単行本『花いちもんめ』が出たのが90年と、4年で5作しか描いていません。現在まで単行本は、4-5冊程度しかでていないようです。(良く知らない)

 さて、谷川さんの特長といいますと、ストーリの純粋さもそうなのですが、何といっても、とんでもなくかわいい『絵』にあります。はっきり言って、絵に惚れてます。少ない線で丁寧に描かれたあのキャラクターにじっと見つめられたら、もうどうなってもいい、というほど惚れてます。(単なる変態かも)同じファンでも、松本洋子さんの場合には、ストーリーに惚れているのと対象的ですね。

 この、なんとも言えずかわいい絵柄と、ぎこちなく純粋な恋を語る万年新人の谷川史子さんには、ただひとつ欠点があります。それは、デビュー以来、シリアスに流れる傾向が作品が多く、話が重くなりがちという点です。という訳で、お勧めは、コメディータッチの軽い作品です。ちなみに、表題の『各駅停車』も軽目の作品で、十分お勧めです。他には、『花いちもんめ』に収録されている「君の空に飛びたい」とか、初のりぼん本誌連載作品『きもち満月』などがいいでしょう。

 とにかくかわいい絵柄が好きな人、大昔に忘れたようなラブストリーが好きな人にお勧めします。

『各駅停車』
『花いちもんめ』
『きみのこと好きなんだ』
『きもち満月』

以上すべて りぼんマスコットコミックス(集英社)

by HIT 1997.5.27 [このページの先頭に戻る]


『くじら日和』 by HIT (1999.4.28)

 谷川史子さんの5冊目の単行本は、りぼん本誌に長期(5か月)連載された『くじら日和』です。

 主人公は、高1の『勇魚(いさな)』ちゃん。勇魚というのは、鯨の古語で、(私は、この作品を読むまで知らなかった。)みんなから『くじらちゃん』と呼ばれています。両親が海外に行くことになり、アパート『鯨館』で、初恋の相手、いとこの鶴明さん(職業:少女小説家。3年前に奥さんと死別。)と管理人をすることに。しかし、引っ越し初日に、隣室の亀和田君から好きだと告白され、前途多難...。

 はっきり言って、くじらちゃんは、かわいい。それだけでも、この本を読む価値はあります。しぐさも、ドジなところも、恋に一生懸命なのも、みんなひっくるめて、かわいいのです。ぜひ、ご一読あれ。

 ただ、最初は、軽快にコミカルに始まったこの作品ですが、次第に話が重くなっていくのは、谷川さんだから仕方ないのでしょうか。鯨館の住人も『きもち満月(フルムーン)』小梅君を始め、個性的なメンバーが揃っているのに、せっかくのキャラクターが生きていないのも残念です。連載開始時の「軽さ」を最後まで維持していけたら、とんでもない名作になった気がするのですが。

 でも、随所に谷川さんらしい繊細さ、やさしさ、暖かさがちりばめられたいい作品です。

 例によって、私の気に入ったセリフを紹介しますと、鶴ちゃんに告白した後、友達の家で、友達のお姉さん夫婦を見て、しみじみとくじらが言うセリフがあります。

「…生活するって
 楽しいこと
 ばっかりじゃなくて

 腹の立つことも
 悲しいことも
 あるだろうけど

 でも
 この人となら
 大丈夫だって
 思ったんだよね」

 私も、結婚して7年。振り返って見て、結局、結婚というのは、このくじらちゃんのセリフ通りのものだと、実感できます。いつもながら、するどい谷川さんの感性に、感心しました。

「くじら日和」谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

By HIT(1999.4.28)

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『君と僕の街で』 by HIT (1999.4.20)

 私が一番好きな作品集である「君と僕の街で」の紹介です。

 この「君と僕の街で」は、オムニバス連作という谷川さんお得意の形式で5つの恋のエピソードを紹介しています。ページ数も全単行本の中で一番多く、その意味でもお徳です(^^)

 私がこの「君と僕の街で」が好きなのは、収録された5つのエピソードがどれも粒揃いなのに加えて、ものすごく気に入ったシーンがあるからです。

 それは、第2話の「若菜」が主人公の話の中で、若菜が、友達のすみれのデートの待ち合わせ姿を見たシーンです。恋人との付き合いが長く、最近デートしていても、ドキドキしなくなった若菜が、恋が始まったばかりのすみれの、恋に一所懸命な姿、ドキドキする姿をみて、自分も何だかドキドキしてきます。すみれが彼氏の姿を見つけた時の表情が何とも感動もので、このシーンのクライマックスです。すみれのドキドキが若菜に伝わり、それが読者に伝わる。ほとんどセリフもなく、絵だけでこのクライマックスの感動を作り出した谷川さんの筆力には感服します。

 自慢じゃないですが、私も少女マンガを15年以上にわたり、単行本1000冊以上読んで来た(しかも、「りぼん」や「なかよし」などの、ローテイーン向け中心)つわものですが、このシーンほど感動するシーンは見たことがありません。マンガ史に残る名シーンだと思います。

 このシーン以外にも、「君と僕の街で」には、見どころがいっぱいの作品集です。「すみれ」、「若菜」、「幹」、「梅花」、「桃花」の5人の恋の物語を堪能して下さい。妻子持ちの私としては、ドキドキしなくなったけれど淡々とした恋の味わいを描いた「若菜」のエピソードがやはり一番印象に残っています。

 きっとさわやかな読後感とともに、しあわせな気分に浸れるでしょう。

「君と僕の街で」谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

By HIT(1999.4.20)

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『一緒に歩こう』 by HIT (1999.6.18)

 ⇒にわぴーのイラスト by かわい (2000.1.21)

 この単行本には、以下の3作品が収録されています。

「一緒に歩こう」
「一緒に帰ろう」
「抱きしめたい」

 「一緒に歩こう」は、りぼん本誌への連載作品です。

 元気少女の中学生・園子が主人公で、幼なじみで隣に住む直志(ただし)が軽薄に言い寄って来ていますが、眼中にはなく、弟の幼稚園の有楽先生(もちろん男性)にあこがれています。

 とまあ、要は、谷川さんお得意の設定(幼なじみ、うんと年上の男性)です。お話しも、それなりにまとめられています。

 でも、ストーリーの途中で、無意味な盛り上がりがところどころあり、違和感があることです。よく考えてみると、この作品は連載でして、この変な盛り上がりは、「次号へ続く」という場面だと思われます。もともと連載が苦手らしい谷川さんですが、無理に次号へ引くために盛り上げる位なら、淡々とストーリを進めて欲しかったです。やはり、谷川さんは、連載が苦手のようです。

 でも、この作品にもすてきなセリフは結構あって、直志が園子に「俺 自分の人生に お前を まきこみたい」というセリフなど、実際のプロポーズに使えそうな名セリフですよね。

 ところで、この作品、ラストは、園子が田舎に帰る有楽先生に思いを告げるところで終わるのですが、その後、どうなったかフォローがありません。続編にあたる「一緒に帰ろう」でも、そのあたりは一切触れられていないのです。タイトルや常識で考えると、園子と直志が一緒になると考えるのが一番妥当ですが、意外と、「園子と有楽先生が一緒になる」という話しもアリじゃないかな、と思っています。

 次の作品「一緒に帰ろう」は、「一緒に歩こう」から10年後のお話。園子の弟の次郎と直志の妹のまりのラブストーリーです。これも、谷川さんお得意の幼なじみものです。

 ストーリーは、
 幼稚園時代からステディの二人だけれど、最近は、ちょっと次郎君はいじけ気味。だってまりは頭も良く、美人でスタイル抜群、それに対して自分は...。

 というものです。なんということないストーリーですが、谷川さんらしく、愛らしく、暖かく描かれています。最後は次郎君も本当にかっこいいです。

「情けないけど
 まりがいないと
 もう一歩も動けない」

 とは、心底好きでないと出ないせりふですね。

 でも、やっぱり、それをキスで軽くかわしてしまうまりちゃんにはかなわないですが。

 最後の「抱きしめたい」は、「各駅停車」に収録されている「両手でもたりない」でふられた池宮君のそれからどうしたストーリー(ひかわきょうこさんみたいだ...)です。

 鼓太郎や真澄ちゃんも登場しますが、この二つの作品の間に谷川さんの絵が若干変わったていたので、私は、最初、真澄ちゃんが同一人物だとは思えませんでした。谷川さんも感じていたのか、池宮君に「一瞬わかんなかった」と言わせていて、思わず微笑んでしまいました。

 お話しは、インフルエンザで中学を卒業できなくなったニ羽さんに、留学から帰ってきた池宮君がアプローチします。強引なアプローチにニ羽さんも、たじたじ...。というものです。

 ニ羽さんが初めて笑うのを見て、池宮君が感動するシーンや、池宮君が自分を同情でかまっているのでは思い、落ち込むニ羽さんのシーンなど、こちらにズシリと感動が伝わってくる、いい作品です。

 本筋とは関係ありませんが、ニ羽さんのお母さんが面白いですね。朝、自転車で迎えに来た池宮君を、仮病で断る娘に向かって、

「あんな かっこいい子と ふたり乗りなら
 お母さん 熱が100度あっても するわ」
なんて言っているのですから。

 谷川さんらしい、一生懸命さあふれるさわやかさが感じられる本当にいい作品です。

 以上、谷川さんらしい作品が3話詰まったこの本を、正統派少女マンガとハッピーエンドが好きな皆さんにお勧めします。

「一緒に歩こう」谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

By HIT(1999.6.18)

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『ぼくらの気持ち』 by HIT (1999.11.12)

 珠玉の作品が4つ集まった短編集「ぼくらの気持ち」の紹介です。

 表題作でもある「ぼくらの気持ち」は、友達以上、恋人未満の雛と顕太のお話です。一度雛にプロポーズして振られた顕太ですが、雛とは相変わらず仲の良い友達状態。以前よりどんどん雛のことが好きになっていくなかで、「友達ではいたくない」とばかり、勇気を振り絞ろうという顕太ですが...。

 最後は、もちろんハッピーエンドです。雛の不安が、顕太が「俺が雛のこと嫌いになる訳がないだろうが」というひと言で収まってしまうのは、ちょっと釈然としないところがありますが、それだけ好きだった、ということの現れなんでしょうね。

 「あなたのてのひらの」は、谷川さんお得意の幼なじみもの。羊(本名:羊子(ようこ))と寅彦は、おさななじみ。仲のいい二人ですが、羊は寅彦の事を好きなのに、寅彦は、いとこの小鳥さんが好き。モンモンと悩む羊ですが...。

 このマンガのクライマックスは、クラスメイトが羊のことを「ナイスバディ」と言っているのを聞いた寅彦が「羊のことをそんな目でみるな」と怒り出すシーンです。読んでいる私達は、「おっ、寅彦も羊に対する本当の気持ちに気が付いたのかな」と思いわくわくしてページをめくります。この話を聞いた羊も、もしかして、寅彦も自分のことを、とドキドキしながら次の言葉を待ちますが、寅彦の口から出てきた言葉は、「妹を持った兄貴の気持ち」という残酷な言葉。羊の悲痛な心の叫びは、読者の胸を締めつけます。感動十分のクライマックスシーンです。

 「最初のクリスマス」は、『君と僕の街で』の「桃花」の章に出てきて、その後も何度か登場する喫茶モモンガが舞台の作品です。モモンガでバイトしている湯泉川(ゆのかわ)君の妹、紘絵(ひろえ)ちゃんが主人公。

 紘絵ちゃんは、ボーイフレンドの清順との最初のクリスマス、二人きりでロマンチックに過ごしたかったのに、清順は、家業の手伝いでだめ。ちょっとした擦れ違いで、二人は...。

 このお話しは、メインエピソード自体は、よくあるお話しです。でも、回想シーンの中に、とてもすてきなシーンがあります。それは、二人が付き合い始めたきっかけの話。いつもけんかばかりしていたふたりですが、けんかに最中に、突然、清順が「俺の彼女になれ」と言いだします。面くらう紘絵に、「だって俺 湯泉川 好きだもん」と軽くいいます。そんな簡単に、と、怒ろうとおもった紘絵は、顔は笑いながら、清順の手が震えているのを発見し、感動するシーンがあります。

 そうです。男の子だって、プロポーズの瞬間は、覚悟を決めて、体が震えるほど緊張するんです。それが分かった紘絵ちゃんは偉い!二人とも、お幸せにね。

 「彼の時間、彼女の時間」は、「君と僕の街で」に出てきた桃花とリクオの遠距離恋愛カップルのそれからストーリーです。

 心配をかけまいと電話でも明るく振る舞う桃花ですが、不安がいっぱい。そして...。

 解決してみれば、どちらも不安で、ちょっと相手を試してみたくなっただけの、長い付き合いの中では良くある小トラブルです。でも、谷川さんのタッチで、やさしく描かれたこの作品は、みていて、ほっとできる佳作です。

 以上、珠玉の4作品を収めたこの本は、どちらかというと、現につきあっている人がいて、ときどき相手がどう思っているのは不安になる、という人にお勧めします。

 「ぼくらの気持ち」谷川史子著・集英社・りぼんマスコットコミックス

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