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ほほえみ物理相談室/にんじんの釣り合い

最終更新[2000.1.3]
質問:
 人参を糸で吊るして、釣り合ったところで切ったのですが、実際量りにかけてみたら、 重さが同じでありませんでした。どうしてそうなるのですか?教えてください。
by えびちょん (1999.12.22)

回答:
 つりあいが取れているからといって,同じ重さになるとは限らないからです.
by HIT (2000.1.3)

つりあいがとれているとなぜ同じ重さだと思うのか

 えびちょんさん,こんにちは.風邪で寝込んでいて,回答が遅くなってしまった事をまずおわびいたします.

 で,さっそく本題ですが,回答は,上のタイトルにも上げてあるように「つりあいが取れているからといって,同じ重さになるとは限らないから」というひと言で済んでしまいます.

 でも,これじゃ,味もそっけもないですから,ちょっと詳しく検討してみましょう.

 では,逆にえびちょんさんをはじめ,皆さんに質問します.「なぜつりあいが取れていると左右が同じ重さだと思うのですか?」

 これは実は,対称と釣り合いを混同していることによる錯覚です.

 対称というのは,小学校の算数でも習うと思いますが,図形を折り畳んで重ね合せることができるとき,「その図形は対称である」といいます.直線により折り畳めるものを線対称といい,面で折り畳めるものを面対称といいます.

 対称図形を折り畳むところを対称軸(対象面)といい,身近な例では,正方形では4本の対称軸があります.

 対称な図形は,対称軸の左右が全く同じ図形ですから,(均質な材質のものなら)左右の重さは同じになります.また,対称軸をひもでつるすと,左右が釣り合うことになります.

 ここにみなさんの錯覚の源があるようです.つまり

1.対称図形を対称軸でつるすとつりあいがとれる
2.対称図形を対称軸で切り離すと左右の図形は同じ形同じ重さ

という二つの事実から「つりあいが取れると左右の図形は同じ重さ」という誤った法則を勝手に導きだしてしまっているのです.この法則が成り立つのは,対称図形などごく一部の図形に対してだけであり,大多数の図形には,成り立たないのです.


つりあっていても左右の重さが違う例

 先程の法則が間違っているのを証明するのはおどろくほど簡単です.シーソーを考えてみて下さい.体重が全く違う大人と子供が乗っても,うまく乗ればシーソーはつりあいます.みなさん良く知っているように,大人が真ん中に近い側に乗り,子供が中心からなるべく遠くに乗ることでつりあうことができます.

 これは,テコの原理(支点からの距離と力(重さ)の積が等しい時,左右がつりあう)からそうなるのですが,もちろんつりあったからといって,大人と子供の体重が同じことの証明には全然なりません.これと同じように,人参のような,左右対称でない図形を,つりあった場所で切ったとしても,左右の図形の重さが同じになるはずがありません.

 にんじんをよこにつるして,つりあうところで切ったのは,ちょうど上のような大人と子供がシーソーに乗ってつりあったのと同じ状態なのです.すなわち,短くて太い方(大人の乗ったシーソーと同じ)が,細くて長い方(子供の乗ったシーソーと同じ)よりもはるかに重いはずです.当たり前です.テコの原理からいって,そういう異なる重さだからこそ,つりあうのです.

 以上で証明を終わります.


にんじんを同じ重さに切る方法

 とまあ,ここで終わっては不親切ですから,にんじんを同じ重さに切る方法を考えてみましょう.いくつかありますが,簡単そうなものを2つほどあげてみましょう.

方法1:にんじんを縦に2枚におろす

 これは形のいいにんじんにしか使えませんが,きれいな三角すい型のにんじんならば,にんじんのしっぽから葉にかけて縦に二枚におろすように切ると,左右の図形は同じ形になり,ほぼ同じ重さになります(にんじんの密度がどこも同じだと仮定すると).

 ちなみに,これは,にんじんをしっぽからつるしてその軸に沿って切ったことになりますから,最初の問題である「にんじんをつるして切った」という条件ぴったりです.いじわるな回答をしようと思えば,「縦につるして切れば,同じ重さに切れる.つるし方が悪かったのだ」というひねくれた回答もできます.

方法2:水に沈めて体積を図り,半分の体積のところで切る

 方法1では,にんじんを縦にしか切ることができません.子供が喜ぶ星型切り抜き等ができないので,にんじんは横に切らないとだめ,という暗黙の条件があるときには,方法1は失格です.そこで取る方法は,水に浸して体積を図る方法です.

 方法1でも仮定しましたが,にんじんの密度はどこでも同じだとすると,重さを半分にするには,体積を半分にすれば良いことになります.

 複雑な図形の体積を図る方法でオーソドックスなものは,ギリシャの学者アルキメデスが風呂に入っていて発見したという伝説のある「水につけて,増えた水の量を図る」方法です.家庭にもある計量カップ等に水を入れ,その中ににんじんをすっかり沈めます.にんじんを入れる前の水の示す目盛りとにんじんを入れた後の水の示す目盛りの差が,にんじんの体積です.

 この方法でにんじんの体積が分かれば後は簡単.にんじんを縦方向につるす(しっぽからつるす)などして,水の中ににんじんを少しずつ入れ,水の目盛りがにんじん全体の体積の半分だけ増えた時点で,にんじんの水と空気に境目に線を引きます.この線で切れば,にんじんは同じ体積で2分割できたことになり,密度がどこも同じという仮定のもとでは,それぞれの重さは同じになります.

 えびちょんさん,こんな回答でいかがでしょうか.


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