境線廃止論は事実誤認 1997.10.13


 10月7日付「鳥取発特報」に『境線を廃止したらどうか』という記事が載りました。しかし、この記事は、事実誤認が多く、読者に誤解を与えるものです。
 まず、記事では、境線の利用を境港駅の乗車数(419人/日)で代表し、少ないと断じています。しかし、境線の利用者数は、95年実績で、一日6,300人(年間230万人。鉄道ジャーナル97年1月号)もあります。しかも、この数字は、民営化時点よりも1割以上伸びています。

 次に、記事中では、「バス転換可能」と述べられていますが、これは、そんなに簡単な事ではありません。料金面で2倍以上も差がある鉄道とバスでは、鉄道廃止で即バスへ乗客が転化するものではありません。車を運転できない高校生(約半数)は、バスを利用するでしょうが、社会人は、自家用車に切り換える可能性があります。社会人の半数が自家用車利用に切り換えた場合、米子市内には、1日あたり700台以上の自家用車が溢れることになります。

 この自動車の増加は、市街地の都市環境を大幅に悪化させます。交通渋滞の悪化、それに伴う経済的損失の増加、駐車場不足の深刻化、市街地の空洞化、交通事故の増加等です。これらの事態を回避するためには、バスへの補助による低運賃の継続や、市街地道路の拡幅等が必要ですが、これには、記事で問題にしている境線の地下化工事費よりもはるかに経費がかかるでしょう。

 更に、記事中では、境線が横断交通を阻害していると断じていますが、現在の境線の運転頻度では、20分に1回、30秒から1分程度遮断機が降りるだけです。たとえ境線が現在の倍の頻度で運転したとしても、「交通信号機による停止時間の割合」よりもはるかに少ないものです。境線が交通を阻害しているとはとうてい言えません。事実、記事中でも取り上げられている米原の跨線橋では、踏み切り廃止後の方が渋滞が悪化しているように見えます。信号が増設され、赤信号の時間が増えたためですが、必ずしも「踏み切り廃止」が交通をスムーズに流す訳ではないという実例でしょう。

 最後に、境線廃止は、地球環境(地球温暖化)問題を無視している点も見逃せません。地球温暖化問題で、各国とも温室効果ガスの削減が求められていますが、交通分野では、自動車よりも鉄道が有利なのは明らかです。すでに鉄道があるのに、それを無理やり自動車に転換するのは、温室効果ガス削減施策に完全に逆行しています。

 以上見てきたように、『境線廃止論』には、ほとんど根拠がありません。高々40億円の地下化工事費を削減するために、都市の貴重な財産である鉄道を廃止し、都市環境悪化と地球環境悪化を招く施策は、取るべきではありません。

By HIT(1997.10.14)