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今こそ安定した選挙制度を!比例代表小選挙区連用制のご提案

最終更新:[2005.9.30]
 現在の衆議院議員選挙に採用されている「小選挙区比例代表並立制」は,不安定で欠陥の多い制度です.2005年9月の総選挙で,与党が地すべり的大勝利をあげ,50%を少し越えただけの得票率なのに,改憲に必要な2/3越える議席を獲得してしまった事からもこれは明らかです.たった数%の投票行動で,数百議席ががらりと換わってしまう小選挙区中心制度の悪い面が出てしまいました. では,これに代わる選挙制度は,あるのでしょうか.あります.もっといい選挙制度は,いくらでも存在します.より良い選挙制度として,「HIT版比例代表小選挙区連用制」のご提案です.

更新情報

新しい選挙制度の条件 by HIT (2005.9.30)

 まず,新しい選挙制度に必要な条件を挙げてみましょう.

 民意の忠実な反映については,反論のある人は少ないでしょう.この条件は,別の言葉でいうと,「死に票が少ない制度」ということです.死に票とは,有権者が投票したけれども,当選に結び付かず,無駄になった票のことです.

 候補者の顔が見えることというのは,中央政党中心の選挙制度では,候補者が身近に感じられず,議員と地元が遊離してしまうことから,当然のことです.

 無所属候補の扱いについては,諸外国でも,冷遇している国の方が多い位で,事実上冷遇する方が「グローバルスタンダード」です.アメリカでは,2大政党(共和党,民主党)以外の候補は,事実上当選するのは,不可能な制度になっています.比例代表中心のヨーロッパの制度では,政党に所属する候補しか,立候補を認めていません.議会の目的が「多数をもって,国民の総意を代表する」ことである以上,政党に所属しない一人だけの党派議員の存在理由は,ほとんどない,というのも確かです.

 しかし,日本においては,政党の存在が諸外国に比べてあやふやです.政党をコロコロ変わる議員も多く,いわば,議員にとって政党なんて,どうでもいいのです.有権者も議員の政党間移動に寛大です.

 こういう特殊事情から,日本の選挙制度においては,無所属でも当選できる制度である必要があります.

 最後の条件は,今までの諸条件と矛盾します.一番目の条件を正確に取り入れると,2000年6月の総選挙において,比例区において最大の得票率であった自由民主党でさえ,たったの28.3%しかない事から,136議席しか得ることができず,中小政党の乱立となり,政権が安定しないのではないか,という危惧が国民にあります.本来なら,連立を組むのが常態化するのを甘んじて受ければ,なんという事はないのですが,連立に対して,抵抗感がまだまだあるようです.

 つまり,国民感情としては,「少ない得票率の第1党が,制度欠陥によって,絶対多数を占めるような制度は,もちろんいけないが,かといって,どこも大きな政党がないのも困る」という複雑なものなのです.

 また,完全な比例代表制度ですと,国民の0.2%の得票(2005年9月の選挙で言えば約14万票)で国会に議員を送り込めます. 反社会的団体, 不真面目な団体でも容易に議員を選出できるために, 国会は小党乱立し,混乱を極める可能性が高いです. そうならないためには, なんらかの歯止め(足きり)が必要です.

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HIT版比例代表小選挙区連用制の概要 by HIT (2005.9.30)

 前項で設定した,矛盾した条件を満たすような選挙制度として,「HIT版比例代表小選挙区連用制」を提案します.

 まずは,制度の概要です.

定数等

立候補等 投票等 当選方法

その他

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HIT版比例代表小選挙区連用制の解説 by HIT (2005.9.30)

 各項目の解説です.

定数等

総定数480議席のうち,小選挙区を人口に比例して300議席を割り当てる.

 300というのは,現在の衆議院の定数配分と同じです.実は,比例代表小選挙区連用制(併用制)においては,小選挙区の割合は,50%を越えないのが普通で,だいたい40%程度です.それは,小選挙区の勝ち過ぎ政党の議席を比例区で調整するには,比例区の割合が高くないといけないためです.

 しかし,今回の案では,前提条件等から,現状の割合をそのまま踏襲しています.後で詳しく解説しますが,現行の「小選挙区定員:比例区定員=5:3」という比率は,絶妙の比率です.衆議院の総定数を削減する場合でも,この比率は極力維持するべきです.

 例えば,民主党はマニュフェストで「比例区を80減らして,総定数を400にする」といっていますが,これでは,比例代表の比率が75%にも達してしまい, とても不安定な制度になってしまいます.同じ総定数を400に減らす場合でも,「小選挙区:比例区=250:150」と、現在の比率を維持したまま減らすべきです.

 小選挙区の県ごとの比例配分の方法は,現在は,「県ごとに1を割り当てた後,国勢調査人口に基づき,残りの数を最大剰余法で配分する」という手法がとられていますが,これは関心しません.小県対策として,1を別配分するのは反対しませんが,最大剰余法という配分方法が問題なのです.

 アラバマのパラドックスを生んだことで有名なこの配分方法は,ちょっとした条件の変更に敏感で,必要以上に配分数が増減することで,制度を混乱に陥れます.事実,この方法で配分されている鳥取県議会の市郡別定数は,人口はほとんど変化していないにもかかわらず,国勢調査の度に,+1,-1を繰り返すという不安定な選挙区がいくつも存在します.

 衆議院の小選挙区は2000年の国勢調査をもとに,再配分されました. この時は「5増5減」(5つの県で選挙区を1増やして,5つの県で選挙区を1減らす)の大幅な見直しとなりました.しかし,後ほど説明する「1+ドント式」で計算するとたったの「1増1減」で済みます. 諸外国では,これらの欠点からすでに使われなくなった最大剰余法を未だに使っている日本の選挙担当者及び議員の見識を疑ってしまいます.

 で,代わりの配分方式として,HITは,「県ごとに1を割り当てた後,国勢調査人口に基づき,残りの数をドント式で配分する」という手法を採用します.(HITはこれを「1+ドント式」と呼びます.)ドント式は,比例代表の当選者を決める方法として有名で,比例配分する手法としては,オーソドックスなものです.議席数を基数として割るので,感覚的に意味が分かりやすいという利点はありますが,常に大政党(大県)に有利で,小政党(小県)に不利という欠点もあります.ドント式は,最大剰余法のようなパラドックスも生じず,人口が少々動いても,配分数は大きく動かないなどの数々のメリットがあります.更に,「1+ドント式」の場合には,既配分の「1」の効果で常に小県有利となります.

総定数480のうち,460議席を,人口比例で各ブロックに割り当て,小選挙区の区数を引いた残りをブロック比例代表区の定数とする.

 現在の比例区の定数は,小選挙区と全く別に比例配分(1+最大剰余法)しています.しかし,新しい方法では,小選挙区と比例区を合わせた定数を比例配分(当然「1+ドント式」に変更)することとします.

 これは,小選挙区での切り上げ切り捨てが偏り過ぎた場合,そこのブロックの定数が異常に過大過小になるのを防ぐためです.これにより,ブロック単位で,議員一人当たり人口は,ほとんど同じになります.

現状のブロック総定数(ブロック比例区の定数+ブロック内の小選挙区の定数)を見てもらうと分かるように,現状では,県ごとの小選挙区数の切り上げ,切り捨て効果と,ブロック比例区の切り上げ切り捨て効果がまったく独立しているので,かなりの格差(最大1.30倍)がついています.新制度ではほとんど差がありません(最大1.03倍)

残り20議席は,全国比例区として,留保する.

 当制度の目玉の一つです.全480議席のうち,20議席を最終調整のために留保します.これは,ブロック単位の比例代表制度でも調整し切れない部分を,解消するために使われます.

 この最終調整によって,死に票は,極限まで減らすことができます.

立候補等

ブロック比例区には,政党等が候補者名簿(拘束式)をもって,立候補する.

 現状と同じです.

ブロック比例区の上位名簿搭載者(小選挙区の定数と同じ順位まで)は,必ず,小選挙区に立候補していなければならない.(重複立候補の原則)

 ここも目玉の一つです.比例区と小選挙区の重複立候補は,「比例区の名簿だけでは,地域と議員が遊離してしまう.」ことを防ぐという大きな役割があるのです.そこで,新制度では,一歩進めて小選挙区と比例区の重複立候補を原則として,比例区単独候補は認めない(小選挙区候補者をすべて搭載した後の下位のみに単独立候補者は出せる.)こととします.

 これにより,「コスタリカ方式」や,「大政党長老の終生比例第1位」,「大政党の有力議員が,自らは比例単独に回って,小選挙区を親族に譲る」などといった国民の意向を無視したような選挙手法を封じることができます.

小選挙区は,政党等の比例名簿搭載者及び,無所属候補が立候補できる.

 重複立候補が原則ですから,小選挙区の立候補者は,比例名簿搭載者に限ります.ただし,日本の特殊性から,無所属立候補も認めることとします.

ブロック比例区の候補者名簿は,小選挙区との重複立候補者は,同一順位で1位に固定し,以下の候補者(追加候補者)は,拘束名簿式とする.

 ここも目玉の一つです.重複立候補者(すなわち小選挙区立候補者全員)は,順位1位に固定されます.当選は,後で述べますが,小選挙区での得票率で決まります.これにより,名簿順位の決定権を持つ,党中央の権限が増し過ぎるのを防ぐことができます.つまり,国民の小選挙区の投票動向によって,名簿順が自由に変更できるということです.

 ちなみに,名簿上位者は,小選挙区立候補者に決まっていますので,下位にランクされる比例単独候補(追加候補者)は,小選挙区立候補者全員が当選して初めて順番が回ってきます.小選挙区立候補者全員が当選するということは,62.5%(300/480)以上の得票率を上げないと無理なので,そこまでの得票率を上げる自信のない政党は,追加候補者なしとなります.つまり,党中央は,ブロック比例名簿で力をふるう機会がほとんどありません.つまり,すべての当選者は,小選挙区の洗礼を受けて,国民が投票した結果だけで当選が決まります.比例代表の欠点である「候補者の顔が見えない」という欠点は,確実に解消できます.

全国比例区は,拘束名簿式とし,重複立候補を原則とする.

 最終調整用の全国比例区も,ブロック比例区とほぼ同じ仕組みです.ただし,重複立候補者を同一1位にランクする必要はありません.(もちろん,上位はすべて重複立候補である必要があります.)これは,党の重要なポストの人が小選挙区で落ち,ブロック比例区でも落ちた場合の最終救済するためのものです.ブロック比例名簿を編成する自由が事実上なくなってしまうので,党中央ができる唯一の比例区名簿作成業務です.西ドイツの元首相のコール氏など,小選挙区,州比例区で落ち,全国比例区でかろうじて当選したことも多々あります.ただ,全国でたったの20議席であり,各党に割りふると,最大でも7議席程度(しかも回ってくるのは,ブロック単位の切り捨てで,死に票がたまっている中小政党のみで,大政党にはほとんど回らない)ですから,あまりあてにはならない議席ではあります.大政党の有力議員は,自力で当選する必要があると言えます.

投票等

投票は小選挙区,比例区共通の「1票制」とし,政党名,候補者名,どちらを書いてもよい.どちらを書いても,小選挙区,比例区への有効投票となる.

 これも目玉の一つです.現在の小選挙区と比例区に別々に投票する2票制では,死に票が大量に発生するので,望ましくありません.1票制にすることで,死に票を極限まで減らせます.つまり,小選挙区で当選した候補に投票した人は,そのまま生き票となりますし,落選した候補に投票した人も,そのまま比例区の票に活用されるので,死に票はほとんどなくなります.

 1票制となることで,「小選挙区は与党に,比例区は野党に」という変なバランスを取った投票ができなくなりますが,国政を任せる政党を選ぶ選挙に,中途半端な投票は害にしかなりませんし,元々の中選挙区制では,1票制であった事を考えると,2票制廃止の害は,それほどないと思われます.

無所属候補の場合には,候補者名のみ有効で,小選挙区のみ有効.

 これは,当然ですね.そのため,落選した無所属候補に投票した人の票はすべて死に票になってしまいますが,これは仕方のない事です.

小選挙区に候補者を立てない政党の場合には,政党名のみ有効で,比例区のみ有効.

 本来,政党はすべての選挙区に候補を立てて,政策を地域住民に知らしめて投票を得るべきですが,弱小政党では,全300選挙区に候補を立てるのが難しい政党もあるでしょう.弱小政党の救済措置です.

 この場合においても,ブロック比例区名簿搭載者は,小選挙区立候補者に限られますから,候補者を立てない小選挙区で,その政党に投じられた票は,その政党の他の小選挙区立候補者の当選のために使われる,という図式になります.

当選方法

小選挙区の当選者は,有効投票数の一番多い候補が無条件で当選する.

 当たり前のようですが,現状と少し違います.現状では,小選挙区と比例区は完全に独立しているので,小選挙区の当選者は,法定得票(有効得票の1/4)を上回る必要があります.誰も上回る人がいない場合には,再選挙になります.しかし,新制度では,小選挙区と比例区は連動している(当選しなかった人の票もすべて比例区で活用されている)ので,有効得票を得る者がいないからといって,再選挙する訳にはいきません.有効得票以下であっても,比較第1位候補者を当選とするしかありません.

ブロック得票率が5%未満の政党等には,ブロック比例区議席を配分しない.

 これは,泡まつ政党の乱立を防ぐ措置で,比例代表制を採用している国では,ほとんど採用されています.1%でも当選できるとなると,反社会的団体等でも,国会に議員を送り込めることとなる訳でして,これらの防止の意味もあります.足切りラインは,比例代表の歴史が長いヨーロッパ諸国で採用されている5%を採用します.また,5%という数字は,統計学でも,推論の棄却ラインとして採用されるなど,意味のある数字です.ちなみに,2005年9月の総選挙で5%ラインを越えた政党は,全国では自由民主党,民主党,公明党,日本共産党,社民党の5党だけです.結構妥当な線引ではないでしょうか.

 ちなみに,この5%の足切りは,諸外国の場合,「全国得票率」で行っています.つまり,全国得票率が5%ない政党は,たとえブロック得票率が10%あろうとも,当選者を出すことができないのです.しかし,そうなると,弱小政党も,全ブロックに立候補が必要となりますので,敷居が高くなります.弱小政党に寛容な日本の現状を考慮して,「ブロック単位で5%あれば足切りしない」とします.これにより,地域政党等にも,議席獲得のチャンスが生まれます.もちろん,全国比例区の足切りラインは,「全国得票率5%」です.

ブロック比例区の当選者は,政党等の得票数を比例配分した数から,小選挙区で当選した人数を引いた人数を当選者とする.

 ここも目玉の一つです.現在の比例区は,小選挙区と切りはなされているので,小選挙区の議席と関係なく,議席が配分されます.しかし,それでは,得票率と議席数が乖離してしまい,民意を反映しなくなります.

 そこで,小選挙区の当選者数を引くことで,「小選挙区と比例区の当選者の合計がきちんと得票総数に比例した状態になる」ということになります.

 ここで問題になるのは,「小選挙区の当選者数が,得票率で比例配分した議席数よりも多い場合」です.日本の場合,小選挙区定数が全体定数の62.5%(300/480)もあるので,理論上は,ある政党が20%程度の得票率で,62.5%の議席を占めてしまう可能性があります.こうした場合,まさか小選挙区の当選者を落選させる訳にもいかないので,一工夫必要となります.

 ヨーロッパで多く採用されている「比例代表小選挙区併用制」では,こういった場合には,他の政党の比例区での当選者を定数以上に増やして,得票率と無理やり一致させます.この増えた議席を超過議席といいますが,国会議員の数が増えることとなるので,税金が多くかかることになります.例えば,2000年6月の総選挙例では,純粋併用制の元では,超過議席が145議席も生じ,総定数625にもなってしまいます.これを解消するには,小選挙区の定数を150程度に減らせばいいのですが,急には無理な話です.

 もうひとつの方法は,「小選挙区で勝ち過ぎた分は諦めて,残りの分を残りの政党で,比例配分されるようにする」という方法です.超過議席は生じませんが,得票率と議席率が一致しないこととなります.第1党に有利になるのですが,現時点では,日本の実情に一番合っていると思われます.第1党が勝ち過ぎたしわ寄せは,第2党以下が,得票率に応じてしわ寄せを食うことになります.

 ここで重要なのは,小選挙区と比例区の定数配分です.小選挙区の比率が高すぎると,小選挙区制の持つ欠点(小得票で絶対多数の得票を得る可能性があり,不安定かつ独裁の可能性あり.など)が前面に出すぎます.現状の5:3という比率であれば,例え第1党が少ない得票率ながら小選挙区を全勝したとしても,比例区では1議席も取れないので,議席が5/8=62.5%を越えることありません.つまり新制度で憲法改正等重要な比率である2/3を越える議席を得るためには,得票率で2/3を越える必要がある訳で,大きな歯止めとなります.そういった意味で,2/3のちょっと手前の62.5%という小選挙区比率は,ある意味絶妙のバランスといえます.

 なお,議席を比例配分する方式は,ドント式,サンラグ式,修正サンラグ式,アメリカ下院方式などいろいろありますが,現行の比例代表の決定方式がドント式であること,小選挙区当選者を比例代表から引くことにより(現状よりは)不利になる大政党に配慮するために,ドント式を採用することとします.

 なお,ブロック比例区の名簿1位は,小選挙区立候補者全員が自動的に当てられます.当選順は,現状の「惜敗率」では,なく,「得票率」で行います.本来,何%の人がその候補に投票したのかを表す「得票率」の方が,順位決定には有効のはずですが,「じゃあ,70%対30%で負けた候補の方が,30%対29%で負けた候補よりも上なのか.ちょっとの差なのにおかしいじゃないか」という難癖から,惜敗率に決まったいきさつがあります.

 しかし,です.比例区の当選者を決定するための「得票」は,惜敗うんぬんに関係なく,より多くの票を集めた候補の方が貢献しているのです.いくら惜敗であっても,29%の得票しか比例区に出せなかった候補は,大敗であっても,30%の得票を集めた候補の下に行くのは当然の事です.「より多くの選挙民の支持を受けた候補が当選する」という当然の順位決定方式だと思われます.

 また,惜敗率では,理論上は,第6位の候補者であっても90%を越えることは有りえます.(6人の有力候補がほぼ同じ得票だった場合.)その場合,この小選挙区から6人当選者が出ることになりますが,はたしてそんな偏った当選者を出していいものでしょうか.その点, 得票率ならば,第6位の候補者の得票率は,16.7%を絶対に上回りませんから,1小選挙区から6人もの当選者を出すことは,不可能です.どちらがバランスが取れているか,一目瞭然でしょう.

 なお,実際問題としては,2票制から1票制に変わることにより,各選挙区で候補者を出していない政党への投票も可能となりますので,全選挙区とも選択条件は同じになります.「得票率で決めると,3人しか立候補していない選挙区の候補の方が,7人立候補している選挙区の候補より有利になる(だから,惜敗率の方がいい.)」という理論が成り立たなくなりますので,惜敗率で決めた場合と,得票率で決めた場合の順位は,ほとんど変わらなくなるでしょう.

 また,現行制度には「小選挙区で10%の得票率を得られなかった候補者は,比例区で復活当選できない」という規定がありますが,新制度にはこうした制限は一切ありません.比例区単独立候補が認められていない新制度では,どんなに小選挙区の得票率が低くても,小選挙区の候補者を比例区で当選させなければならないからです.もっとも,比例区得票率5%以下の政党には,議席が配分されないのですから,当選してくる候補者は,小選挙区でおおむね5%以上の得票率があるはずなので,10%が5%に下がったと考えればいいのではないでしょうか.

 なお,細かい事ですが,ある政党が折角,ブロック比例区の割り当てを受けたのに,名簿搭載者が底をついてしまった場合(つまり,全立候補者が当選してしまった場合.弱小政党が思わぬ票を集めると,有りうる.)には,その議席は,他の政党に比例配分して割り当てられます. (実際に2005年9月総選挙の東京ブロックで発生しました.)

全国比例区の20議席は,全国の政党等の得票数を,比例配分した数から,小選挙区及びブロック比例区の当選者数を引いた人数を当選者数とする.当選者は,全国名簿の掲載順とする.

 全国調整枠の決定方式です.基本的にはブロック比例区のやり方と同じです.

 前段までで,全小選挙区と全ブロック比例区の当選者は決まっています.そこで,総定数480を全国得票数で各政党に比例配分した数字(理想の各党議席数)からすでに当選した人数を引いた人数を各党の全国比例区当選者数とします.ここでも,ブロック比例のところであった「勝ち過ぎ政党」の問題が出てきますが,比例区と同様に,超過議席なしの,現行定数内でのやりくり(他の政党が割りを食う)で行います.

 ,この方法により,同一政党内の当選者の1票あたり得票数は,限りなく同一に近づきます.また,ブロック比例で生じた死に票も最大限救済されることになります.

 この全国比例区の当選者の決定方式ですが,「全国比例名簿」を用意して,その順番に当選させます.当然ながら,ブロック比例名簿搭載者は,必ず上位に搭載する必要がありますが,ブロック比例区のように,小選挙区立候補者を全員を同一第1位に機械的に掲載する必要はありません.(もちろん,同一順位を設定してもよい.その場合には,得票率順に当選者が決定する.)全国の小選挙区立候補者の中から,絶対に落としたくない人(党首,幹事長など)を名簿上位に掲載することができます.この名簿作成(300の小選挙区立候補者全員のランク付けになる.)が,党中央のできるほぼ唯一の比例区順位付けとなります.

その他

小選挙区で当選した候補者が議員でなくなった時も,補欠選挙は行わない.ブロック比例名簿の次点者を繰り上げる.(当選者が無所属議員であった場合には,そのまま欠員とする.)

 これは,1票制であり,小選挙区の投票は,すべて比例区に反映してしまう制度である以上,一つの選挙区だけを補欠選挙を行って,全体のバランスを崩すことはできません.地域代表がなくなる地域が出てくる可能性がある反面,頻繁な補欠選挙で,税金の無駄使いを強いられるような事態を避けることができます.

 この場合,比例区だけを見れば,定数以上の当選者が出ることになりますが,小選挙区の欠員と相殺できるので,ブロック全体の定数は変わりません.要はブロック全体(小選挙区+比例区)で定数管理をしているイメージです.

 また,繰り上げ当選が多くて,その政党のブロック比例名簿の次点者がいなくなった場合(つまり,全候補者が当選してしまった場合)にはそのまま,ブロック比例区は欠員になります.

議員の中途の政党間移動はペナルティーなしに認める.

 本来なら,政党名で投票した人の事を考えると,議員の政党間移動は問題ですが,頻繁に議員が所属政党を動いている日本の現状を考えると,容認せざるを得ません.なお,無所属で当選した議員が,当選後に政党に所属するのは,何等問題ありません.

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2005年9月総選挙に基づくシミュレーション by HIT (2005.9.30)

 説明を読んでも分かりにくいでしょうから,2005年9月の総選挙を例に,新制度であれば,どうなるのか,シミュレーションしてみましょう.

選挙区数,比例定数等

 まずは,選挙区数,比例定数等です.

県別小選挙区数

  2000国調人口 県別定数 1選挙区当たり人口 格差
新方式 現行 新方式 現行 新方式 現行
北海道
  01北海道 5,683,062 13 12 437,159 473,589 1.43 1.75
東北
  02青森県 1,475,728 4 4 368,932 368,932 1.20 1.36
  03岩手県 1,416,180 4 4 354,045 354,045 1.15 1.30
  04宮城県 2,365,320 6 6 394,220 394,220 1.29 1.45
  05秋田県 1,189,279 3 3 396,426 396,426 1.29 1.46
  06山形県 1,244,147 3 3 414,716 414,716 1.35 1.53
  07福島県 2,126,935 5 5 425,387 425,387 1.39 1.57
北関東
  08茨城県 2,985,676 7 7 426,525 426,525 1.39 1.57
  09栃木県 2,004,817 5 5 400,963 400,963 1.31 1.48
  10群馬県 2,024,852 5 5 404,970 404,970 1.32 1.49
  11埼玉県 6,938,006 15 15 462,534 462,534 1.51 1.70
南関東
  12千葉県 5,926,285 13 13 455,868 455,868 1.49 1.68
  14神奈川県 8,489,974 19 18 446,841 471,665 1.46 1.74
  19山梨県 888,172 2 3 444,086 296,057 1.45 1.09
東京
  13東京都 12,064,101 27 25 446,819 482,564 1.46 1.78
北陸信越
  15新潟県 2,475,733 6 6 412,622 412,622 1.35 1.52
  16富山県 1,120,851 3 3 373,617 373,617 1.22 1.38
  17石川県 1,180,970 3 3 393,659 393,659 1.28 1.45
  18福井県 828,944 2 3 414,472 276,315 1.35 1.02
  20長野県 2,215,168 5 5 443,034 443,034 1.44 1.63
東海
  21岐阜県 2,107,700 5 5 421,540 421,540 1.37 1.55
  22静岡県 3,767,393 9 8 418,599 470,924 1.37 1.74
  23愛知県 7,043,300 16 15 440,206 469,553 1.44 1.73
  24三重県 1,857,339 5 5 371,468 371,468 1.21 1.37
近畿
  25滋賀県 1,342,832 3 4 447,611 335,708 1.46 1.24
  26京都府 2,644,391 6 6 440,732 440,732 1.44 1.62
  27大阪府 8,805,081 20 19 440,254 463,425 1.44 1.71
  28兵庫県 5,550,574 13 12 426,967 462,548 1.39 1.70
  29奈良県 1,442,795 4 4 360,699 360,699 1.18 1.33
  30和歌山県 1,069,912 3 3 356,637 356,637 1.16 1.31
中国
  31鳥取県 613,289 2 2 306,645 306,645 1.00 1.13
  32島根県 761,503 2 2 380,752 380,752 1.24 1.40
  33岡山県 1,950,828 5 5 390,166 390,166 1.27 1.44
  34広島県 2,878,915 7 7 411,274 411,274 1.34 1.52
  35山口県 1,527,964 4 4 381,991 381,991 1.25 1.41
四国
  36徳島県 824,108 2 3 412,054 274,703 1.34 1.01
  37香川県 1,022,890 3 3 340,963 340,963 1.11 1.26
  38愛媛県 1,493,092 4 4 373,273 373,273 1.22 1.38
  39高知県 813,949 2 3 406,975 271,316 1.33 1.00
九州
  40福岡県 5,015,699 11 11 456,973 455,973 1.49 1.58
  41佐賀県 876,654 2 3 438,327 292,218 1.43 1.08
  42長崎県 1,516,523 4 4 379,131 379,131 1.24 1.40
  43熊本県 1,859,344 5 5 371,869 371,869 1.21 1.37
  44大分県 1,221,140 3 3 407,047 407,047 1.33 1.50
  45宮崎県 1,170,007 3 3 390,002 390,002 1.27 1.44
  46鹿児島県 1,786,194 4 5 446,549 357,239 1.46 1.32
  47沖縄県 1,318,220 3 4 439,407 329,555 1.43 1.21
300 300 最小
306,645
最小
271,316
最大
1.51
最大
1.78

 現行方式も2000年国勢調査人口を用いているので,同じ人口を元にした2つの方式の違いがよく分かると思います.

 新方式化に伴う,定数の増減は,以下の通りです.

-1 山梨,福井,滋賀,徳島,高知,佐賀,鹿児島,沖縄
+1 北海道,神奈川,静岡,愛知,大阪,兵庫
+2 東京

 新方式(1+ドント式)の採用により,県間の人口格差は,1.78から1.51にまで改善します.この程度の格差であれば,小選挙区を引き直しても,1選挙区当たりの格差も2倍以内に収めることも可能だと思います.

 ちなみに,別項で1995年国勢調査に基づく選挙区数配分を行っていますので,それと比較すると,面白いことが分かります.現行制度では,1回だけ国勢調査による選挙区の見直しが行われました. この際には,当然ながら「1+最大剰余法」で再計算され,「5増(埼玉,千葉,神奈川,滋賀,沖縄),5減(北海道,山形,静岡,島根,大分)」の大規模な選挙区の見直しとなりました. しかし,ここで推薦している「1+ドント式」ですと,基となっている国勢調査人口は全く同じなのに,たったの「1増(兵庫),1減(埼玉)」で済んでしまいます.いかに,「1+ドント式」が安定しているかお分かりいただけるでしょうか。

 次に,ブロック比例定数です.

ブロック名 2000年国勢調査人口 ブロック総定数 小選挙区定数 新方式比例区定数 現行比例区定数 ブロック総定数1議席当たり人口 ブロック総定数1議席当たり人口格差
新方式 現行 新方式 現行 小選挙区の定数方式=新方式 小選挙区の定数方式=現行のまま 新方式 現行 新方式 現行
北海道 5,683,062 21 20 13 12 8 9 8 270,622 284,153 1.00 1.30
東北 9,817,589 36 39 25 25 11 11 14 272,711 251,733 1.01 1.15
北関東 13,953,351 51 52 32 32 19 19 20 273,595 268,334 1.01 1.23
南関東 15,304,431 55 56 34 34 21 21 21 278,262 273,293 1.03 1.25
東京 12,064,101 44 42 27 25 17 19 17 274,184 287,241 1.02 1.31
北陸信越 7,821,673 29 31 19 20 10 9 11 269,713 252,312 1.00 1.15
東海 14,775,732 53 54 35 33 18 20 21 278,787 273,625 1.03 1.25
近畿 20,855,585 75 77 49 48 26 27 30 278,074 270,852 1.03 1.24
中国 7,732,499 28 31 20 20 8 8 11 276,161 249,435 1.02 1.14
四国 4,154,039 15 19 11 13 4 2 6 276,936 218,634 1.03 1.00
九州 14,763,781 53 59 35 38 18 15 21 278,562 250,234 1.03 1.14
460 480 300 300 160 160 180 最小
269,713
最小
218,634
最大
1.03
最大
1.31

 ちょっと複雑なので,補足します.

 新方式では,ブロック総定数を比例配分(1+ドント式)します.これと比べるために現行のブロック比例+小選挙区の定数を次の欄に示します.最後の4欄が,1議席当たりの人口とその格差を示しています.現行では,最大1.31倍の格差があったのが,最大1.03倍の格差に縮まっています.新方式の比例区定数は,2通り示しています.小選挙区を新方式に改めた場合と,小選挙区は現行方式のままの場合です.もちろん小選挙区の新方式に改めた場合の方が望ましいのですが,小選挙区の区割は,議員の当落に直結するので,もめることが明らかなので,小選挙区の区割は現状のままとして,比例区定数だけを新方式にするという中間案も示しました.なお,以下で示す議席獲得シミュレーションは,この中間案で行っています.

シミュレーションの前提条件

 いよいよ議席シミュレーションです.以下の前提条件をもとに試算します.

 2票制の元で投票された今回の投票を,1票制の新制度に適用するのは,実際には難しいですが,少しでも実際の投票行動に近い比例区の投票をそのまま用いることにしました.

 実際には,小選挙区と比例区で異なった政党に投票をした人が結構いるので,本当に1票制のもとでの投票した場合とは,かなりの増減がでる可能性があります.そういう前提で,以下の試算をお読み下さい.

政党別ブロック別得票数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 社民 無所属
北海道 940,705 1,090,727 368,552 241,371 152,646 433,938   3,227,939
東北 1,901,595 1,748,165 620,638 325,176 362,523 (244,933)   5,203,030
北関東 2,892,780 2,260,717 937,345 477,958 323,979 (294,952)   7,187,731
南関東 3,510,617 2,439,549 1,007,504 566,945 444,753 (309,851)   8,279,219
東京 2,665,417 1,962,225 820,126 586,017 300,782 (290,027)   6,624,594
北陸信越 1,665,553 1,414,392 403,203 293,045 272,649 300,140   4,348,982
東海 3,066,048 2,766,443 987,290 502,501 300,574 (327,768)   7,950,624
近畿 4,003,209 3,157,556 1,626,678 1,051,949 619,883 (420,908)   10,880,183
中国 1,537,080 1,196,971 658,702 247,073 215,636 330,546   4,186,008
四国 821,746 711,927 317,927 175,994 119,089     2,146,331
九州 2,883,048 2,287,753 1,240,007 607,008 451,158 (307,454)   7,776,428
25,887,798 21,036,425 8,987,620 5,075,037 3,563,672 (3,260,517)   67,811,069
38.2% 31.0% 13.3% 7.5% 5.3% (4.8%)    

( )は, 5%ルールで切り捨てられる得票. 以下同じ.

比例配分の対象となる「その他政党等」は、北海道...新党大地, 北陸信越,中国...国民新党

小選挙区当選者数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 社民 無所属
北海道 4 8           12
東北 17 7         1 25
北関東 27 4         1 32
南関東 28 2 1       3 34
東京 23 1 1         25
北陸信越 13 5       1 1 20
東海 21 10         2 33
近畿 34 8 6         48
中国 16 2       1 1 20
四国 11 1         1 13
九州 25 4     1   8 38
219 52 8 0 1 2 18 300
73.0% 17.3% 2.7% 0.0% 0.3% 0.7% 6.0%  

ブロック比例区当選者数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 社民 無所属
北海道 2 0 2 1 1 3   9
東北 0 4 3 2 2     11
北関東 0 10 5 2 2     19
南関東 0 12 4 3 2     21
東京 0 11 4 3 1     19
北陸信越 0 4 2 1 1 1   9
東海 0 9 6 3 2     20
近畿 0 13 4 6 4     27
中国 0 3 3 1 1 0   8
四国 0 1 1 0 0     2
九州 0 7 5 2 1     15
2 74 39 24 17 4   160

 なんと,自由民主党は,小選挙区で得票率以上に大勝ちしているので,ブロック比例区では,全国で2議席しか取れません(この2議席は,民主党王国の北海道での惜敗分です.).ほとんどの自由民主党の候補者は,小選挙区で勝たない限り,絶対に当選できないのです.

 方や小選挙区で大負けした民主党は,北海道以外の全ブロック議席の配分を受けます. 前回, 前々回の選挙シミュレーションでは, (小選挙区の大勝で)比例当選者ゼロが並んでいたのと対照的です.

 また,今回の選挙では,ミニ政党がいくつか誕生しましたが,5%ルールを乗り越えて比例議席の配分を受ける資格を獲得できたのは、新党大地(北海道),国民新党(北陸信越,中国)のみです.新党日本は,どのブロックも5%に届かず,議席配分なしになります.中でも注目は,完全ローカル政党の新党大地です.北海道ブロックで10%以上の得票率をあげ,3議席を獲得します.小選挙区中心の現行制度では1議席に終わりましたが,比例代表中心の新制度では,得票率に応じた3議席を獲得することができます. 新制度下では,ローカル政党が増えるかも知れません.

全国比例区当選者数

  自民 民主 公明 共産 社民 無所属
全国 0 2 8 7 3     20

 最終調整用の全国比例区です.ここでも,小選挙区で大勝ちした自由民主党は,1議席も取れません.民主党は,各ブロック比例区で十分調整できたのか,2議席の獲得に留まります.他の中小政党は,ブロック比例区の切り捨てられた死に票を集めて,それなりの議席を得ることができます.

全体当選者数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 社民 無所属
北海道 6 8 2 1 1 3 0 21
東北 17 11 3 2 2 0 2 36
北関東 27 14 5 2 2 0 1 51
南関東 28 14 5 3 2 0 3 55
東京 23 12 5 3 1 0 0 44
北陸信越 13 9 2 1 1 2 1 29
東海 21 19 6 3 2 0 2 53
近畿 34 21 10 6 4 0 0 75
中国 16 5 3 1 1 1 1 28
四国 11 2 1 0 0 0 1 15
九州 25 11 5 2 2 0 8 53
全国 0 2 8 7 3 0 0 20
221 128 55 31 21 6 18 480
現行方式 296 113 31 9 7 6 18  
議席占有率 46.0% 26.7% 11.5% 6.5% 4.4% 1.3% 3.8%  
得票率 38.2% 31.0% 13.3% 7.5% 5.3% (4.8%)    
7.9% -4.4% -1.8% -1.0% -0.9% -3.9%    

 ブロック当選者は,ブロック比例区の当選者とブロック内の小選挙区の当選者の合計です.

 この制度によれば,自由民主党は,小選挙区で議席を取り過ぎたために,比例区では2議席しか取れず,221議席にとどまりますが,連立与党合計では,276議席と過半数どころか,絶対安定多数を越えます. しかし,現行制度のように,連立与党で51.5%の得票率しかないのに,68.1%もの議席を得てしまい,国民をして「与党を勝たせすぎた」などという後悔を生ませるようなことはありません. 国民が想像した「ほどよい与党の勝利」に近い数字になっています.

 なお,現状より議席を減らすのは,自由民主党だけで,他の政党は,軒並み増加しています.しかし,この数字であっても,これらの政党は,得票率をそのまま議席配分したよりは,議席がかなり少ないので,いかに現行制度が,第2党以下に理不尽な制度で,大量の死に票を生む制度であるか分かると思います.

 ただし,最初にいいましたように,現行の2票制下での選挙結果を1票制のシミュレーションに用いるには,精度の問題があります.特に自由民主党の候補者は,「小選挙区で落ちたら後がない」状況になりますので,その危機感をばねに同情票を集め,もっと得票を伸ばすことも十分に考えられます.あくまで,机上の計算であると考えてください.

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2000年6月総選挙に基づくシミュレーション by HIT (2000.6.28)

 説明を読んでも分かりにくいでしょうから,2000年6月の総選挙を例に,新制度であれば,どうなるのか,シミュレーションしてみましょう.

選挙区数,比例定数等

 まずは,選挙区数,比例定数等です.

県別小選挙区数

  1995国調人口 県別定数 1選挙区当たり人口 格差
新方式 現行 新方式 現行 新方式 現行
北海道
  01北海道 5,692,321 13 13 437,871 437,871 1.42 1.70
東北
  02青森県 1,481,663 4 4 370,416 370,416 1.20 1.44
  03岩手県 1,419,505 4 4 354,876 354,876 1.15 1.38
  04宮城県 2,328,739 6 6 388,123 388,123 1.26 1.51
  05秋田県 1,213,667 3 3 404,556 404,556 1.32 1.57
  06山形県 1,256,958 3 4 418,986 314,240 1.36 1.22
  07福島県 2,133,592 5 5 426,718 426,718 1.39 1.66
北関東
  08茨城県 2,955,530 7 7 422,219 422,219 1.37 1.64
  09栃木県 1,984,390 5 5 396,878 396,878 1.29 1.54
  10群馬県 2,003,540 5 5 400,708 400,708 1.30 1.56
  11埼玉県 6,759,311 16 14 422,457 482,808 1.37 1.88
南関東
  12千葉県 5,797,782 13 12 445,983 483,149 1.45 1.88
  14神奈川県 8,245,900 19 17 433,995 485,053 1.41 1.89
  19山梨県 881,996 2 3 440,998 293,999 1.43 1.14
東京
  13東京都 11,773,605 27 25 436,059 470,944 1.42 1.83
北陸信越
  15新潟県 2,488,364 6 6 414,727 414,727 1.35 1.61
  16富山県 1,123,125 3 3 374,375 374,375 1.22 1.46
  17石川県 1,180,068 3 3 393,356 393,356 1.28 1.53
  18福井県 826,996 2 3 413,498 275,665 1.34 1.07
  20長野県 2,193,984 5 5 438,797 438,797 1.43 1.71
東海
  21岐阜県 2,100,315 5 5 420,063 420,063 1.37 1.63
  22静岡県 3,737,689 9 9 415,299 415,299 1.35 1.62
  23愛知県 6,868,336 16 15 429,271 457,889 1.40 1.78
  24三重県 1,841,358 5 5 368,272 368,272 1.20 1.43
近畿
  25滋賀県 1,287,005 3 3 429,002 429,002 1.40 1.67
  26京都府 2,629,592 6 6 438,265 438,265 1.43 1.70
  27大阪府 8,797,268 20 19 439,863 463,014 1.43 1.80
  28兵庫県 5,401,877 12 12 450,156 450,156 1.46 1.75
  29奈良県 1,430,862 4 4 357,716 357,716 1.16 1.39
  30和歌山県 1,080,435 3 3 360,145 360,145 1.17 1.40
中国
  31鳥取県 614,929 2 2 307,465 307,465 1.00 1.20
  32島根県 771,441 2 3 385,721 257,147 1.25 1.00
  33岡山県 1,950,750 5 5 390,150 390,150 1.27 1.52
  34広島県 2,881,748 7 7 411,678 411,678 1.34 1.60
  35山口県 1,555,543 4 4 388,886 388,886 1.26 1.51
四国
  36徳島県 832,427 2 3 416,214 277,476 1.35 1.08
  37香川県 1,027,006 3 3 342,335 342,335 1.11 1.33
  38愛媛県 1,506,700 4 4 376,675 376,675 1.23 1.46
  39高知県 816,704 2 3 408,352 272,235 1.33 1.06
九州
  40福岡県 4,933,393 11 11 448,490 448,490 1.46 1.74
  41佐賀県 884,316 2 3 442,158 294,772 1.44 1.15
  42長崎県 1,544,934 4 4 386,234 386,234 1.26 1.50
  43熊本県 1,859,793 5 5 371,959 371,959 1.21 1.45
  44大分県 1,231,306 3 4 410,435 307,827 1.33 1.20
  45宮崎県 1,175,819 3 3 391,940 391,940 1.27 1.52
  46鹿児島県 1,794,224 4 5 448,556 358,845 1.46 1.40
  47沖縄県 1,273,440 3 3 424,480 424,480 1.38 1.65
300 300 最小
307,465
最小
257,147
最大
1.46
最大
1.89

 現行方式も1995年国勢調査人口(ただし,速報値)を用いているので,同じ人口を元にした2つの方式の違いがよく分かると思います.

 新方式化に伴う,定数の増減は,以下の通りです.

-1 山形,山梨,福井,島根,徳島,高知,佐賀,大分,鹿児島
+1 千葉,愛知,大阪
+2 埼玉,神奈川,東京

 新方式(1+ドント式)の採用により,県間の人口格差は,1.89から1.46にまで改善します.この程度の格差であれば,小選挙区を引き直しても,1選挙区当たりの格差も2倍以内に収めることも可能だと思います.

 次に,ブロック比例定数です.

ブロック名 1995年国勢調査人口 ブロック総定数 小選挙区定数 新方式比例区定数 現行比例区定数 ブロック総定数1議席当たり人口 ブロック総定数1議席当たり人口格差
新方式 現行 新方式 現行 小選挙区の定数方式=新方式 小選挙区の定数方式=現行のまま 新方式 現行 新方式 現行
北海道 5,692,321 21 21 13 13 8 8 8 271,063 271,063 1.04 1.23
東北 9,834,124 36 40 25 26 11 10 14 273,170 245,853 1.04 1.12
北関東 13,702,771 50 51 33 31 17 19 20 274,055 268,682 1.05 1.22
南関東 14,925,678 54 53 34 32 20 22 21 276,401 281,617 1.06 1.28
東京 11,773,605 43 42 27 25 16 18 17 273,805 280,324 1.05 1.27
北陸信越 7,812,537 29 31 19 20 10 9 11 269,398 252,017 1.03 1.14
東海 14,547,698 53 55 35 34 18 19 21 274,485 264,504 1.05 1.20
近畿 20,627,039 75 77 48 47 27 28 30 275,027 267,884 1.05 1.22
中国 7,774,411 29 32 20 21 9 8 11 268,083 242,950 1.03 1.10
四国 4,182,837 16 19 11 13 5 3 6 261,427 220,149 1.00 1.00
九州 14,697,225 54 59 35 38 19 16 21 272,171 249,106 1.04 1.13
460 480 300 300 160 160 180 最小
261,427
最小
220,149
最大
1.06
最大
1.28

 ちょっと複雑なので,補足します.

 新方式では,ブロック総定数を比例配分(1+ドント式)します.これと比べるために現行のブロック比例+小選挙区の定数を次の欄に示します.最後の4欄が,1議席当たりの人口とその格差を示しています.現行では,最大1.28倍の格差があったのが,最大1.06倍の格差に縮まっています.新方式の比例区定数は,2通り示しています.小選挙区を新方式に改めた場合と,小選挙区は現行方式のままの場合です.もちろん小選挙区の新方式に改めた場合の方が望ましいのですが,小選挙区の区割は,議員の当落に直結するので,もめることが明らかなので,小選挙区の区割は現状のままとして,比例区定数だけを新方式にするという中間案も示しました.なお,以下で示す議席獲得シミュレーションは,この中間案で行っています.

シミュレーションの前提条件

 いよいよ議席シミュレーションです.以下の前提条件をもとに試算します.

 2票制の元で投票された今回の投票を,1票制の新制度に適用するのは,実際には難しいですが,少しでも実際の投票行動に近い比例区の投票をそのまま用いることにしました.

 実際には,小選挙区で与党,比例区で野党という投票をした人が結構いそうなので,この試算よりは,与党の投票比率は,増え,野党が減る可能性があります.そういう前提で,以下の試算をお読み下さい.

政党別ブロック別得票数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 自由 社民
北海道 735,318 898,678 368,198 365,061 236,301 255,319 17,987 2,876,862
東北 1,545,028 1,024,253 474,238 391,055 786,751 517,267 96,174 4,834,766
北関東 1,924,629 1,552,220 793,124 672,615 781,818 518,647 37,767 6,280,820
南関東 1,734,297 1,940,792 871,150 808,453 839,845 670,141 145,858 7,010,536
東京 1,110,177 1,653,045 726,203 817,045 776,018 377,230 236,919 5,696,637
北陸信越 1,414,622 1,024,328 354,554 371,247 448,526 418,752 10,987 4,043,016
東海 2,011,334 2,151,270 818,473 699,970 683,153 519,193 141,050 7,024,443
近畿 2,185,236 2,154,312 1,483,220 1,458,970 878,910 843,060 225,615 9,229,323
中国 1,364,938 831,747 587,603 341,851 340,358 353,973 15,164 3,835,634
四国 700,719 402,457 266,791 213,729 162,700 196,277 5,316 1,947,989
九州 2,217,127 1,434,888 1,018,478 579,020 655,110 933,821 226,131 7,064,575
16,943,425 15,067,990 7,762,032 6,719,016 6,589,490 5,603,680 1,158,968 59,844,601
28.3% 25.2% 13.0% 11.2% 11.0% 9.4% 1.9%  

小選挙区当選者数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 自由 社民
北海道 7 6           13
東北 15 6     3   2 26
北関東 20 8         3 31
南関東 18 12     1   1 32
東京 8 13         4 25
北陸信越 16 3         1 20
東海 16 15         3 34
近畿 23 10 6     2 6 47
中国 18 1         2 21
四国 11 1         1 13
九州 25 5 1     2 5 38
177 80 7 0 4 4 28 300
59.0% 26.7% 2.3% 0.0% 1.3% 1.3% 9.3%  

ブロック比例区当選者数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 自由 社民
北海道 0 1 2 2 1 2   8
東北 0 0 3 2 2 3   10
北関東 0 2 5 4 5 3   19
南関東 0 2 6 5 5 4   22
東京 0 0 5 6 5 2   18
北陸信越 0 2 1 2 2 2   9
東海 0 0 6 5 5 3   19
近畿 0 5 4 10 6 3   28
中国 0 3 2 1 1 1   8
四国 0 1 1 1 0 0   3
九州 0 3 4 3 3 3   16
0 19 39 41 35 26 0 160

 なんと,自由民主党は,小選挙区で得票率以上に大勝ちしているので,ブロック比例区では,全国で1議席も取れません.こうなれば,「コスタリカ方式」や「終生比例1位」などといっても,絵に書いた餅です.(その前に,拘束名簿方式でなくなるので,意味はなくなっているのですが...)自由民主党の候補者は,小選挙区で勝たない限り,絶対に当選できないのです.

 民主党も,得票率以上に小選挙区で大勝ちした東北,東京,東海ブロックでは,比例区では1議席も取れません.これらのブロックの立候補者は,小選挙区で勝ち抜くしかないのです.「小選挙区がだめでも比例があるさ」などという甘い考えは,通用しませんから,なかなかサバイバルな選挙戦が展開されそうです.

全国比例区当選者数

  自民 民主 公明 共産 自由 社民
全国 0 1 5 3 4 7   20

 最終調整用の全国比例区です.ここでも,小選挙区で大勝ちした自由民主党は,1議席も取れません.民主党は,東京や東海での取り過ぎもあって,1議席の獲得に留まります.他の中小政党は,ブロック比例区の切り捨てられた死に票を集めて,それなりの議席を得ることができます.得に,最弱政党であり,全ブロックで切り捨ての憂き目を見たと思われる社会民主党は,7議席もの調整議席を手にします.

全体当選者数

ブロック名 自民 民主 公明 共産 自由 社民
北海道 7 7 2 2 1 2 0 21
東北 15 6 3 2 5 3 2 36
北関東 20 10 5 4 5 3 3 50
南関東 18 14 6 5 6 4 1 54
東京 8 13 5 6 5 2 4 43
北陸信越 16 5 1 2 2 2 1 29
東海 16 15 6 5 5 3 3 53
近畿 23 15 10 10 6 5 6 75
中国 18 4 2 1 1 1 2 29
四国 11 2 1 1 0 0 1 16
九州 25 8 5 3 3 5 5 54
全国 0 1 5 3 4 7 0 20
177 100 51 44 43 37 28 480
現行方式 233 127 31 20 22 19 28  
議席占有率 36.9% 20.8% 10.6% 9.2% 9.0% 7.7% 5.8%  
得票率 28.3% 25.2% 13.0% 11.2% 11.0% 9.4% 1.9%  
8.6% -4.3% -2.3% -2.1% -2.1% -1.7% 3.9%  

 ブロック当選者は,ブロック比例区の当選者とブロック内の小選挙区の当選者の合計です.

 この制度によれば,自由民主党は,小選挙区で議席を取り過ぎたために,比例区では1議席も取れず,177議席にとどまります.連立与党合計でも,235議席と過半数に達しません.ただし,無所属その他の大半は保守系ですので,追加公認によって,かろうじて過半数を確保する,というのが新制度で行った場合のありそうなシナリオです.

 なお,現状より議席を減らすのは,自由民主党と民主党だけで,他の政党は,軒並み倍増近い増加となっています.しかし,この数字であっても,これらの政党は,得票率をそのまま議席配分したよりは,議席が少ないので,いかに現行制度が,第3党以下に理不尽な制度で,大量の死に票を生む制度であるか分かると思います.

 ただし,最初にいいましたように,現行の2票制下での選挙結果を1票制のシミュレーションに用いるには,精度の問題があります.特に自由民主党の候補者は,「小選挙区で落ちたら後がない」状況になりますので,その危機感をばねに同情票を集め,意外と得票を伸ばすことも十分に考えられます.あくまで,机上の計算であると考えてください.

 以上,現行制度と整合制をとりつつ,極力民意を反映させる制度として,HIT版比例代表小選挙区連用制を説明してきました.議論の下敷きになれば幸いです.

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