小選挙区比例代表併用制はいい制度 19997.09.21


 比例代表を個人名で書くといい、との話ですが、やはり比例代表ですから、個人名でなく、政党名を書くのがスジだと思います。私としては、選挙区だって「政党名」で書くべきだと思います。現在は選挙区と比例区の2票制ですが、これを1票にして、政党名を書くのです。そして、比例区の当選者数は、選挙区での当選人数を差し引いてきめます。つまり「選挙区当選者数」+「比例区当選者数」が全国の得票率と完全に一致することになります。選挙制度改革当時に話題になった呼名では、「小選挙区比例代表併用制」と呼ばれていた制度ですね。

 こうすると、全国500の議席は、完全な比例代表選挙で選ばれる議席数と一致する訳で、民意の正確な反映が出来ます。そして、小選挙区部分で、当選者の顔ぶれは投票者が、ある程度が選べますから、名簿順位がすべての完全比例代表制よりは、選挙民に近い選挙ができます。

 実は、これらの制度は、ヨーロッパではかなり以前から取られている制度で、特に、ドイツで発展してきました。独裁の反省から、独裁を防ぐ観点から発達してきた比例代表制度ですが、長い年月を経て、数々の欠点を克服して、ほぼ理想的な制度に仕上がっています。

 世界中にいろいろな選挙制度がありますが、日本には、国民意識が良く似ているドイツの選挙制度が一番合っているような気がします。今回に限らず、「比例代表制をやめて、すべて個人名表記の選挙にしよう」という意見が良くでますが、現状で比例代表制度をやめてしまえば、完全小選挙区制になってしまいます。死に票が圧倒的に多く、独裁政治に陥り易いこうした選挙制度を日本で導入するのは、非常な危険を伴います。

 アメリカのような党議拘束のない完全地域代表の所や、イギリスのような階級対決社会ならば、それも良いでしょうが、党議拘束が強く、しかも、何事につけて中庸が重んじられる日本では、複数の価値観を有する政党が並立できる、比例代表制が一番良いと思います。


 ただし、この制度の欠点として、「無所属立候補ができない」、「大政党に有利」、「小党乱立になる」、「反社会的な団体も国会議員を送り込める」などが上げられますが、いずれも解決策があります。
(1)無所属立候補ができない、大政党に有利
 小選挙区も政党名で投票するため、無所属では立候補できない上に、全選挙区に候補を立てられる大政党が有利になる、というものですが、さて、それは不都合な事なのでしょうか。

 国会の仕事は、法律や予算を決めたり、政府を監視したりすることですが、どれも国会議員一人でできることではなく、多数決に従った「国会の総意」だけが実効性を有します。多数派を要しないと何もできない世界で、たった一人の無所属議員の存在価値って、何があるというのでしょうか。

 たまに、与野党伯仲で、無所属議員の動静がキャスティング・ボードを握ることがありますが、こんな事は例外中の例外です。また、逆にたった1人の意見に、他の大多数の人の意見が消されるこうした状態というのは、国会にとって好ましいことではありません。どうどうと、国民に政策を説いて、多数当選を目指す「政党」という形態で争うのが、本来のスジです。

 また、無所属がいやなら、政党を設立して、立候補するという方法もあります。(ただし、一人立候補は、後述の5%ルールに抵触しますから、最低でも20-30人の候補者を揃えることが必要です。)

 それから、全選挙区に候補者を立てられない小政党に不利だ、という話ですが、こんな事は、甘え以外の何ものでもありません。政権政党を目指す党であれば、300人程度の候補者を集められなくてどうしますか。政権まではいらない、議席獲得できれば、という程度の小政党なら、若干の不利を被るかも知れません。でも、良く考えてみて下さい。こんな小政党は、完全小選挙区制の基では、1議席だって取れないことを思えば、「小選挙区比例代表併用制」の方が絶対に有利です。オンの字と言えるのではないでしょうか。

(2)「小党乱立になる」「反社会的な団体も議席を獲得する可能性がある」
 比例代表制といえば、すぐにこうした指摘がなされますが、これには、諸外国で取られている5%ルールが有効です。

 つまり、「全国の得票率が5%未満の政党には、例え計算上議席が与えられるようになっても、議席を配分しない。」というルールで、これにより、小党乱立や反社会団体の国会進出を防いでいます。5%という数字は、ヨーロッパの長い比例代表制の歴史が実地体験から生み出した魔法の数字で、1%でも、3%でも、10%でもなく、5%なのです。

 日本において、いつの選挙でも、5%以上の得票率を有した政党は、3-6程度です。この数字は、「国民の多様なニーズを反映するには、十分多い数字」であり、かつ「政治的な安定を図るためには、十分少ない数字」なのです。

 現在の衆議院500議席で5%ルールを適用しますと、議席数25が最低ラインになります。(比例代表制の元では、得票率と議席比率は完全に一致します。)

 また、この制度下では、「定数削減がしやすい」という副産物があります。どうせ議席比率は完全得票率比例であるなら、総定数を200や300にしても、議会の構成比率は全く同じですから、議員定数削減に抵抗感がありません。


 以上、選挙制度改善について述べてきましたが、最終的に、国会議員の資質を決めるのは、選挙民です。選挙民が賢くならないことには、どんな制度改革も無意味です。国民の側にも、勉強する義務があるということでしょう。

By HIT(1997.09.21)