小選挙区定数の県別分配方式 1997.09.25[2005.9.30訂補]


 死に票を極限まで少なくするのが、比例代表制中心のよいところです。また、あまり褒められた事ではありませんが、小選挙区の区割が少々いびつでも、全体として、政党の当選者数は、得票率に比例している訳ですから、1票の格差の持つ意味は現在の制度ほどなく、小選挙区の区割を毎回いじらなくても、選挙が無効になる事はない、という利点もあります。

 小選挙区制中心の制度では、原則として、国勢調査ごとに選挙区の見直しが必要になりますから、その労力や経費はバカになりません。しかも、日本の衆議院の議員定数割り付け方式が、諸外国にないような「1+最大剰余法」という不安定な計算方式ですから、ちょっとした人口移動で、定数が変動します。次の選挙区改編時には、相当にもめることが予想されます。


 現在の日本の衆議院の小選挙区(300)の配分方式ですが、以下のようになっています。

(1) まず全県に1議席をわりあてる(47)
(2) のこりの254議席を県ごとに、人口に従って「最大剰余法」で割り当てる
(3) (1),(2)の合計議席を県内で適当に区割する。


 この最大剰余法というのがくせもので、これは、以下の方式で算出します。

(a) まず、全人口で総定数を割って、<1議席当たり人口>を出す。
(b)<各県の人口>を<1議席当たり人口>で割る。
(c) (b)の結果を<整数部分>と<小数点以下>に分ける
(d) まず、各県の<整数部分>の議席を確定させる。
(e) 総定数に満たない議席は、<小数点以下>が大きいものから順に割り当てる

 この方式の利点は、計算が楽(割り算を1回するだけでよい。)ということで、かつては、諸外国で用いられていました。しかし、この計算方式には、重大な欠点があります。<小数点以下>という意味のない数字を比べる事も問題ですが、最大の問題点は、「アラバマのパラドックス」という逆転現象が頻繁に起こるということです。

 これは、アメリカのアラバマ州の下院議員選挙区の区割時に起こった事件ですが、「総定数が増えたのに、配分議席数が減った」という不思議な事が、この方式だと起こるのです。

 また、こうしたパラドックスまで行かなくても、「配分数が不安定」という爆弾を抱えています。

 例えば、他の計算方式ならば、微細な人口変動に対して「1増1減」で対応できる場合でも、この「最大剰余法」で計算すると、「5増5減」もの変更が必要になる、というような、不必要な増減が頻繁に発生するのです。

 このような理不尽なことが起こる方式ですから,諸外国では、すでに使われなくなっており、「ドント式」、「サンラグ式」、などの計算方式が一般的に用いられています。

 お気付きの方もあるでしょうが、これらの方式は、比例代表制での政党別の当選議員数を決める計算式と同じものです。「全体の議席が決まっている状態で、グループごとの議席を比例配分する」という意味では、全く同じ命題ですから、当然といえば当然です。
 さて、各方式で一長一短があります。「ドント式」は大政党(大県)に圧倒的に有利な配分方式です。それを修正して、小政党(小県)に配慮したのが、「サンラグ式」です。

 さて、日本の議席配分式は、この時代遅れでスマートでない「最大剰余法」に、無条件配分の1議席を加えた「1+最大剰余法」法(と勝手に私が呼んでいます)です。最大剰余法は、小数点以下のブレが大きく、他の計算式だと県内選挙区数の人口比の最大格差が1.4倍程度に収まる場合でも、平気で1.7倍程度開いてしまいます.
 県レベルで1.7倍も差がついてしまえば、それをさらに細分化した個別選挙区間の格差を2.0倍以内に収めるのは至難の業です.事実,現在の衆議院小選挙区の人口比は,当初においても,2000年国勢調査を基にした見直し時も,2倍以上の格差がついてしまいます。

 こんな選挙制度を決めた日本というのは、諸外国から笑い者になっても文句が言えません。


 でも、「小県に配慮した議席配分」は必要でしょう。私もそう思います。

 比例配分方式で上げた「ドント式」、「サンラグ式」等、どれも格差が極力小さくなるようになっています。ドント式は徹底した「大県有利」の配分式ですが、私のおすすめは「1+ドント式」(これも私の勝手な命名)がそれです。

 この方式は、現在の衆議院小選挙区の県別割り当て方式の「1+最大剰余法」の最大剰余法部分をドント式に変えただけのものですが、1議席あたり人口は格段に狭い範囲に収まります.しかも、1議席あたり人口は、小県ほど有利で、大きい県は、必ず不利になるようになっています。


 と、以上、現状の「1+最大剰余法」の理不尽さと、それに代わる「1+ドント式」の説明をしてきましたが、こうした理不尽な配分方式がいまだに取られているという事は、日本という国の政治家と官僚と国民が、いかに「きっちりと比例配分して均等さを確保する」することに、無頓着だったかを表しています。いかに、すべての事柄を、ナアナアで理屈抜きの決定を行ってきたか、そのあたりから反省してみるべきでしょう。

By HIT(1997.09.25)[2005.9.30訂補]