鳥取県議会の定数配分問題 1997.09.25


 実は、今、平成7年国勢調査の確定数字の発表を受けて、鳥取県の県議会議員選挙の議席配分が問題になっています。

 何が問題になっているかというと、40の総定数を38に減らすことは決まっているのですが、その配分方法でもめているのです。


 道府県議会の選挙区は、「市郡」単位で行うこととなっており、選挙区ごとの定数は、「人口に比例して」配分することとなっています。(公職選挙法第15条) その比例配分式は、悪名高い「最大剰余法」で行うと自治省の見解ではなっており、ここにすべての問題があります。

 ごく普通に、県議会議員選挙の総定数を38にした場合の、選挙区ごとの定数配分は、総定数を38とした上で、比例配分で求めます。(それが最大剰余法かどうかは別にして)しかし、県議会の会派である「創造」が別の提案をしました。「総定数40で計算仕直した場合には、+1の選挙区が2つ、-1の選挙区が2つ出る。このうち増員の選挙区をそのまま据え置いて、減員だけ実施すれば、総定数が38 になる。」というものです。分かりにくいので、以下に計算結果を示します。


(定数配分計算)
     H7年  現行         創造
    国勢調査 定数  最大剰余法  方式   ドント式   1+ドント式
    人 口       40   38   38   40   38   40   38

鳥取市 146,330   9   10(+1) 9   9   10(+1) 10(+1) 9   8(-1)
米子市 134,762   9   9   8(-1) 9   10(+1) 9   8(-1) 8(-1)
倉吉市 51,107   3   3   3   3   3   3   3   3
境港市 37,365   2   2   2   2   2   2   3(+1) 3(+1)
岩美郡 26,606   2   2   2   2   2   1(-1) 2   2
八頭郡 52,658   4   3(-1) 3(-1) 3(-1) 3(-1) 3(-1) 4   3(-1)
気高郡 23,514   2   2   2   2   1(-1) 1(-1) 2   2
東伯郡 68,497   4   5(+1) 4   4   5(+1) 5(+1) 4   4
西伯郡 51,862   3   3   3   3   3   3   3   3
日野郡 22,228   2   1(-1) 2   1(-1) 1(-1) 1(-1) 2   2

 計  614,929   40   40   38   38   40   38   40   38


(1議席あたり人口)
     H7年  現行         創造
    国勢調査 定数  最大剰余法  方式   ドント式   1+ドント式
    人 口       40   38   38   40   38   40   38

鳥取市 146,330 16,259 14,633 16,259 16,259 14,633 14,633 16,259 18,291
米子市 134,762 14,974 14,974 16,845 14,974 13,476 14,974 16,845 16,845
倉吉市 51,107 17,036 17,036 17,036 17,036 17,036 17,036 17,036 17,036
境港市 37,365 18,683 18,683 18,683 18,683 18,683 18,683 12,455 12,455
岩美郡 26,606 13,303 13,303 13,303 13,303 13,303 26,606 13,303 13,303
八頭郡 52,658 13,165 17,553 17,553 17,553 17,553 17,553 13,165 17,553
気高郡 23,514 11,757 11,757 11,757 11,757 23,514 23,514 11,757 11,757
東伯郡 68,497 17,124 13,699 17,124 17,124 13,699 13,699 17,124 17,124
西伯郡 51,862 17,287 17,287 17,287 17,287 17,287 17,287 17,287 17,287
日野郡 22,228 11,114 22,228 11,114 22,228 22,228 22,228 11,114 11,114

平均 614,929 15,373 15,373 16,182 16,182 15,373 16,182 15,373 16,182
1議席あたり人口
   最大   境港市 日野郡 境港市 境港市 気高郡 岩美郡 西伯郡 鳥取市
   最小   日野郡 気高郡 日野郡 気高郡 岩美郡 東伯郡 日野郡 日野郡

   最大格差 1.680 1.890 1.680 1.890 1.767 1.942 1.555 1.645


 上の表を見てもらうと分かるように、減員する選挙区が違ってきます。特に、日野郡は、最大剰余法の40定員の場合には、1議席なのに、38定員の場合には、 2議席と、「アラバマのパラドドックス」そのままの状況が起こっています。

 例えパラドックスがあるにしても、計算どうりである結果を、訳の分からない方法で代えてしまう「創造方式」に理はありません。創造方式の欠点は、以下の通りです。

(1) 定数40で再計算した場合に、増と減が2つづつ生じたのは、たまたま偶然であり、今後もそのような偶然が生じるとは限らない。再度の議員定数削減時にこの方法は使えない可能性が高い。

(2) 1議席あたり人口を2倍以内に収める必要があるが、この手法では、どんどん格差が広がる可能性が高い。

 つまり、「創造方式は、今回1回限りの手法で、今後使える保証がない」というのが、一番の問題なのです。

 実は、この「創造方式」は、首都圏などの人口急増県で、今回と逆に、減らす方をそのまま据え置き、増だけを実施するなどの方法で、行われました。しかし、それらは、「正しい計算をすると議席配分がゼロになる(隣と合区)選挙区への配慮から」行われていたものであり、そうした理由が一切ない創造案にも適用する必然性は全くありません。しかも、こうした特例配分でさえ、裁判で県の負けが認められるなどして、全国で正常化へむかいつつあります。

 では、最大剰余法の38定数で、決まりか、といいますと、私としては、別の比例配分式を使う事を提案したいです。過疎地の選挙区にも配慮した「1+ドント式」です。

 もう一度、計算結果を見て下さい。下の「1議席あたり人口」を見ると、「最大剰余法」では、定数40の時は、鳥取、米子の大選挙区が有利、38の時は、不利と、てんでバラバラです。最大剰余法は、サイコロを振っているようなものだからです。

 右の方に示した「ドント式」と「1+ドント式」の1議席あたり人口を見て下さい。ドント式では、見事に、鳥取、米子などの大選挙区が有利になっています。逆に「1+ドント式」では、鳥取、米子の両選挙区は、常に不利な設定になります。

 特に注目して欲しいのが、定数38の時の「1+ドント式」です。1議席あたりの人口が多い選挙区(不利な選挙区)は、鳥取、米子、倉吉、八頭、東伯、西伯の人口5万人以上の大選挙区が並び、逆に1議席あたりの人口が少ない選挙区(有利な選挙区)には、境港、岩美、気高、日野といった人口の少ない選挙区が並んでおり、きれいに分化しています。「1+ドント式」の面目躍如といったところでしょうか。


 どうせ既定外の配分方法を提案するのならば、「日野郡救済といった個別の事由ではなく、『人口過小選挙区全体の救済』につながり、かつ、人口比例も守られる」こうした方式の提案をした方が、今後のためだと思います。

By HIT(1997.09.25)