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金融済生への道/利息制限の愚策

最終更新[2000.2.6]
 今回の利息制限法の改正は,私は強い疑問を持っています.順を追って,どこが問題なのか,探っていきましょう.

40%は本当に高金利か

 まず,上限利息が妥当がどうかという問題です.

 今回の改正で,上限金利は,年利40%から30%弱になりました.商工ローン対策といわれますが,実は他の金融機関にも影響が大きいです.サラ金は真っ先に思い付きますが,実は,みんなも持っている大手のクレジットカードのキャッシング金利も30%以上のものが結構あり,ひっかかってしまいます.

 年利30%というと高利のようですが,そうでもありません.1万円を1か月間借りた時の利息は,たったの250円.250円じゃ,カード会社も事務費で消えてしまい,儲けなんかあったものじゃありません.

 一般に,小口で短期間の融資に対しては,少々金利が高くても借りる側も困りませんし,また貸す側も高くないと商売になりません.それなのに,大口も小口も短期も長期もいっしょにエイヤーとばかり,30%で上限を切るとは,いったい国は何を考えているんでしょう.このままでは,小口短期融資は,採算が合わないとばかり,撤退するところが相次ぎ,利用者も困ってしまう可能性だってあるのです.

 また,硬直的な利息制限は,インフレ時にも困る可能性があります.年間100%程度のハイパーインフレは,政府の財政破たん等で起こる可能性はは十分ありますが,そうなった場合,インフレ率よりも低い30%という利息制限が生きていると,誰もお金を貸す者がいなくなってしまい,経済が動かなくなります.

 ハイパーインフレとまでいかなくても,年10%-20%程度の軽いインフレが起こった場合でも,30%の上限金利がそのままだと,実質金利は10%-20%という低利になってしまい,貸金業はあがあったり,すなわち,お金を貸す人がいなくなって,借りる人が困ってしまう,という事態に陥ってしまいます.

 つまり,本来,制限利息は,インフレ率(もしくはそれと連動する公定歩 合等)と連動する形で決められるべきなのです.

 これらの詳細な検討なしに,商工ローンの社会問題化を沈静かするために行き当たりばったりの適当な制限強化は,将来に禍根を残す可能性が大きいです.

 以上総合すると,

「上限金利は,金額と期間によって細かく決められるべきであり,更に,公定歩合との連動する方式が望ましい」

ということです.


商工ローン以外なら安く貸せられるという幻想

 一部のマスコミで,「銀行がもっと低利で貸せば,商工ローン問題は起こらなかった」と主張しますが,本当でしょうか.また,他の一部のマスコミが「商工ローン会社は3%で資金を調達して,30%で貸すのだから,ぼろ儲け」と論調していますが,これも本当でしょうか.

 いえ,そんな事はありません.実際には,もし,商工ローンで借りるような人に銀行が融資したとしても,同じような高利になってしまう可能性が高いですし,商工ローン会社だって,ぼろ儲けしている訳ではないのです.

 ちょっと検証してみましょう.仮に,貸金業者が1円も儲けないという有りえない条件を仮定してみましょう.そうなると利息は0円にできるでしょうか.

 いえ,0円にはなりません.それは,「貸し倒れによる元本ロスがあるから」です.貸したお金が必ず返ってくるのならば,利息0円でも損はしません.でも,貸した先が倒産したりして,貸し倒れるとその分の損は,貸金業者がかぶることになります.いくらなんても,それでは貸金業者もたまりませんから,貸金業者は,利息を取らないと話になりません.

 仮に,100社に1,000万円ずつ融資したとして,100社のうち,10%程度が1年以内に倒産して,完全に元本は帰ってこない場合を想定しましょう.すると,1年後の返済される元本は,1社平均で1,000万円から900万円に減ってしまいます.

 で,貸金業者は,この穴を残りの90社の利息で埋めるしかありません.0.90の逆数1.12---12%の利息を取って初めて採算トントンということになります.つまり,1年後の生存確率の逆数分は利子を取らないと,貸金業者は赤字になってしまうのです.これは,商工ローンであろうが,銀行であろうが,政府系金融機関であろうが変わらない真実なのです.銀行の方が貸し出し金利が低く,サラ金や商工ローンが高いのは,単に銀行が生存確率の低い(倒産しそうな)貸出先には融資をしていない,という,顧客層の違いだけなのです.

 ちなみに,今回の法律改正で年利30%に利息が制限されたということは,「1年以内に倒産する確率が23%以上ある会社は,どこからもお金を貸してもらえない」ということになります.(実際には,調達コストや事務費や貸金業者の儲けが必要ですから,もっと低い倒産確率でもアウトになります.)これがいいのか悪いのか,本当に国は検証したのでしょうか.

 確かに高利の資金を使うことで,更にその会社の倒産確率が増すという現実がありますから,高利貸し付けの制限は必要かも知れません.しかし,倒産確率20%というと,100社のうち,80社は1年後も生き残れる状態を指すのです.例え高利であっても,この苦境を乗りきれば,事業を継続できる業者も少なからずあるはずです.利息制限によって,これらの業者も融資が受けられなくなって倒産してしまう,という事実を国はちゃんと認識しているのでしょうか.認識した上で,「それよりも,本来倒産するべき会社の無理な延命による二次被害を防ぐ方が大事」という比較考量をしたのなら,私も何もいいません.十分納得できる理由だからです.でも,そんな検討をした様子のないのですが...


本質は連帯保証人制度

 さて,いままで利息制限の妥当性に疑問を呈してきましたが,別に今回の事件の商工ローン側をかばっている訳ではありません.「高い金利が今回の証拠ローン保証人違法取立事件の本質でない」と思うからです.

 今回の事件で,利息制限とともに,借り入れ極度額を定めた根保証について,実際の保証額が増える度に保証人への通知が必要になりました.これで,保証人のだまし討ちは,少しは緩和するでしょうが,何等本質的な解決にはなっていません.本質的な解決のためには, 「連帯保証人制度の廃止」まで踏み込む必要があると思います.

 倒産確率の高い業者が高利の資金を借りて,倒産するのは,いわば自業自得であり,特段 に同情するものではありません.しかし,1円もお金を借りていない連帯保証人が,そのお金を返済しなけれなならない,という事態はとても容認できるものではなく,これこそがこの問題の本質なのです.

 連帯保証人制度は,聞くところによると,日本独特の制度らしいですが,まったくひどい制度です.確かに,この制度によって,事業者は,自らの信用度の低さを保証人に肩代わりによって,安い金利で融資を受けることができ,メリットがいっぱいですが,保証人には,全く何のメリットもなく,不利益だけを被る可能性あります.経済原則から行って,こんな不平等な制度は,存続する意味もないですし,廃止することによって,助かる人の数は,商工ローンの被害者の比ではないでしょう.

 確かに,連帯保証人をなくすと,事業者はいままでより高い金利でないと融資を受けられなくなります.しかし,事業者のリスクに見合った金利で資金を調達するというのは,経済原則通りであり,望まし事なのです.

 なぜかと言うと,同じ事業を始めたとしても,資産家の保証人を付けた人と,保証人をつけなかった人とで,調達金利が異なるということは,「資産家及びその知人」だけが得をするという構図であり,機会平等の原則に反するからです.資産家の知人を保証人にした人がその既得権を奪われたとしても,公平な経済競争を促す上では,望ましい事です.事業者も本来の事業の信用度を高めて,調達金利を下げていくしかなく,「本業で勝負」という平等な競争が実現するからです.

 もちろん,資産家の知人がいる人が,その資産家に手を貸してもらって,事業をすることを批判する訳ではありません.この際には,資産家から直接お金を借りるか,資産家に出資してもらうことによって,資産家にもメリット(利息収入またはキャピタルゲイン)が生じる可能性がある方法でなければなりません.また,保証制度も,資金を必要としている人と何等関わりのない,「プロの保証人」に保証料を払って保証してもらうなら,これも立派な商行為ですから,禁止する必要はありません.

 要は,「人間関係をお金に変えるような前近代的な連帯保証人制度を,リスクとリターンが見合った,近代的な制度に変えていく」ことが,今回の事件を教訓にして,政府が取り組むべき問題だったのではないか,と私は思います.


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