金融ビッグバン・やる気があるの?By HIT(1997.9.30)


 CONANさん、こんにちは。えっと、ビッグバンが正解です。ビッグバーンだと、 ジャスコ系のディスカウント・ショップの名前ですね。

 さて、金融ビッグバンですが、語源の「ビッグバン」は、天文学用語から来て います。宇宙論の一派(現在は主流派)にビッグバン理論というのがあります。 「宇宙は、巨大な爆発(ビッグバン)によって、100億年前に誕生し、今もその名残 りで膨張しつづけている」というものです。つまり、それ以前は、この宇宙は存 在しなかったという理論です。(ちなみに私はビッグバン宇宙論には、少々懐疑的 ですが。)

 この「宇宙創世の巨大爆発」になぞらえた金融改革は、イギリスでサッチャー 政権の時に行われました。かつて、イギリスの金融市場、とくにロンドン市場は、 「シティ」と呼ばれる狭い範囲に、世界的金融機関が軒を連ね、国際相場に大き な影響を与えていましたが、イギリスの国力の低下に伴い、その金融市場での地 位も低下していましたが、それを一気の規制緩和で、再び世界市場への影響力を 増そうとしたのです。

 巨大国際資本市場は、商品の流通などが必要ない点から、地理的なしがらみが なく、どこで行おうと差は生じません。となると、「規制の少ない市場」に資金 が集まるのは、自明の理屈です。

 イギリスの金融制度改革、ビッグバンは、一応の成功を収め、ロンドン市場は、 国際的な地位の引き上げに成功しました。

 しかし、そういいことばかりではなく、急激な金融規制緩和により、イギリス 国内の金融機関は、相次いで外国資本に買収され、「プレーヤーは外国人ばかり」 という状態になってしまいました。でも、国が守るべきは、「高度な金融サービ スの提供」というものであり、国内資本金融機関の保護ではないはずで、イギリ ス国内でも、現在の状態は、外国金融機関による雇用も増えた事などもあり、お おむね好意的です。

 さて、日本の金融ビッグバンでも、同じように大幅な規制緩和を行い、国際金 融市場での立場のアップと「金融サービスの低価格化による産業の活性化」など を目指しています。

 では、日本の金融ビッグバンは具体的には、どうするのか、というと、以下の ようになります。

(1)政府の規制を極力廃止する。
(2)会計基準等を国際基準にそろえる。
(3)個別金融機関の破たんに対して、政府は責任を持たない。

 まあ、非常に常識的なものですが、あれだけ権限死守に力を入れている中央官 庁の雄である大蔵省が、規制緩和という自らの権限縮小に踏みきる、というのは、 私には、きわかに信じられませんでしたが、住専問題で攻められた大蔵省が、 (3)の理由で責任逃れのために踏みきったような気がしています。

 2000年までの間に、いくつもの規制緩和が行われますが、大きなものを上げる と、以下のようなものがあります。

(1)不良債権処理の自己査定方式の導入
(2)株式売買手数料の自由化
(3)外国為替の自由化
(4)銀行、証券、保険の相互乗り入れ

 今一番間近に迫っている大きな問題は、(1)です。いくつかの金融機関が破た んしまいしたが、現在では、金融機関の決算は、事実上、大蔵省の承認が必要で す。これが何を招いたか、というと、不良債権を大蔵省と結託して隠蔽し、表面 上はとりつくろうといった、「粉飾決算」が横行して来ました。結果的にそれは、 傷口を広げてしまい、ぼろぼろになっての破たんが相次ぎました。

 それが大蔵省の承認ではなく、自己査定になる、というのは、一見決算が甘く なりそうですが、実は、思い自己責任を負うわけで、いままで以上に、実態にそ った決算が行われることになります。今年度の9月中間決算から導入されますか ら、決算が出そろう11月には、ぼろぼろと破たんが明らかになる金融機関が出て きそうです。

 次に迫っている大きな問題は、来年4月に迫った、外国為替の自由化です。こ れは、実に大きな問題を含んでいまして、日本の金融市場の空洞化を招く恐れも 考えられます。

 というのが、外国為替が原則自由化されるということは、外国での資金運用が 解禁されるという事だからです。外国での資金運用というと、為替リスク等が心 配でしょうが、オプションや各種手法を駆使することによって、リスクは極力減 らす事ができます。さらに、外国市場でも「円」での金融商品も多数あり、そう した商品への投資には、元から為替リスクは存在しません。そうなれば、すべて パフォーマンスの違いで投資が決まりますから、運用力に勝る外国金融機関が、 1200兆円といわれる日本の個人貯蓄に攻勢をかければ、貧弱な日本の金融機関な どひとたまりもなくなってしまう可能性があるのです。

 そうなっても、ある意味では自業自得ですから、あまり同情の余地はありませ んが、ただ一点、こうした外国への門戸開放は、本来、国内の自由化が完成して から行うのが順序であり、そのあたりが順序が前後しているのが気になります。 つまり、国内では、規制で手足をしばられている日本の金融機関が、規制なく自 由に活動している外国金融機関との競争にさらされるのは、ある意味で、「フェ アじゃない」ということです。

 これは、何も、外国為替の自由化を遅らせろ、という意味ではなく、逆に「す べての金融自由化を来年春までに完了しろ」という意味です。段階的な規制緩和 というのは、激変緩和措置として妥当そうですが、実はこうした「各種制度の整 合性の不都合」が生じるため、一気に行う方が混乱が少ない場合もあります。一 気に行うからこそ、「ビッグバン(大爆発)」なのであって、段階的に行ってい たら「ビッグバーン(大燃焼)」で、みんな燃え尽きてしまうかも知れません。


 ともかく、金融ビッグバンは、やってきます。利用者としては、選択の幅が増 える分、メリットがいっぱいですが、反面、政府の保証がなくなり、自己責任が 求められます。徹底した情報公開の要求のもとに、利用者自身も勉強を怠らない ようにしないといけませんね。

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