金融恐慌前夜...By HIT(1997.11.26)


 CONANさん、こんにちは。

 昨今の金融機関破綻のペースは、「金融恐慌」そのものですね。今朝も、コ陽 シティ銀行が破綻していましたし。

>山一証券の失業者と北海道拓殖銀行との失業者を合わせる
>と1万人近くの人数に及ぶのでは...(自信がありませんが...^_^;;)
 いや、1万人は優に越えるでしょう。

 40年不況時の日銀特融と比べるのは、適切ではありません。あの時は、証券分野 だけの不況でしたが、今回は、銀行・証券・保険という日本の金融システム全体の 危機なのですから。比べるとしたら、昭和初めの「金融恐慌」と比べるべきでしょ う。あの時も、日銀特融は、大判振る舞いされましたし。

 それより何より、事態の推移があまりにも似通っています。「第1次世界大戦に よるバブル景気」、「バブル崩壊による不況」、「関東大震災」、「金融恐慌」、 と、並び順も時期もピタリと一致します。

 あの時も、政府は、大きな間違いを犯しています。バブル崩壊による不況で痛ん だ金融機関を整理せずに、延命させたため、金融恐慌時の不良債権は、数倍に膨れ あがってしまいました。今回も全く同じ間違いを犯しています。

>ことなどいろいろありますね。特にこの度の重要なこととして「飛ばし」という取引が
>あったということです。この「飛ばし」については何度も耳にするのですが、理解しに
>くいですね。(^_^;;)%m
 飛ばしですか。簡単な例で説明しましょう。

 A証券がB社に売った商品が値下がりしたとしましょう。(100円→80円。20円の 損)決算月が迫ると、損を計上しないといけないので、B社はあせります。そこで、 A証券は、この商品を決算月の違うC社に100円で引取らせ、B社の決算後に、再度 104円でB社が買い戻します。表にすると、以下の通りです。

 買値売値(時価)帳簿上の儲け含み損益
B社 100円 102円 80円 2円 -20円
(B社決算)
C社102円104円80円2円-22円
(C社決算)
B社 104円 106円 80円 2円 -24円
(B社決算)
C社 106円 108円 80円 2円 -26円
.....

 決算月がずれているため、決算時点では、「B社にもC社にもこの不良債権は存 在しない」ことになりますから、帳簿上はどちらもきれいになるのです。

 決算の前後で特定の債権をジャンプさせるため、これらの行為は「飛ばし」と 呼ばれています。今回問題になったのは、証券の飛ばしですが、不動産や他の不 良債権の飛ばしも数多く指摘されています。

 永久に飛ばし続けられる訳ではなく、いつかは清算しないといけないですけど ね。山一の場合には、飛ばし続けられなくなって、証券会社に戻ってきてしまっ た、というものですね。


> 一般投資家の保護についてですが、本当に保護が必要なのかと自分は思いますね。
>そろそろ危ないということが分かっていながらも「国が助けてくれる」という考え方
>でいるからまずかったのかも。
 はい。CONANさんの指摘は正しいです。「どうせ国が助けてくれる」という甘え は「モラルハザード」といい、放漫経営をよび、国民の損失を増大させます。

 銀行預金について、大蔵省が「2001年までペイオフせず、預金者は、利息も含 めて全額保護する」などど言ってしまったために、預金者にも、経営者にも、モ ラル・ハザードが起きています。企業が倒産した場合に、企業自体に資産がない 場合に、最後に負担するのは、「債権者」です。銀行の場合、預金者が債権者と なります(銀行に預けているのではなく、貸しているのです。)が、預金者を全額 保護すれば、あとは税金の投入しかありません。

 私自身、公的資金の投入は必要だと思いますが、その前提として、「ペイオフ」 の実施が最低限必要です。現在も法律上は、預金は1000万円までしか保護されず、 それ以上は、ペイオフされることになっているのですが、大蔵省が場当たり的な 例外規定を乱発して、ペイオフを回避しているのです。ペイオフ回避で守ってい るのは、一体誰なんでしょうか。銀行預金の9割は、大口利用者なんですから。


 ところで、証券会社の場合には、銀行と違って、利用者は債権者ではありませ ん。証券会社は不動産業のような「売買仲介」業務しか行っていませんから。株 券や投資信託受益証券は、単に証券会社に「預けている」だけであって、証券会 社が横領をしていないかぎり、ちゃんと返ってきます。制度上も、証券会社とは 別の信託会社に管理を委託しているほど、分別管理は徹底しています。

 ただ、現金を預けている場合には、銀行預金と同様に、一般債権者と同様の 「債務」となります。現金を預けている場合というのは、信用取引の証拠金を除 けば、「株を売ったけど、現金を受け取るのは、3日後。その間に証券会社が破 綻してしまった」という、本当に、アンラッキーな場合に限られます。こうした 場合にも利用者に負担をかけるというのは、非常に酷のような気がします。


 現在、金融機関の破綻処理策が、完ぺきに規定されているのは、信用組合だけ です。それ以外の金融機関、すなわち、信用金庫、第二地銀、地方銀行、都市銀 行、信託銀行、長期信用銀行、農協、証券会社、生命保険会社、損害保険会社等 の破綻には、明確なルールがありません。毎回大蔵省が適当な行政指導で、場当 たり的に処理しているだけです。金融自由化のプログラムが動き出して10年。ビ ッグバン宣言からも1年以上たっているのに、破綻のルールさえ作れない大蔵省 は、完全に当事者能力を失っています。

 今すぐに行うべきことは、明確な、金融機関の破綻ルールの制定です。

>日銀特有等は致し方がありませんが、国民の税金を使っての
>事後処理はとんでもないことです。投資家もいっしょに犠牲になったほうがよかった
>なあと思いますね。(^^;;
 実は、税金を使っての処理よりも、日銀特融の方が恐いです。税金を使って処 理する分には、法律も出来て、ルールも明確になりますから、国民監視の上で処 理が進みますが、日銀特融だと、明確なルールがないため、政治や官僚の思惑で、 国民の分からないところで、資金が使われる可能性があります。

 日銀特融がこげつくと、最終的には、やはり税金で補てんすることになります が、不透明なお金の使われ方に税金をつぎ込むことになり、そちらの方が、よほ ど問題が大きいと思います。

 どちらにしても、利用者のペイオフなしには、財政資金の投入は、実現しない でしょうし、してはいけないと思います。

>きっと上役連中はどこかの
>証券会社に入れてもらうことになるまのでしょう。あまりこれも歓迎できない話ですね
 いや、きっと上役連中は役に立たないので、どこかに再雇用されることはない でしょう。それよりも、若くて、働きの良い者の方が、外資系を中心に、再就職 の話があると思います。しかし、もともと、証券業界って、すでに大幅な人員過 剰(バブルの頃、職員を増やし過ぎた)ですから、再就職は容易ではないでしょう。 それこそ、官業の郵便貯金の外務員にでも採用しますか?(戦後、満州の引き上げ 者を国鉄に押しつけたため、国鉄共済が破たんしたのは有名ですね。)

>何にしても今回の事件は大変なことになりました。連日ニュースをみているとバカらし
>くなったくるのですが、しばらくはこのニュースが中心になると思います。
 いえいえ、まだまだ破たんが続きますから、山一証券の話はすぐ忘れられるで しょう。まだ、大手銀行でも、数行破たん候補がありますし、証券業者なんか、 残る会社を数えた方が早いくらいです。収益力の弱い一部の第二地銀、不良債権 の多い、大都市圏の銀行等、まだまだ破たんするでしょう。

> この山陰でも危ない銀行があると聞いたのですが、どこなんだろう。(^^;;
 予想はつきますが、ここで名前を上げるのは遠慮しておきましょう。但し、山 陰の銀行は、どこも不良債権が少ない(バブルが山陰にはなかったから)ですから、 債務超過で倒産というのは考えにくいですね。儲からずに、先行き不安から、廃 業、営業譲渡、という筋書きならありそうですが。この場合なら、ペイオフもな いでしょうし、営業停止もないでしょうから、混乱は起こらないと思います。


 しかし、振り返って考えると、「ふそう銀行」はいい時期に、山陰合同銀行に 身売りしましたね。今、あの銀行が残っていたら、真っ先に「危ない銀行」リス トに入ったでしょうから。ごうきんの潤沢な自己資本と含み益で、不良債権が処 理できて、ラッキーでした。

 ちなみに、ごうぎんの名誉のために言っておきますと、ごうきんは、株の含み 益は、全銀行中でもトップクラス(日経平均が1万円程度に下がっても、利益が出 る)、不良債権処理も進んでいるなど、『月刊金融ビジネス』(東洋経済新報社) の97年9月中間決算の銀行ランキングでも、並み居る都銀等を差し置いて、ベス ト10入りしている優良銀行です。


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