金融恐慌補足...By HIT(1997.11.27)


 前項で、「公的資金投入には、ペイオフが前提」と書きましたが、もちろん、 他にもいくつかの前提があります。

1.ペイオフ
2.情報開示
3.セイフティネット(破たん救済策)

 1.は述べましたから省きます。

 2.の情報開示ですが、これは、1.の「ペイオフ」の前提条件です。というは、 情報開示なしにペイオフするのは、やみ討ちに等しい行為だからです。

 3.のセイフティネットは、2.の情報開示の前提条件です。というのは、正確な 情報開示を行えば、経営状態の悪い金融機関は、即座に行き詰まり、破たんしま す。しかし、その時に破たん救済策が定まっていないと、その最終的な負担を巡 って、大混乱が起こります。そして、健全な金融機関や庶民を巻き込んだ、本当 の金融システム破たんが起こってしまいます。

 ですから、今すぐにでもしなければならないのは、信用組合以外には定めのな い、「金融機関の破たん処理策」の策定なのです。

 金融自由化以来10年かけて、破たん処理策さえ作れなかった大蔵省は何をして いたのでしょうか。実は、チャンスは何度もあったのですが、すべては「住専」 処理策を誤ったのがボタンのかけ違いでした。「住専」の破たん処理で、公的資 金を『金融機関の救済』に投入してしまったことでした。(救済されたのが、農 協なのか、一般銀行なのかはこの際置いておいて)

 金融機関が一行もつぶれないのに、税金を投入した、ということで、国民の猛 反発を生み、その後の「破たん金融機関処理への公的資金の投入」を自ら閉ざし てしまいました。あの時、金融機関を破たんさせて、その処理(預金者保護)に税 金を投入して、ちゃんとしたルール作りをしていたら、今の事態には至らず、個 別の金融機関の破たんはあったとしても、金融システムが揺らぐことはなかった はずです。「住専」処理で、助かったはずの、北海道拓殖銀行が結局は破たんし てしまった事などから、あの住専処理に使った税金は、結局は役に立たなかった のです。

 もともと、住専の処理策は、大蔵省の官僚保護のため、とも言われています。 すでに死に体の住専を、親銀行が処理しようとした時に、大蔵省がマッタをかけ たのは有名な話ですし、農林系との密約文書など、住専を法的処理すれば、大蔵 官僚のミスが公になったから、という話です。大蔵官僚の保護のために真に日本 の金融システムを守るための仕組みが阻害されるなど、言語道断の行為です。

 話を元に戻しましょう。一般に、こうした事態への公的資金投入は、だらだら と長時間かけて行うものではありません。情報を徹底開示して「あとこれだけ税 金をつぎ込めば、今後一切不安はない」という状態になって初めて、一気に投入 して、元を断つのが効果的なのです。火事の消化と同じです。現在の状態は、至 るところで火事が起こっているのに、個別の消化だけ考えていて、どんどん火が 燃え広がっている状態です。


 正確な情報開示がないため、利用者は疑心暗鬼になっており、ちょっとしたウ ワサやデマで、とんでもない状態になりそうです。これで健全な銀行まで倒れる ようでは、信用創造の減少から、クレジットクランチ(借りたい人が借りれない) に至り、日本経済もめちゃくちゃになります。

 ちなみに、銀行というのは、日本一健全な静岡銀行でも自己資本は13%程度(ご うぎんで10%程度)で、残り90%近くは預金等、つまり他人のお金を運用していま す。つまり、銀行の信用力で、自己資金の10倍の事業を行っている訳ですから、 預金額が極端に減れば、経営に致命的なダメージを与えます。貸出を引き上げる などの措置が必要になるからです。

 現在の不安状態であれば、ひとつのデマで健全な銀行の10%程度の預金を解約 させることは、簡単にできます。国民の冷静な対応が必要です。これらの事態を 防ぐためには、以下のような荒療治が必要かもしれません。

1.モラトリアムの実施(全銀行一斉休業)
2.モラトリアム中に、破たん処理策を大急ぎで策定する。
3.モラトリアム中に、全銀行の正確な経営状況を精査して公表する。
4.モラトリアム後に、破たんする金融機関は、処理策に基づき処理する。

 ともかく、もう劣悪な金融機関を存続させるような余力は日本経済にありま せん。そうした金融機関は、破たんさせ、他の金融機関(預金保険等)、公的資 金、預金者(ペイオフ)の三者で負担を分かつしかないのです。

 昭和の金融恐慌が、最終的に解消したのは、第二次世界大戦後でした。事態 を遅らせ、恐慌の規模を大きくしないうちに、的確な措置を取ることが必要で はないでしょうか。


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