金融対策は景気対策にならない.By HIT(1997.12.15)


 ようやく、拓銀や山一の破たんで、金融システムが死に瀕していることが 認識され、政府自民党内でも、金融機関への公的資金投入が検討されている 昨今ですが、どこか、根本的な部分で勘違いしているような気がしてなりま せん。

 現在検討している方法(破たん処理に公的資金を投入するのではなく、金融 機関に資金を投入して、金融機関の温存を図る)では、多くの人が指摘するよ うに「淘汰されるべき金融機関が温存される」という批判はその通りでしょ う。私から指摘するまでもない事実です。

 しかし、もっと根本的なところ、つまり、「金融機関を温存したとしても、 景気が良くなる訳ではない」という点を誰も指摘しないのは、不思議です。 経済音痴の橋本首相は、「金融対策こそ一番の景気対策だ」などとトンチン カンな事を言っていますが、公的資金を何十兆円投入して、ボロボロの金融 機関を維持したとしても、(帳簿上の債務は片づき、金融機関の決算はきれ いになりますが)実態は、現状と何等変わりないのですから、景気が良くな る訳がありません。

 第一、昨今の金融機関の早期是正による貸し渋りによる金融逼迫までの間 は、バブル崩壊後でも、資金はふんだんにあるのに、借りて事業をする人が いなかった、という状態での不況だったのです。金融が原因ではありません。

 では、バブル崩壊後の不況は、何が原因であったか、といいますと、(も ちろん、一つだけが原因ではないのですが、)『不動産市場が機能まひした』 からだと言えます。バブル崩壊で土地価格が下落したけれど、誰も帳簿上 の損をしたくないので、実勢価格で売ることをせずに、大量の土地が『塩 漬け』になってしまった事が結構大きな問題なのです。

 金融機関の不良債権(そのほとんどは不動産融資)が遅々として処理が進 まないのも、土地が流通していないからです。金融機関は、「不良債権処 理」と称して、土地の不良債権を帳簿上、株式に付け替しかしませんでした。 そのため、今回のちょっとした株安で金融不安を招いていまったのです。

 ですから、今回のように、金融機関の延命のために、数十兆円の公的資 金を投入したとしても、相変わらず、土地が塩漬けのままだとすると、景 気回復はおぼつかないでしょう。

 同じ公的資金を投入するのならば、不動産業界が主張しているように 「公的資金で土地を買上げる」ほうがまだ経済的にはマシです。もちろん、 この方法も最適ではありませんが。

 それよりも、土地流動化のために、各種制度改革を行う方が、よほど少 ない資金で、土地の流動化を促し、経済原則に沿った資源(土地)の再配分 が実行され、経済の活性化に結び付くはずです。例えば、以下のようなも のです。

(1)裁判所職員数を(時限的に)大幅増員し、競売の迅速化を図る。
(2)警察、検察組織を(時限的に)強化し、不動産にからむ不正事件を片端 から立件し、不動産市場の透明化を図る。
(3)土地保有課税(固定資産税、特別土地保有税、地価税)を強化し、代わ りに土地譲渡益課税を軽減する。
(4)土地の売却による損失について、例外的に複数年度での償却を認める。

 実際問題として、金融システム維持のために、公的資金の投入は必要でし ょう。しかし、金融機関を破たんさせずに、投入する事には、おおきな疑義 があります。金融機関の破たん時は、担保土地の放出の最大のチャンスだか らです。

 金融機関存続を前提とした公的資金投入は、こうしたチャンスをつぶすだ けです。金詰まり、土地詰まりを解消するためには、どうしても、不良金融 機関、不良会社の淘汰が必要です。せっかくの税金です。良く考えて、効果 的に投入したいものです。


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