HITの夢の税金-固定資産税の土地評価は収益還元価格で

By HIT(1999.10.21)
 バブルのさなか、1物4価で分かりにくい、という事で、相続税評価額も、固定資産税評価額も、「売買実例価格に基づく実勢価格」に基準が統合されました。しかし、相続税、固定資産税は、(特殊要因が多い)売買実例価格で課税するべきではないと思います。

 固定資産税は、毎年の土地の使用収益に着目した税金です。つまり、売買価値ではなく、利用価値に着目した税金です。そして、毎年課税される税金です。こういう税金の課税対象として、売買実例を持ち込むのは、実は間違っています。

 一般に、土地に限らず、市場価格は、需要と供給によって決まります。供給が多ければ、価格は下がりますし、需要が少なければ、価格が上がります。一般に、日本の場合、土地はなかなか売買されません。取得税制が厳しい、とか、土地信仰が強い等の理由はあると思いますが、個人や企業が土地を売るのは、倒産や相続の時に限る、とまで言われる位です。つまり、常に供給が少ない状態で売買が行われていますので、どうしても、その価格は、土地のもたらす収益から比して高いものになっています。

 土地の利用価値に対して毎年課税する固定資産税の課税価格を売買価格に課税する、というのならば、「日本全国の土地を毎年1回すべて売りに出して、買い戻す価格」でなければおかしいです。これだけ供給が大きければ、売買価格は、収益還元価格に落ち着くはずです。

 同様に、相続税は、1世代(約30年)に1度課税されるものです。ですから、「毎年、日本全国の30分の1の土地を売りに出して、買い戻す価格」が正しい評価額だと思います。多分、収益還元価格と、実勢価格の中間の値付けになると思います。

 こう見てくると、「公示価格100に対して、相続税評価額70、固定資産税評価額30」という、バブル以前の評価水準は、結構いい線いっていた、と思うのです。バブルでなにもかもが狂ってしまったのが残念ですが。

 ちなみに、収益還元価格を課税標準とした土地所有課税というと、戦前の地租(国税)が、そうでした。税務署が評定した想定地代が課税標準でした。戦後、市町村税として生まれ変わった固定資産税も、「売買実例価格」が課税標準といいながら、実態としては、戦前の収益還元の影を引きずった評価が行われていました。借地借家法のよる上限地代、上限家賃が、固定資産税の評価額を基にしていたのからも、それが分かります。

 実は、国(自治省)による、強力な「売買実例価格課税」が推し進められたのは、何も、今回のバブルが初めてではなく、昭和30年代後半にも行われました。当時は高度成長時代で、土地価格が飛躍的に増加しているにもかかわらず、市町村の怠慢で、固定資産税の評価が追いつかない状態が続いたのが、一番の理由です。事実、シャウプ勧告の基づく地方税制が安定した昭和20年代後半には、市町村の税収の半分以上は、固定資産税でしたが、この頃には、市民税に首位の座を譲り、年々その比率を落としていたのです。

 また、自治省が、売買実例価格課税を推し進めたのは、その他にも理由があります。

(1)市町村職員に、難しい収益還元価格を算出する実力がない
(2)(実態のない)収益還元価格による課税の場合には、地元住民に遠慮して、思惟的な評価が行われやすく、適正な評価が行われない(つい安く評価してしまう)

 逆にいうと、これらの問題さえクリアできれば、固定資産税を収益還元価格で行っても何等問題ない、ということです。全国的な地代情報の収集組織や、収益還元価格を鑑定する団体を整備するなどいくらでも方法はあると思います。

 現在の固定資産税土地の課税方法は、いろいろいじられすぎて、誰にも理解できなくなって来ています。「納税者が理解しがたい複雑すぎる税制は、憲法違反だ」という学者もいるくらいです。もう土地税制は、根本的に直す必要があると思います。

 ただし、バブル崩壊後、都会の商業地を中心に、土地の実勢価格が、収益還元価格に収れんしつつありますので、もし、この傾向が住宅地等にも波及し、全国的に広まっていくのであれば、今のままの「売買実例価格を課税標準とする」固定資産税でも、問題なくなるかも知れません。

 ちなみに、同じ固定資産税といっても、家屋については、「売買価格」ではなく、再建築価格を元にした減価方式(損害保険の家屋評価方式とほぼ同じ)で、実質的に、収益還元的な評価が行われています。


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