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税の常識非常識

最終更新[2000.2.14]


 いつかきっと役立つ(?)税金の基礎知識集!

住民税は全国ほぼ一律 by HIT [2000.2.14]

 住民税(道府県民税,市町村民税)は,地方自治体の税収の中で最大のものであり,地方自治体の基幹税です.この住民税に対して,「住民税は,市町村によってかなり違う」という神話が,世間にはびこっているようです.『A市は,大工場があるから,住民税が安い』とか,『B町は原子力発電所があるから住民税が安い』等のうわさが流布されていますが,これらは,ほとんど全部,ウソです.個人住民税は,全国ほぼ一律なのです.

 住民税は,いうまでもなく地方税です.地方税は,地方自治体が法律で定められた範囲内で,自主的に税率を変動できます.一応法律で定められた税率を「標準税率」といい,自治体が独自に上乗せした(標準税率を下回る税率設定はほぼ皆無!)税率を「超過税率」といいます.

 これらのうわさのいわんとしている事は,「標準税率を採用していない自治体が沢山ある」ということなのですが,これが全くの大ウソ.全国ほとんどの自治体が,こと住民税等個人に賦課する税金については,「標準税率」で課税しているのです.

 ところで,個人住民税は,「均等割」と「所得割」の二本立てになっています.「均等割」は,所得のある人すべてが夫婦単位で払う一定額の部分.「所得割」は,前年度所得に比例(正確には超過累進課税)して払う比例部分.これらを合わせたものが個人の住民税となります.

 このうち,均等割は,道府県民税の場合には,完全一律ですが,市町村の場合人口規模によって3段階(5万人未満,5万人以上50万人未満,50万人以上)に金額が決められています.ですから,実際問題として,「市町村によって住民税違う」というのは確かです.しかし,一段階違っても,その差は,年間500円(サラリーマンのように12回払いする人だと,月50円以下!)です.目くじら立てるほどの違いはありません.世間のうわさが,この少額の違いを言っている訳ではないはずです.

 では,実際に,全国の自治体のどの位の割合が超過課税をして,全国一律からはずれているのでしょうか.下の資料を見て下さい.ちょっと古いですが,大勢には,影響ありません.

H6年度地方税徴収実績

個人道府県民税均等割0団体(全数47)
個人道府県民税所得割0団体(全数47)
個人市町村民税均等割89団体(全数3,234)
個人市町村民税所得割0団体(全数3,234)
(参考)
法人道府県民税均等割0団体(全数47)
法人道府県民税税割45団体(全数47)
法人市町村民税均等割607団体(全数3,234)
法人市町村民税税割1,467団体(全数3,234)
参考:『地方財政白書(平成8年版)』自治省編 大蔵省印刷局発行

 この資料を見て分かるように,個人住民税については、89の市町村(3%弱)が、超過課税 をしているに過ぎず,97%の市町村は,標準税率の課税しか行っていません.しかもそれらは,額の少ない均等割についてのみであり,額の大きな所得割については,全自治体例外なく標準税率であり,全国一律です.

 代わりに、法人住民税については、95%の道府県と、45%の市町村が超過課税をしています。市町村については、超過課税の割合が低そうですが、実は、人口の多い市町村ほど、超過課税をしていますので、対象となっている事業所の割合は、もっと高いはずです。

 なぜ,個人住民税は,全国一律なのに,法人住民税は,超過課税している自治体が多いのか,といいますと,『個人には選挙権があるが、法人には選挙権がないため、つい個人に軽く、法人に重い課税になる』というのが,一番もっともな理由です.自治体のトップは,選挙で選ばれる政治家.選挙権のある個人には,増税(超過税率の採用)はしにくいが,法人なら...ということなんでしょう.

 また,超過課税をしなくても,なんとかやっていける,というのも大きな理由です.地方税収少なくても,税収が少ない自治体には,財政均衡措置である「地方交付税交付金」が税収の多い自治体より多く国から交付されるため,無理に税率アップをして,市民の反感を買わなくても,それなりの行政サービスはできるからです.

 そんなこんなで,地方自治体の税制というのは,こと個人課税に関しては,全国一律です.昨今の地方分権の流れが出てきたとしても,この状況に大きな変化はないでしょう.

 本当は,自治体によって,税率は大きく異なるという「根も葉もないうわさ」の方が,「健全な地方の自主権確保」なんですけどね.


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