よみの国研究所 > 理想の交通 > 伯備線大研究 >  

伯備線の高速化を探る沿線レポート/伯備線編

By HIT(1997.3.13)

伯備線の高速化を探る(1)

 軌間可変列車による新大阪直通運転の可能性を秘める伯備線ですが、それと同時に高速化も図る必要があります。

 現在の伯備線の最高速度は、以下の通りです。
岡山-備中高梁 120km/h
備中高梁-江尾 110km/h
江尾-米子   120km/h
(米子-出雲市) 110km/h

 これを、在来線最高速度の130km/hにアップさせるのは、それほど難しい事ではありませんし、お金もそれほどかかりません。また、軌間可変列車がやくもに搭載されている自然振り子より進化した制御付き自然振り子(スーパーはくとが採用しているやつですね)を採用していれば、曲線通過速度がさらに+10km/h程度アップします。両方の効果で、岡山-米子間1時間45分程度は固いはずです。

 しかし、伯備線の高速化を図る上で、大きなネックになっているのが、単線のため起こる列車擦れ違い(交換)による時間ロスです。これは、軌間変更列車等の新型車両を入れただけでは、解消しません。岡山-米子間で、最速列車と最遅列車の時間差が20分以上もありますが、これのほとんどが交換ロスなのです。

 根本的に解消するには、全線複線化しかありませんが、伯備線の列車本
数(特急1時間1本、普通1.5時間1本)では、完全にオーバースペックです。良くて部分複線程度でしょう。

 伯備線は、現在、岡山-備中高梁、井倉-石蟹、新見-布原(の一部)、伯耆大山-米子間が複線になっています。問題は、まったく複線区間のない、新見-伯耆大山間で「やくも」が2回交換しなければならないという事です。

 この区間を、なんとかしないと、「やくも」の時間短縮は望めません。

 また、伯備線は、大正時代に作られた古い線のため、曲線が多い上に急角度で(「線形が悪い」という。)、高速走行のネックになっています。線形の改良も同時に出来ると、効果ばつぐんでしょう。

 また、駅で、特急がスピードダウンしないためには、通過列車が直線で走りに抜けられるように、駅のポイントや線路がなっていることが必要です。理想は、直線になっている事(1線スルーという)ですが、そうでなくても、分岐角度を浅くして、通過速度を速める必要があります。これは、高速化以外にも、ポイント通過時の乗り心地向上にも効果があります。

 複線化や、線形改良(新線の引き直し)には、1km10億円という巨額の経費がかかりますから、おいそれとはできません。効果的に投資する必要があります。

 次項から個別の線区、駅ごとに、対策を考えていきましょう。


伯備線高速化(個別区間編)

 最近ドライブがてらに、沿線を観察した成果を披露し、伯備線高速化計画の対象線区を考えてみましょう。

(1)伯耆大山-岸本(6.1km)
 伯耆大山駅近くに土地がないのと、岸本駅から北にすこし行った集落(押口)の真ん中を突っ切っているところが、用地買収のネックでしょうか。それ以外は、農地ばかりですから、複線化に支障は少ないです。
 この区間は、主要地方道米子-金屋谷線との交点に「河岡駅」(仮称)を設けて、新興住宅地区と都心の輸送を取り込むと面白いでしょう。
 しかし、線形が良過ぎるため、例え複線化しても、交換ロス以外の時間短縮は望めません。

(2)岸本駅
 岸本駅は、すでに1線スルーになっているので、駅の改良は必要ありません。

(3)岸本-伯耆溝口(5.0km)
 農地が広がり、複線化用地は問題なし。ここも、線形が良過ぎるため、線形改良が望めず、交換ロス解消以外のスピードアップは望めない。

(4)伯耆溝口駅
 駅の前後がカーブなのと、1線スルーになっていないため、改良の余地があります。駅周辺に土地はあるので、改良は可能です。

(5)伯耆溝口-上溝口信号所(?km)
 特に複線化用地に困るところはない。上溝口信号所がカーブ上にあるので、ここから溝口寄りを直線化する(橋をかける必要あり)と、数十秒のスピードアップが望めそうです。

(6)上溝口信号所-江尾(?km)
 用地的に江尾駅周辺がちょっと苦しそう。江尾駅近くでカーブしているため、曲がりを緩和すると、ちょっとは(10秒くらい?)時間短縮できるかな?

(7)江尾駅
 江尾駅は、一線スルーになっていないため、全列車が徐行して通過します。時間ロスがあり、乗り心地も悪化するので、解消したいところですが、いかんせん、市街地と国道181号線にはさまれて、土地がありません。

 2面3線のホームを2面2線に削るくらいしかないですが、そうすると列車の追い越しが出来なくなりますし、ホーム移設、跨線橋の付け替えなど、巨額の出費がかかります。だいたい、跨線橋なんて、年寄りには、負担ですから、いっそのこと取ってしまって、構内踏み切り化した方がいいでしょう。2面2線なら、国道181号側からも乗り降りできるようになりますし。(バスとの乗り継ぎが便利そう。)

 裏技として、江尾駅をバイパスする線を(山側or日野川左岸)作って、特急はそちらを通る、という手もあります。(ばく大な経費がかかりますから、多分無理ですけどね。)

(8)江尾-武庫(2.1km)
 江尾駅南が、民家がせまっており、買収がむずかしそうです。それ以外は特に支障はありません。

(9)武庫駅
 次に述べますが、根雨まで日野川左岸経由にした場合には、駅に移設が必要になります。(150m程度米子寄りへ)国道181号との立体交差の関係で、駅は高架になります。
 江尾駅が3線から2線に減った場合の交換機能低下を補うため、通過線付きの2面2線駅(新幹線のこだましか止まらない駅のような感じ)とする必要があるでしょう。

(10)武庫-根雨(4.7km)
 複線化に特に用地的には支障はなさそう。日野川右岸で、国道181号線と崖に挟まれた区間も多いが、山を崩すか、トンネルを掘れば、なんとかなりそう。
 しかも、武庫-根雨間は、日野川右岸をかなり遠回りしているので、日野川左岸を経由して、ショートカットすれば、500m距離が短くなり、それによる時間短縮も望めます。(1分程度?)

(11)根雨駅
 通過する特急がかなり減速している事から、多分、1線スルーになっていない模様。用地はあるので、1線スルー化するか、分岐器を角度の浅いものにして、通過速度を高める必要あり。

(12)根雨-黒坂(7.6km)
 日野川左岸をかなり遠回りしているので、複線化と同時に、トンネルで短絡化を行えば、1km弱距離を短縮できる。(2分程度の時間短縮?)

(13)黒坂駅
 すみません。良く見てません。

(14)黒坂-上菅(4.8km)
 用地に問題はなさそう。かなり小刻みにカーブが連続するので、ついでに線形改良すると、よさそう。

(15)上菅駅
 カーブ上の駅ですから、分岐器の角度を浅くするだけでも、通過速度向上が期待できます。

(16)上菅-生山(3.5km)
 用地に問題はなさそうですし、線形がかなり悪いので、線形改良を行うと時間短縮が期待できます。

(17)生山駅
 良く確認していませんが、1線スルーじゃなくても、用地はあるので、改良は可能でしょう。

(18)生山-下石見信号所(?km)
 複線化用地に問題はありません。
 線形はかなり悪いです。トンネル化など、根本的な線形改良を行えば、時間短縮も望めます。

(19)下石見信号所-上石見(?km)
 複線化用地は、全く問題はありません。
 小刻みに左右に振れるカーブが続くなど、線形がかなり悪い区間です。トンネルは掘れませんが、複線化時にうまく用地の左右を買収すれば、カーブを緩和でき、時間短縮と乗り心地の向上が望めます。

(20)足立-新見(12.6km)
 これは地図で確認しただけですが、伯備線は、布原、備中神代を経由することによって、相当遠回りをしています。ですから、備中神代をパスして、トンネルをまっすぐ掘って短絡化すると、3km程度短縮できます。時間短縮効果は抜群です。(5分は固い)
 ただし、備中神代をパスすると普通旅客に弊害があるかも知れないので、(岡山県内の旅客動向は、良く分からない)約3kmの短絡トンネルを単線で掘って、備中神代経由の線路も残し、普通列車は、そちらを経由しても良いと思います。


伯備線高速化計画(まとめ)

 以上書き出した高速化計画をすべて実行すると、相当な時間短縮と複線化による輸送力増強になりますが、総工費も数百億円となり、とても割に合いません。実際は、需要等から最適な線区を選んで実施する事になります。

 有望な線区を挙げてみましょう。

(1)駅構内配線の変更
 1線スルーになっていない、伯耆溝口、江尾、根雨等の改良は必ず必要です。江尾駅だけは用地がなくてむずかしそうですから、見送っても仕方ないかも知れません。

(2)複線化
 複線化すると、特急よりも、(特急を退避する機会の多い)普通列車の方が、スピードアップします。それを考えると、普通列車乗客の多い、米子に近い区間を複線化した方が良くなります。

 しかし、米子に近い区間は、伯備線でもまれな「線形がものすごくいい」区間ですから、擦れ違い以外の特急のスピードアップが望めません。なかなか難しいところです。

 あえて挙げれば、岸本-伯耆溝口(5.0km)でしょうか。ここを複線化すれば、米子-伯耆溝口間は擦れ違いなしで普通列車を運転できます。米子と日野方面の普通列車時間短縮には、絶好の位置です。

 続くのは、伯耆溝口-上溝口間、武庫-根雨間(4.7km)でしょうが、どちも、米子-伯耆溝口間での旅客に影響がない、という致命傷があります。バイパス化による時間短縮効果もある武庫-根雨間は、ぜひ行いたいところですが。

(3)線形改良区間
 線形が悪く、改良が必要な線区は、総じて普通列車の本数も少なく、複線化と同時に行うのは、オーバースペックです。特に1日7往復しか普通列車が運転されない生山-新見間を複線化なんてお金の無駄使いと言われても仕方ないでしょう。この区間で特急同志の擦れ違いが発生したら、信号所を新設する程度で十分でしょう。

 結局、単線のまま、線形改良するのが、一番妥当そうです。

 こうして見た場合、たった3.5kmのトンネルを掘るだけで、5分以上時間を短縮できる、足立-新見間のバイパス工事は、かなり効率が良いと言えます。備中神代経由を廃止できれば、経費削減にもなりますし。(新見-備中神代間は、芸備線に所管替えし、電化用の架線も廃止する。)

 次に、同じくトンネル方式のバイパスで時間短縮効果のある根雨-黒坂間も期待できます。

 あとの黒坂-新見間は、線形の悪いところだらけですから、どこから手をつけていいのか分からないくらいです。その中では、生山-下石見間が、トンネル化で線形改良が可能となりますから、有望な程度でしょうか。


伯備線(その他)

1. 高速化に伴う経費負担
 高速化に伴う経費負担ですが、利用者増によるJRの増収だけでは足りません。以下のような経費先が見込まれます。

(1)特急利用者
 軌間可変列車による新幹線直通運転が開始されれば、それによるメリットを享受する利用者に経費を負担してもらうのは、ある意味で当然です。先行する新在直通列車の走っている山形、秋田新幹線では、「直通料」として、220-450円を利用者から徴収しています。伯備線でも、450円程度の直通料は必至でしょう。

(2)行政
 新大阪直通、しかも時間短縮も伴うとなれば、地域に与える影響は、大きいです。誰も通らないような農道を作るより、よほど生きた税金の使い道となります。沿線自治体が経費負担をするのは、当然の流れでしょう。少ないながら、国の補助も望めます。

(3)普通列車の利用者が負担
 実は、高速化に伴い、複線化等を行えば、普通列車の利用者も多大な恩恵を被ります。手法としては、普通列車の利用状況は、完全に地方交通線並の伯備線を、幹線から地方交通線に格下げし、1割ほど高い地方交通線運賃を適用する、という手があります。特急「やくも」の運賃計算は、特例として、いままで通り幹線扱いとする必要がありますが、そう難しい事ではありません。

2. その他
(1)山陰線(米子-出雲市)高速化
 伯備線だけの高速化を見てきましたが、山陰線の高速化も実は必要です。山陰線のこの区間は、線形は良いのですが、いかんせん、列車本数が多過ぎて、擦れ違いロスが多過ぎます。そのためには、複線化が一番の方策です。

 現状では、米子-安来、東松江-松江、玉造温泉-来待の区間が複線ですが、これに加えて、荒島-揖屋、来待-宍道、荘原-出雲市程度の複線化は必要だと思います。中でも、荒島-揖屋間の複線化は、最重要課題でしょう。

 複線化により、列車本数に余裕が出て、増発が可能となれば、米子-出雲市間に新駅を沢山作って、普通旅客の増加を目指すことも出来ます。

(2)伯備線普通列車
 特急中心の伯備線ですが、複線化や線形改良でスピードアップすれば、普通列車利用者(大半が高校生)ももっと便利になるでしょうし、新規の旅客も呼び込めるかも知れません。

 伯備線は、電化区間ですから、電車が走っています。これがくせもので、3両編成が最低の電車ですから、伯備線の山陰側では、かなりオーバースペックです。1-2両を基本にした列車を頻繁に走らせる方が、利用者のニーズに合っています。

 1両単位で運転できる電車もあることはありますが、伯備線にしか使えないそんな列車を単独で持つのは効率が悪いです。(現在の山陰・伯備の普通電車はすべて岡山が集中管理している)

 ですから、気動車でもいいので、米子-生山(一部上石見)間を1-2両編成の
列車で頻繁に運転(最低1時間に1本)したい所です。

このページのトップへ


[ 伯備線大研究 | 理想の交通 | よみの国研究所 ]