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JR伯備線高速化委託調査/詳細編

最終更新:[2000.9.21]
 鳥取,島根,岡山の3県共同によるJR伯備線高速化調査報告書のほぼ全文が手に入りましたので,紹介します.

入手方法

入手資料

 鳥取,島根,岡山の三県が共同でJR西日本コンサルタンツ(株)に委託して実施した報告書(1999年3月提出)

非公開として入手できなかった部分

 伯備線の運転曲線(現行,改良後),伯備線の平均断面交通量

内容

注意

 このレポートは,報告書のデータを,HITが独自にまとめたものです.したがって,数字の転記ミス等も十分考えられますので,取扱いには注意してください.このレポートの使用により,損害が生じても,HITは一切補償しませんので,あらかじめご了承ください.



1.現状 by HIT [2000.7.25]

(1)伯備線高速化の主な整備経緯

S 3.10.25 伯備線全通
S43. 9. 3 伯備線・倉敷-総社間複線化
S43. 9.25 伯備線・総社-豪渓間複線化
S45. 2.21 山陰本線・玉造温泉-来待間複線化
S45. 9. 7 伯備線・豪渓-美袋間複線化
S47. 2.23 伯備線・美袋-備中広瀬間複線化
S48. 9.18 伯備線・備中広瀬-備中高梁間複線化
S54. 3.13 伯備線・新見-布原間複線化
S54.10.31 山陰本線・東松江-松江間複線化
S57. 6.15 伯備線・井倉-石蟹間複線化
S57. 6.24 山陰本線・米子-安来間複線化
S57. 7. 1 伯備線・山陰本線(伯耆大山-知井宮間)電化
H 4. 2.   伯備線・下石見,岸本,上溝口の3駅1線スルー化

(2)現状の線路設備

線名起点終点設計最高速度線区の最急勾配線区の最小曲線半径設計通過トン数線路等級
山陽本線岡山倉敷120km/h15.0‰340m20百トン以上1
伯備線倉敷伯耆大山120km/h25.0‰200m5-10百トン3
山陰本線伯耆大山米子120km/h10.0‰500m5-10百トン3
山陰本線米子出雲市110km/h11.0‰300m5-10百トン3
(勾配の単位は,千分率=パーミル)

(3)平面線形

半径:単位=m山陽本線
岡山-倉敷
伯備線
倉敷-伯耆大山
山陰本線
伯耆大山-出雲市
全区間
岡山-出雲市
 
400未満104m42,448m2,300m44,852m20.3%
400以上600未満259m22,715m10,536m33,510m15.2%
600以上800未満410m6,888m6,659m13,957m6.3%
800以上1200未満1,332m4,818m5,549m11,699m5.3%
1200以上2,084m4,780m5,863m12,727m5.8%
直線11,749m57,167m35,388m104,303m47.2%

(4)縦断線形

勾配:単位=‰(パーミル)山陽本線
岡山-倉敷
伯備線
倉敷-伯耆大山
山陰本線
伯耆大山-出雲市
全区間
岡山-出雲市
 
Level11,667m21,910m41,155m74,732m33.8%
2.0未満735m12,600m6,277m19,612m8.9%
2.0以上4.0未満259m18,734m3,720m22,713m10.3%
4.0以上6.0未満242m11,129m7,166m18,537m8.4%
6.0以上10.0未満820m15,561m3,147m19,528m8.8%
10.0以上20.0未満2,215m46,028m4,830m53,073m24.0%
20.0以上0m12,853m0m12,853m5.8%

(5)現行やくも号の速度制限の要因

要因/総延長:単位=km山陽本線
岡山-倉敷
伯備線
倉敷-伯耆大山
山陰本線
伯耆大山-出雲市
全区間
岡山-出雲市
全長15.9km138.8km66.3km221.0km
最高速度9.6km8.0km12.6km30.2km
曲線1.2km100.0km32.3km133.5km
加減速5.1km1.9km3.0km10.0km
分岐0.0km27.1km18.3km45.4km
勾配0.0km2.0km0.0km2.0km
要因/距離比 
最高速度60.4%5.8%19.0%13.7%
曲線7.5%72.0%48.7%60.4%
加減速32.1%1.4%4.5%4.5%
分岐0.0%19.5%27.6%20.5%
勾配0.0%1.4%0.0%0.9%

[感想と意見]

(a)かつては,複線化を中心に整備が進められていた

 伯備線の整備の歴史をひもとくと,S43年頃から,複線化を中心とした整備が進められていたようです.高速化というよりは,輸送力向上が目的だったのでしょう.

 S48年に,複線区間が備中高梁にまで伸びて,複線化工事は一段落しますが,次の整備の山は,S57年の電化ですね.電化と同時に,井倉-石蟹間,米子-安来間の複線化も実現しています.特に,井倉-石蟹間の複線化は,ルートを短絡して,新線を作る方式で行われましたので,所要時間はかなり短縮したはずです.この頃の整備は,輸送力増強というよりは,はっきりと速達化のための整備であったと思われます.

(b)伯備線は,線形が悪い

 線形の欄を見ると分かるように,伯備線は,幹線として建設されていないという理由もあってか,線形が著しく悪いですね.縦方向の線形も悪いのですが,特に平面線形がひどいです.最小半径200mとかみると,高速化が絶望的に思えてしまいます.速度制限要因を見ると,実に70%以上の区間が曲線通過制限に引っ掛かっているのですから.

 直線が57kmもあるのに,曲線通過制限がない区間は,39kmしかないということは,「直線部分はあっても,こま切れで短く,すぐに曲線に入ってしまうため,直線部分でも多くが速度を制限されて走っている」という事なんでしょうね.

(c)山陰線は分岐制限が多い

 伯備線に比べると,山陰線は少し曲線制限の比率が落ちます.それでも,まだ曲線制限が最大であることには変わりありませんが,分岐制限の比率がアップしてきます.停車場改良が進んでいないことを示しています.

 ちなみに,山陽本線(岡山-倉敷)の中間駅はすべて1線スルー化されており,分岐による速度制限は,全く受けていません.(さすが大幹線!)

(d)勾配はそれほど苦になっていない?

 最大25パーミルの勾配を持つ伯備線.20パーミル以上の勾配区間が13km弱もありますが,勾配が原因の速度制限は,たった2kmの区間しかありません.現行やくも号にとって,意外と勾配は苦になっていないようです.

(e)やっぱり曲線をなんとかしないと...

 全区間を通しても,速度制限要因の60%を占めるのですから,曲線をいかに高速で走るかで伯備線の高速化は決まってくると思われます.新線建設で曲線を極力なくすとか,曲線通過速度が+65km/h(?!)位のばけもの車両が出来れば,大分違うかな?

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2-1.最高速度の向上 by HIT [2000.7.26]

(1)整備方法

線路等級3(伯備線,山陰線)の区間における最高速度向上に伴う軌道整備
 130km/h化120km/h化
枕木種別PC枕木木枕木
枕木本数39本/25m39本/25m
レール種別50N50
道床種別砕石砕石
道床厚200mm200mm

(2)整備費用と効果

区間区間距離短縮時間工事費用(百万円)
A案(全域130km/h化)B案(一部120km/h)
岡山〜西岡山2.7km-2秒101百万円101百万円
西岡山〜庭瀬3.8km-9秒101百万円101百万円
庭瀬〜中庄4.7km-8秒101百万円101百万円
中庄〜倉敷4.7km-4秒101百万円101百万円
倉敷〜清音7.3km 597百万円597百万円
清音〜総社3.4km-4秒591百万円591百万円
総社〜豪渓4.6km 582百万円582百万円
豪渓〜日羽3.7km 570百万円570百万円
日羽〜美袋3.7km581百万円581百万円
美袋〜備中広瀬6.9km 820百万円820百万円
備中広瀬〜備中高梁4.4km 476百万円162百万円
備中高梁〜木野山4.8km 368百万円228百万円
木野山〜備中川面3.9km 343百万円204百万円
備中川面〜方谷4.7km 235百万円125百万円
方谷〜広石3.5km 272百万円177百万円
広石〜井倉4.4km 259百万円111百万円
井倉〜石蟹4.5km 211百万円323百万円
石蟹〜新見4.7km 326百万円123百万円
新見〜布原3.9km 211百万円114百万円
布原〜備中神代2.5km 155百万円111百万円
備中神代〜足立6.2km 229百万円131百万円
足立〜新郷5.8km 255百万円126百万円
新郷〜上石見3.9km 359百万円153百万円
上石見〜下石見4.9km 354百万円306百万円
下石見〜生山3.8km 168百万円121百万円
生山〜上管3.5km 293百万円215百万円
上管〜黒坂4.8km 442百万円331百万円
黒坂〜根雨7.6km 830百万円503百万円
根雨〜武庫4.7km 416百万円262百万円
武庫〜江尾2.1km303百万円224百万円
江尾〜上溝口4.3km 415百万円245百万円
上溝口〜伯耆溝口4.9km 392百万円276百万円
伯耆溝口〜岸本5.0km-4秒352百万円352百万円
岸本〜伯耆大山6.1km-8秒980百万円980百万円
伯耆大山〜東山公園3.0km-3秒681百万円681百万円
東山公園〜米子1.8km349百万円349百万円
米子〜安来8.8km-3秒662百万円662百万円
安来〜荒島4.8km-14秒534百万円534百万円
荒島〜揖屋5.6km-1秒217百万円217百万円
揖屋〜東松江3.1km-8秒374百万円374百万円
東松江〜松江6.6km-9秒441百万円441百万円
松江〜乃木2.7km 331百万円331百万円
乃木〜玉造温泉3.9km 294百万円294百万円
玉造温泉〜来待6.0km-11秒599百万円599百万円
来待〜宍道4.4km 442百万円442百万円
宍道〜荘原4.1km-1秒440百万円440百万円
荘原〜直江6.1km-7秒446百万円446百万円
直江〜出雲市5.5km-11秒316百万円316百万円
 -107秒18,920百万円16,177百万円

B案の詳細

岡山〜備中広瀬130km/h
備中広瀬〜伯耆溝口120km/h
伯耆溝口〜出雲市130km/h

[感想と意見]

(a)費用の割に効果が少ない

なんとまあ,最高速度アップというのは,費用がかかる割に,効果がないものなんですねぇ(伯備線の場合.).全区間でたったの1分47秒とは...

 しかも,効果のある区間がかなり限られており,総社-伯耆溝口間は,1秒も縮まっていません.直線部分が少なく,現在も最高速度(備中高梁-江尾間110km/h,他は120km/h)で走っていないんでしょうね.

 そのために,全区間130km/h化は無駄が多い,と部分的に120km/h化で留めたのが,B案の整備方法です.B案でも,所要時間はほとんど変化しないのに,経費は,27億円強安くなっています.B案の方がコストパフォーマンスが高いのは明らかです.

(b)計算は粗いもの

 ただ,この試算ですが,かなり大ざっぱなものです.報告書には,細かい積み上げ数値まで載っていますが,どの区間も整備キロ数に同一の単価を掛けて出しただけの数字です.特に信号系などは,駅間距離にかかわらず,どの駅間も同一金額(101百万円)を計上しています.

 また,機械的な計算のために,変な逆転現象も起こっています.最高速度が低いB案の方が安い経費で整備されて当然のはずですが,井倉〜石蟹間の整備費用は,A案211百万円に対して,B案323百万円と,B案の方が高くなっています.なぜだろうと積み上げを見て,謎が解けました.この区間,すでにPC枕木化されている部分が多くあるようです(電化時に新線として建設された区間かな?)が,A案は,PC枕木の位置調整で経費が計上してあるのに,B案は,木枕木をすべて新設ということで,計上してあるのです.つまり,B案は,「せっかくのPC枕木をひっぺがして,木枕木化するために,1億円以上余計な経費を使う」というへんてこな案になっています.実際には,そんな事はしないと思うのですが.

 ことほどさように,整備費用は,おおざっぱなものです(以下の曲線改良,停車場改良も同様です.)ので,ほんと,参考程度にしかならないと思いますが,全体の傾向等は,分かると思います.

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2-2.曲線通過速度の向上 by HIT [2000.7.26]

(1)整備手法

 高性能車両(制御付き振り子電車)の投入と,曲線改良を行う.

高性能車両の投入

曲線半径基本の曲線通過速度381系(やくも)283系(オーシャンアロー)
曲線通過速度曲線通過速度緩和曲線長
1200m以上110km/h120km/h130km/h5m以上
1000m以上105km/h120km/h130km/h15m以上
800m以上100km/h120km/h130km/h35m以上
700m以上95km/h115km/h130km/h50m以上
600m以上90km/h110km/h125km/h60m以上
500m以上85km/h105km/h115km/h60m以上
450m以上80km/h100km/h105km/h50m以上
400m以上75km/h95km/h100km/h55m以上
350m以上70km/h85km/h95km/h60m以上
300m以上65km/h80km/h90km/h65m以上
250m以上60km/h75km/h75km/h40m以上
200m以上50km/h65km/h65km/h35m以上
150m以上40km/h55km/h55km/h30m以上
100m以上30km/h45km/h45km/h30m以上

曲線改良
カント改良
PCマクラ木化
緩和曲線の延長
※緩和曲線の延長が不可能な曲線は,通過速度を落として対応(手の施しようがない.)

(2)整備費用及び効果

 高性能車両の更新費用は除く.

区間現在の曲線数曲線改良個所数曲線改良延長区間距離改良割合短縮時間工事費用
岡山〜西岡山1800m2.7km0%  
西岡山〜庭瀬1000m3.8km0%  
庭瀬〜中庄1400m4.7km0%-3秒 
中庄〜倉敷1800m4.7km0%  
倉敷〜清音443819m7.3km11%-3秒144百万円
清音〜総社800m3.4km0% 25百万円
総社〜豪渓2200m4.6km0%-5秒25百万円
豪渓〜日羽1641,228m3.7km22%-8秒193百万円
日羽〜美袋162410m3.7km70百万円
美袋〜備中広瀬384660m6.9km10%-10秒173百万円
備中広瀬〜備中高梁2661,726m4.4km39%-3秒251百万円
備中高梁〜木野山1431,280m4.8km27%-3秒167百万円
木野山〜備中川面1131,048m3.9km27%-5秒139百万円
備中川面〜方谷1600m4.7km0%-3秒16百万円
方谷〜広石141149m3.5km4%-3秒44百万円
広石〜井倉1200m4.4km0% 9百万円
井倉〜石蟹800m4.5km0%-14秒9百万円
石蟹〜新見1061,540m4.7km33%-12秒200百万円
新見〜布原1031,069m3.9km27%-21秒145百万円
布原〜備中神代700m2.5km0%-3秒6百万円
備中神代〜足立213820m6.2km13%-8秒120百万円
足立〜新郷231312m5.8km5% 67百万円
新郷〜上石見200m3.9km0%-6秒19百万円
上石見〜下石見1541,087m4.9km22%-14秒150百万円
下石見〜生山121240m3.8km6%-6秒30百万円
生山〜上管121235m3.5km7%-11秒29百万円
上管〜黒坂131240m4.8km5%-11秒30百万円
黒坂〜根雨151185m7.6km2%-20秒23百万円
根雨〜武庫1700m4.7km8%-18秒3百万円
武庫〜江尾51510m2.1km69百万円
江尾〜上溝口800m4.3km0%-5秒3百万円
上溝口〜伯耆溝口142568m4.9km12%-5秒70百万円
伯耆溝口〜岸本102599m5.0km12% 74百万円
岸本〜伯耆大山700m6.1km0% 6百万円
伯耆大山〜東山公園1200m3.0km0% 0百万円
東山公園〜米子600m1.8km3百万円
米子〜安来4041,056m8.8km12%-15秒130百万円
安来〜荒島5150m4.8km1% 6百万円
荒島〜揖屋122735m5.6km13%-11秒108百万円
揖屋〜東松江52360m3.1km12% 44百万円
東松江〜松江2400m6.6km0%-8秒0百万円
松江〜乃木600m2.7km0%-6秒0百万円
乃木〜玉造温泉900m3.9km0%-4秒0百万円
玉造温泉〜来待2400m6.0km0%-12秒0百万円
来待〜宍道111145m4.4km3%-8秒18百万円
宍道〜荘原600m4.1km0%-5秒6百万円
荘原〜直江81240m6.1km4%-9秒30百万円
直江〜出雲市800m5.5km0%-1秒3百万円
6826317,311m220.8km8%-279秒2,657百万円

[感想と意見]

(a)曲線改良は,効果あり

 伯備線は,曲線の固まりですので,曲線通過速度の向上は,相当効果がありそうです.最高速度アップよりはるかに大きな,4分39秒の短縮となっています.

(b)緩和曲線不足による改良不能個所が多い?

 しかし,です.それにしては,曲線改良個所数が少な過ぎます.個所数で,全長に対してたったの9%,曲線部分の15%の区間しか改良されません.なかには,すでに十分整備されているので,改良の必要がない曲線もあるのでしょうが,大部分は,「緩和曲線不足」だと思われます.

 緩和曲線は,直線と曲線など,曲線半径の異なる曲線同士を繋ぐとき,曲率が突然変わるのを防ぐため,間にクッションとして挟まれる連続的に曲率が変わる部分を指します.乗り心地の改善や,線路設備への負担低下のためには,この緩和曲線を十分に取る必要があります.低速走行なら気にならない曲率変化ショックも,高速走行となると,無視できなくなる(曲率変化部分でかかる横重力は,通過速度の自乗に比例する)訳ですから,高速走行すればするほど,緩和曲線を長くする必要がでてきます.

 しかし,緩和曲線を延長するという事は,前後の線路の経路にも変化が出てくる訳で,橋りょうやトンネル部分であったり,川や道路が迫っている部分では,経路変更ができず,緩和曲線の確保が不可能になります.

 伯備線は,川と並走する区間も多く,トンネル,橋りょうも沢山あり,「改良が必要なのに,緩和曲線が確保できない」区間が沢山あると思われます.折角の高性能車両を生かせないのは,なんとももったいない話です.

 緩和曲線が確保できず,スピードダウンせざるを得ない区間は,バイパスを建設するなどの手法を取らないと,もはやスピードアップは不可能,という事です.しかし,バイパス建設には,多大な経費がかかるので,おいそれとは,実施できません.亜幹線の高速化というのは,難しいものですね.

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2-3.停車場通過速度の向上 by HIT [2000.7.28]

(1)整備手法

 特急の通過駅であっても,停車場内のポイント(分岐器)通過時の制限等により,列車は減速しなければいけません.これを避けるために,以下の手法で,停車場を改良することにより,停車場内通過速度をアップします.

1線スルー化(通過車両は,常にポイントの直線側を通ることで,減速の必要がなくなる.)
ポイントの高番化(ポイントは番数が大きいほど,交差角度が浅い.つまり,曲がりが少ないため,ポイントを高速で通過できる.)

留意点

(2)整備費用及び効果

停車場現状改良
済等
改良後改良費用短縮時間
岡山側出雲市側岡山側出雲市側
岡山全列車停車    
  
庭瀬1線スルー    
  
中庄1線スルー    
  
倉敷全列車停車    
  
清音1線スルー    
 -4秒
総社1線スルー    
 -2秒
豪渓1線スルー    
  
日羽棒線   
 
美袋1線スルー    
  
備中広瀬棒線    
 -2秒
備中高梁複線スルー10#両 -16#両393百万円 
 -23秒
木野山10#両10#両 16#両16#片348百万円 
 -24秒
備中川面10#両10#両 16#両16#片452百万円 
 -8秒
方谷10#両12#片 -12#片510百万円 
 -11秒
広石1線スルー    
  
井倉(不明)片複線スルー    
  
石蟹複線スルー16#片+12#両 -16#両593百万円 
 -8秒
新見全列車停車    
  
布原(不明)片(不明)片×    
  
備中神代10#片10#片 -1線スルー172百万円 
 -13秒
足立(不明)片(不明)片×    
  
新郷(不明)片(不明)片×    
 -8秒
上石見12#両12#両 16#両12#片577百万円 
 -22秒
下石見1線スルー    
  
生山(不明)片(不明)片×    
  
上管16#片16#片 -1線スルー269百万円 
 -6秒
黒坂10#片12#片 16#両16#両411百万円 
 -9秒
根雨10#両10#両 16#両16#両794百万円 
 -13秒
武庫棒線   
 
江尾12#両12#両 16#両16#両732百万円 
 -4秒
上溝口1線スルー    
 -2秒
伯耆溝口12#両12#両 1線スルー554百万円 
 -11秒
岸本1線スルー    
 -5秒
伯耆大山全列車徐行    
  
東山公園棒線   
 
米子全列車停車    
 -2秒
安来複線スルー12#片 -16#両253百万円 
 -17秒
荒島16#片16#片 -1線スルー433百万円 
 -33秒
揖屋16#片10#両 -1線スルー345百万円 
 -23秒
東松江16#片複線スルー 16#両-210百万円 
  
松江全列車停車    
  
乃木1線スルー    
  
玉造温泉10#片複線スルー 16#片-180百万円 
 -3秒
来待複線スルー16#片 -16#両171百万円 
 -25秒
宍道10#片16#片 1線スルー536百万円 
 -21秒
荘原16#片16#片 -1線スルー363百万円 
 -33秒
直江10#両16#片 1線スルー-325百万円 
 -24秒
出雲市全列車停車    
 8,621百万円-356秒

※用語の意味
12#片...12番片分岐ポイント
16#両...16番両分岐ポイント
1線スルー...通過列車は,停車場内のポイントをすべて片分岐の直線(に近い)側を通過するように,ポイント及び信号系を変更して,停車場の通過速度が落ちないようしたもの.
棒線...停車場内にポイントが一切ない状態.通過速度は全く落ちない. 複線スルー...複線区間から駅中心まで,1線スルーである状態(この用語は,HITの造語なので,一般的な用語ではありません.)
改良済等...◎:すでに改良済み,または,全列車が停車するなどで停車場通過速度を高める必要がない. ×:改良に必要な用地の確保が困難または多大な経費がかかる等の理由により,改良ができない.
分岐器番数と交差角度の関係...[分岐器番数]=1/2*COT([交差角度]/2)
(例)16番...3.6度/12番...4.8度
COT...三角関数のひとつの逆正接(コタンジェント)のこと.正接(タンジェント,TAN)の逆数

[感想及び意見]

(a)停車場改良は,多大な効果あり

 在来線方式高速化の3手法の中で,一番大きな5分56秒もの時間短縮効果があります.これは,反面,伯備線,山陰線ではいままで停車場改良が進んでいなかったことのあらわれでもあります.停車場改良は,スピードアップにも有効ですが,乗り心地の改善にも有効(横揺れがなくなると同時に,加減速がなくなる事により乗り心地が良くなる)なので,ぜひとも進めてもらいたい整備です.

(b)とはいえ,1駅ごとの短縮時間は短い

 全体としては,短縮効果の高い停車場通過速度改良ですが,1駅ごとの時間短縮効果は,それほどでもありません.最大の区間で33秒ほど.これは,停車場改良しても,前後にカーブがあるなど,スピードアップを最大限に享受できないのが,原因のようです.報告書についていた停車場改良図をみても,改良によって,停車場前後が全くの直線になるのは,荒島駅のみ.他は,前後や駅構内に,曲線が残ります.やはり,「伯備線・山陰線の高速化は,曲線がネック」ですね.

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2-4.在来線方式高速化のまとめ by HIT [2000.7.28]

(1)時間短縮効果一覧

区間区間
距離
現行計画短縮時間(秒)表定速度向上
所要時間表定速度所要時間表定速度最高速度曲線通過停車場
岡山〜西岡山2.7km2:3064.8km/h2:2865.7km/h-2-2  +0.9km/h
西岡山〜庭瀬3.8km1:55119.0km/h1:46129.1km/h-9-9  +10.1km/h
庭瀬〜中庄4.7km2:25116.7km/h2:14126.3km/h-11-8-3 +9.6km/h
中庄〜倉敷4.7km3:5572.0km/h3:5173.2km/h-4-4  +1.2km/h
倉敷〜清音7.3km5:5075.1km/h5:4775.7km/h-3 -3 +0.6km/h
清音〜総社3.4km1:50111.3km/h1:42120.0km/h-8-4 -4+8.7km/h
総社〜豪渓4.6km3:0092.0km/h2:5395.7km/h-7 -5-2+3.7km/h
豪渓〜日羽7.4km4:05108.7km/h3:57112.4km/h-8 -8 +3.7km/h
日羽〜美袋
美袋〜備中広瀬6.9km4:1099.4km/h4:00103.5km/h-10 -10 +4.1km/h
備中広瀬〜備中高梁4.4km3:1083.4km/h3:0585.6km/h-5 -3-2+2.3km/h
備中高梁〜木野山4.8km4:1069.1km/h3:4477.1km/h-26 -3-23+8.0km/h
木野山〜備中川面3.9km3:2568.5km/h2:5679.8km/h-29 -5-24+11.3km/h
備中川面〜方谷4.7km3:5572.0km/h3:4475.5km/h-11 -3-8+3.5km/h
方谷〜広石3.5km3:0568.1km/h2:5173.7km/h-14 -3-11+5.6km/h
広石〜井倉4.4km3:1581.2km/h3:1581.2km/h    +0.0km/h
井倉〜石蟹4.5km2:4598.2km/h2:31107.3km/h-14 -14 +9.1km/h
石蟹〜新見4.7km4:0569.1km/h3:4575.2km/h-20 -12-8+6.1km/h
新見〜布原3.9km3:3066.9km/h3:0974.3km/h-21 -21 +7.4km/h
布原〜備中神代2.5km2:1069.2km/h2:0770.9km/h-3 -3 +1.6km/h
備中神代〜足立6.2km5:1072.0km/h4:4977.2km/h-21 -8-13+5.2km/h
足立〜新郷5.8km4:4573.3km/h4:4573.3km/h    +0.0km/h
新郷〜上石見3.9km3:1572.0km/h3:0177.6km/h-14 -6-8+5.6km/h
上石見〜下石見4.9km4:2067.8km/h3:4478.8km/h-36 -14-22+10.9km/h
下石見〜生山3.8km3:4062.2km/h3:3463.9km/h-6 -6 +1.7km/h
生山〜上管3.5km2:5572.0km/h2:4476.8km/h-11 -11 +4.8km/h
上管〜黒坂4.8km3:3580.4km/h3:1887.3km/h-17 -11-6+6.9km/h
黒坂〜根雨7.6km5:3082.9km/h5:0190.9km/h-29 -20-9+8.0km/h
根雨〜武庫6.8km5:0580.3km/h4:3489.3km/h-31 -18-13+9.1km/h
武庫〜江尾
江尾〜上溝口4.3km2:5588.5km/h2:4693.3km/h-9 -5-4+4.8km/h
上溝口〜伯耆溝口4.9km3:1590.5km/h3:0893.8km/h-7 -5-2+3.4km/h
伯耆溝口〜岸本5.0km3:00100.0km/h2:45109.1km/h-15-4 -11+9.1km/h
岸本〜伯耆大山6.1km3:4597.6km/h3:32103.6km/h-13-8 -5+6.0km/h
伯耆大山〜東山公園4.8km3:3082.3km/h3:2783.5km/h-3-3  +1.2km/h
東山公園〜米子
米子〜安来8.8km6:1085.6km/h5:5090.5km/h-20-3-15-2+4.9km/h
安来〜荒島4.8km3:0096.0km/h2:29116.0km/h-31-14 -17+20.0km/h
荒島〜揖屋5.6km4:0084.0km/h3:15103.4km/h-45-1-11-33+19.4km/h
揖屋〜東松江3.1km2:1085.8km/h1:39112.7km/h-31-8 -23+26.9km/h
東松江〜松江6.6km4:4084.9km/h4:2390.3km/h-17-9-8 +5.5km/h
松江〜乃木2.7km2:2567.0km/h2:1969.9km/h-6 -6 +2.9km/h
乃木〜玉造温泉3.9km2:4087.8km/h2:3690.0km/h-4 -4 +2.3km/h
玉造温泉〜来待6.0km3:35100.5km/h3:09114.3km/h-26-11-12-3+13.8km/h
来待〜宍道4.4km3:2079.2km/h2:4794.9km/h-33 -8-25+15.7km/h
宍道〜荘原4.1km3:3568.7km/h3:0878.5km/h-27-1-5-21+9.9km/h
荘原〜直江6.1km4:5075.7km/h4:0191.1km/h-49-7-9-33+15.4km/h
直江〜出雲市5.5km4:3073.3km/h3:5484.6km/h-36-11-1-24+11.3km/h
220.8km2:42:4581.4km/h2:30:2388.1km/h-742-107-279-356+6.7km/h

(2)総括表

 岡山〜倉敷倉敷〜新見新見〜伯耆大山伯耆大山〜出雲市合計
最高速度向上短縮時間(分:秒)0分23秒0分04秒0分12秒1分08秒1分47秒
事業費(億円)4億円52億円45億円61億円162億円
効果(秒/億円)5.80.10.31.10.7
曲線通過速度向上短縮時間(分:秒)0分03秒1分09秒2分08秒1分19秒4分39秒
事業費(億円)0億円15億円8億円4億円27億円
効果(秒/億円) 4.616.019.810.3
停車場改良短縮時間(分:秒)0分00秒1分22秒1分33秒3分01秒5分56秒
事業費(億円)0億円23億円35億円28億円86億円
効果(秒/億円) 3.62.76.54.1
合計短縮時間(分:秒)0分26秒2分35秒3分53秒5分28秒12分22秒
事業費(億円)4億円90億円88億円93億円275億円
効果(秒/億円)6.51.72.63.52.7

[参考]別線短絡新線を建設した場合の総括表

※新見-江尾間(約34km.現行より約20kmの短縮)に単線高速新線(全区間130km/h走行可能)を建設すると仮定.
 現行より約28分の時間短縮が可能.
 全区間トンネルとし,トンネル単価20〜30億円と仮定した場合の総工事費は,700〜1,000億円となる.
 以下の総括表では,中間の850億円を採用している.

 岡山〜倉敷倉敷〜新見新見〜伯耆大山伯耆大山〜出雲市合計
最高速度向上短縮時間(分:秒)0分23秒0分04秒0分12秒1分08秒1分47秒
事業費(億円)4億円52億円19億円61億円136億円
効果(秒/億円)5.80.10.61.10.8
曲線通過速度向上短縮時間(分:秒)0分03秒1分09秒0分10秒1分19秒2分41秒
事業費(億円)0億円15億円1億円4億円20億円
効果(秒/億円) 4.610.019.88.1
停車場改良短縮時間(分:秒)0分00秒1分22秒0分22秒3分01秒4分45秒
事業費(億円)0億円23億円13億円28億円64億円
効果(秒/億円) 3.61.76.54.5
短絡新線短縮時間(分:秒)  28分00秒 28分00秒
事業費(億円)  850億円 850億円
効果(秒/億円)  2.0 2.0
合計短縮時間(分:秒)0分26秒2分35秒28分44秒5分28秒37分13秒
事業費(億円)4億円90億円883億円93億円1,070億円
効果(秒/億円)6.51.72.03.52.1

[感想と意見]

(a)区間によって効果に差がある

 時間短縮効果を見ると,区間によって,かなり差があることが分かります.足立〜新郷間のように,1秒も短縮しない区間もあれば,揖屋〜東松江間のように,表定速度が27km/hもアップした区間もあります.全体的に,停車場改良による時間短縮効果が大きい山陰線区間のスピードアップが目立ちます.

(b)短絡新線の建設が必要

 全体で,12分22秒の短縮が可能ですが,このうち半分近くは,米子-出雲市間の短縮時間なので,岡山-米子間の短縮時間を見ると,たったの6分54秒に過ぎません.つまり,現行の1時間58分(最速列車)が,1時間51分になるだけであり,インパクトの少さは,否めません.

 で,参考として上がっている,別線短絡新線併用が検討されることになります.この報告書では,地質調査等の詳しい調査を行っておらず,仮定の上に仮定を積み上げた数字ですが,短絡新線を併用すると,全体で37分30秒短縮され,岡山-米子間は,現状より31分45秒短い1時間26分で結ばれることとなります.

 この程度まで高速化すれば,後述するフリーゲージトレインの導入との併用によって,新大阪-米子間が,ノンストップで,2時間11分(新幹線部分を300km/h走行した場合.)で結ばれ,新大阪-出雲市間ですら2時間55分と2時間を切る時間で結ばれることとなります.地域に相当のインパクトを与えることができるでしょう.

 短絡新線建設まで行うとなると,総事業費が1,000億円(車両代を除く.)に膨れ上がります.しかし,別レポートで試算しているように,30分以上の時間短縮+直通化によるJR西日本の経営改善効果は劇的であり,半額の500億円程度は優に負担できることから,実質的な地方自治体の負担金額は,短絡新線なしの場合とあまり変わらないと思われます.

 そうなれば,短絡新線を作らない手はない訳でして,伯備線の高速化は,「在来線高速化+フリーゲージトレイン+短絡新線」という3つを複合した方式がベストであると,私は確信しています.

 ただし,短絡新線の建設は,問題もはらんでいます.バイパス建設によって不要(?)となる旧来の線区の問題です.全部廃止,部分廃止,三セク化等いろいろな方法が考えられます.その場合には,地元の反発も十分に考えられますので,こうした問題をクリアしていかないと,バイパス建設は実現できません.

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