曜日別ノーマイカーデーのすすめ

最終更新:[1999.9.29]
 このレポートは、従来のノーマイカーデーを発展させ、都市問題と交通問題の 解決の切り札にしようという「曜日別ノーマイカーデー」の提案である。
1.ノーマイカーデーの現状
[ 1-1.ノーマイカーデーとは | 1-2.ノーマイカーデーの意義 ]
2.ノーマイカーデーの問題点
[ 2-1.ノーマイカーデーは強制ではない | 2-2.参加者がメリットを実感できない | 2-3.一時的な効果しかない ]
3.曜日別ノーマイカーデーの導入
[ 3-1.曜日別ノーマイカーデーとは | 3-2.曜日別ノーマイカーデーのメリット ]
4.費用負担
[ 4-1.必要経費の試算 | 4-2.誰が費用負担するべきか | 4-3.行政の負担の費用対効果 ]
5.どんな都市が効果的か
[ 5-1.都心部の駐車場代が高い | 5-2.都心部の再開発計画がある | 5-3.都心部に渋滞が発生しており、10%程度の車両密度減少で渋滞が解消する ]
6.まとめ

1.ノーマイカーデーの現状

1-1.ノーマイカーデーとは

 行政が中心になって、日や曜日を指定して「この日には、マイカーを使わない」という運動。

1-2.ノーマイカーデーの意義

1-2-1.道路渋滞の解消

 通勤時間帯の都心部は、マイカー通勤の車両で、渋滞が発生する。マイカー通勤は、大きな車両に一人しか乗っていないことが多く、道路占有効率が悪いため、渋滞が発生する。渋滞は、道路輸送効率を低下させ、経済活動の低下につながるので、避けなければならない。

1-2-2.排気ガスの減少

 通勤用マイカーは、輸送人員(重量)の割には、排出ガス量が多い。黒煙をまき散らす大型バスやトラックよりも悪い。地球環境保全のためにも、排気ガス減少には、マイカー自粛政策が不可欠である。

1-2-3.都心部の空洞化防止

 都心部へのマイカー通勤が増えれば、駐車場の確保等で、多大な経費とスペースが必要となる。そのため、都心部から事業所が郊外へ移転するなど、都心部の空洞化の可能性が出てくる。それを防ぐためにも、マイカー通勤自粛運動が必要である。

1-2-4.公共交通の維持

 都会地ではともかく、地方都市レベルとなると、都市圏内交通(主にバス)がマイカーの普及に伴い、採算悪化で、路線を維持できなくなってきている。マイカーを利用できない交通弱者のためにも、公共交通を維持することは必要である。ノーマイカーデーには通勤に公共交通を利用することになるので、公共交通の維持に役立つ。

2.ノーマイカーデーの問題点

 1-2で見たように、ノーマイカーデーの実施には、数々のメリットがあるが、思ったほど定着していない。その理由はいくつかあるが、大きなものは、以下の2点である。

2-1.ノーマイカーデーは強制ではない

 行政が主体で行っているノーマイカーデーではあるが、法律や条例で強制しているところはなく、参加者(事業所、個人等)の自主的協力によって実施されている。そのため、実施のためのモチベーションが低下すると、維持できなくなる可能性が高い。

2-2.参加者がメリットを実感できない

 メリットがいろいろあるノーマイカーデーではあるが、参加者自身にメリットを実感できないのが、モチベーションが維持できないひとつの理由である。排気ガスが減少するといっても、目に見えて減る訳ではなく、また、渋滞が解消したとしても、参加者はその日にはマイカーの乗っていない(当たり前ですが)ので、そのメリットを享受できない。

 また、強制ではないので、ノーマイカーデーに参加しない者もある訳で、不参加者は、ノーマイカーデー実施により、渋滞が解消した道路をスイスイと通勤できる。つまり、罰則もないノーマイカーデーでは、他の人が参加して、自分は参加しないのが一番メリットを享受できることになる。これでは、参加者が「参加した方が損だ」という逆メリットを感じても仕方がない。

2-3.一時的な効果しかない

 ノーマイカーデーは多くても週に1回程度、普通月1回程度の頻度で実施される。実施された日には、確かにマイカーが減り、渋滞が解消し、公共交通の利用も増えるが、次の日には元どおりになってしまう。つまり、効果が一時的でしかなく、実験的な意味合いしかない。

3.曜日別ノーマイカーデーの導入

 以上のように、現状のノーマイカーデーでは、諸問題を解決できる訳ではなく、また、長続きも難しいことが分かる。そこで、次にあげる「曜日別ノーマイカーデー」を現状のノーマイカーデーに代わって導入すること提案したい。

3-1.曜日別ノーマイカーデーとは

 いままでのノーマイカーデーは、特定の日に、参加者が一斉にマイカー通勤を自粛していた。

 この曜日別ノーマイカーデーでは、参加者を5つのグループに分け、Aグループは毎週月曜日がノーマイカーデー、Bグループは、毎週火曜日が、C、D、Eグループはそれぞれ水曜日、木曜日、金曜日がノーマイカーデーとする。

 これにより、全体で見ると、毎日ノーマイカーデーを実施しているような効果がありながら、個人個人にとっては、週1回しかノーマイカーデーは回ってこず、その他の日は、マイカー通勤できることとなる。

3-2.曜日別ノーマイカーデーのメリット

3-2-1.参加者がメリットを実感できる

 この方式の最大の特長は、「ノーマイカーデー参加者がメリットを実感できる」という点である。つまり、グループ別に実施するために、自分のグループのノーマイカーデー以外には、マイカー通勤ができるが、その日には、別のグループがノーマイカーデーを実施している。そのため、渋滞は実施前よりも少なくなっており、渋滞解消した道路をスイスイと通勤できる。ノーマイカーデーでがまんするのが週1回であるのに対して、メリットを享受できるのが週に4回もあるので、メリットは十分に実感できる。したがって、制度維持のためのモチベーションも維持しやすい。

3-2-2.駐車場を減らせる

 都心部の事業所にとって、職員用駐車場のような直接利益に結び付かない土地はなるべく減らしたい。もし、事業所の全従業員にこの曜日別ノーマイカーデーに参加させれば、職員用駐車場を20%削減できる。削減した土地を生産、販売などの施設に転用したり、売却あるいは、借地を返上すれば、収益改善に結び付く。

 また、まちづくりの観点からも、都心部の駐車場が削減されて、有効利用されることで、都心部が活性化することとなり、非常に望ましい。

3-2-3.本当に公共交通の維持に役立つ

 特定の日だけのノーマイカーデーでは、その特定の日だけは公共交通利用者が増えるが、他の日は元に戻ってしまう。これでは、公共交通の事業者の経営も安定しない。余りにノーマイカーデーと他の日との落差が激しいと、車両や人員のアンバランスが生じ、逆に公共交通事業者の経営を圧迫することすら考えられる。

 しかし、この曜日別ノーマイカーデーであれば、毎日、ほぼ一定数の参加者が公共交通を利用する訳であり、公共交通事業者の真の経営安定に結び付く。


4.費用負担

4-1.必要経費の試算

 曜日別ノーマイカーデーの維持のために必要な経費を試算してみよう。基礎数値(平均値)を以下のとおりと仮定する。

参加者数:5000人
職員用駐車場代:1万円/月
公共交通利用代:片道400円(月8回利用。回数券利用で月約3000円)

駐車場の減少による経費削減額:1万円*5000人/5=1000万円/月
公共交通利用による交通費増加額:3000円*5000人=1500万円/月

差引負担増加額500万円/月

 つまり、このモデル計算では、曜日別ノーマイカーデーの実施によって、地域全体としては月500万円の負担増となる。

4-2.誰が費用負担するべきか。

 この曜日別ノーマイカーデーの実施によって、メリットを受け、費用負担の義務が生じるのは、参加者、参加事業所、行政の三者である。渋滞が解消する参加者も、はたまた職員用駐車場を減らして生産活動に転化できる事業所も、公共交通維持や、都心部の活性化ができる行政もそれぞれ負担者にふさわしい。

 しかし、渋滞の解消は、参加者以外のマイカー利用者にもメリットがあることを考えると、参加者だけに負担を強いることは、公平さの確保の観点から難しい。駐車場を生産活動に転化できる事業所には、個別的利益があるので、負担は可能であるが、そのメリットの範囲内でしか負担はできず、多額の負担は難しいと言わざるを得ない。

 結局、行政がこの曜日別ノーマイカーデーの費用は負担するのが、一番公平で望ましいと言える。

4-3.行政の負担の費用対効果

 さて、曜日別ノーマイカーデーを実施するための費用(具体的には、ノーマイカーデー実施に伴う公共交通費の増加分の補てん)を行政がすることの費用対効果はどんなものであろうか。

 4-1で試算した例では、行政の年間負担額は6000万円にのぼる。一見、かなり多いようだが、そうだろうか。

 この政策実施により、金銭的に一番メリットを受けるのは、公共交通機関である。例では、年間1億8000万円の増収になる。公共交通の生活路線への赤字補てんは、行政が行っているが、この曜日別ノーマイカーデーを行政が費用負担して実施した場合を見方を変えてみると、行政はたった6000万円の負担で、公共交通へ1億8000万円の赤字補てんができる、ということになる。通常の補助金の3倍の効果がある訳であり、「公共交通維持のための補助金」として割りきって考えても、十分な費用対効果を有する事業である。

 これ以外にも、渋滞の解消による生産活動の効率化、都心部の駐車スペース減少による都心部活性化などの副次的効果がある事業であり、行政の事業としては、かなり効率が良い部類に入る。


5.どんな都市が効果的か

 もちろん、以上の試算は、机上のものであり、実際のパラメータいかんでは、効果が少ない都市もあれば、もっと効果がある都市もある。どんな都市が効果が大きいかというと、以下のようなものである。

5-1.都心部の駐車場代が高い

 駐車場代が高ければ高いほど、削減される経費が大きくなる。都心の地価が高い都市ほど、効果は大きい。

5-2.都心部の再開発計画がある

 都心部の駐車場を削減することにより、都心部に未利用地が発生する。しかし、都心部の経済活動が活発ではなく、未利用地がそのまま放置されるようでは、税金を投入した効果が少ない。大規模な都心部の再開発計画があるか、少なくとも、各事業所単位での開発計画があることが望ましい。

5-3.都心部に渋滞が発生しており、10%程度の車両密度減少で渋滞が解消する

 実際に都心部に、渋滞が発生しており、この曜日別ノーマイカーデーの導入によりそれが解消しないと、参加者のモチベーションが長い続きしないし、第一、納税者が「多額の税金を公共交通につぎ込んだ割には、効果がない」と納得しないだろう。

 つまり、現在、渋滞があり、なおかつ、渋滞時の通勤車両数を10%程度減らすことで、渋滞が解消する、という微妙な渋滞状況にある都市が理想と言える。

 こういうと、結構条件が狭そうであるが、実はそれほどでもない。実際の渋滞は、5%から10%の車両を削減すれば、解消するものがほとんであるからである。

 渋滞は、車両密度が増えると、線形的に段階的に起こると思われがちであるが、実は、そうではない。車両密度をゼロから徐々に増やしていっても、特定の密度までは、渋滞は一切起こらず、ある密度以上になると、とたんに渋滞が発生する。つまり、発生直前のスイスイ流れている時の車両密度と、渋滞発生時の車両密度は、1%も差がないのである。(あくまでも理論上の話であり、実際には、数パーセントのブレはありうる。)つまり、10%程度も車両密度を下げれば、ほとんどの渋滞は解消されるのである。

 ただし、だからといって、すべての都市で、曜日別ノーマイカーデー実施によって、渋滞が永久に解消する訳ではない。渋滞解消によって、いままで公共交通で通っていた人が、便利になったマイカー通勤にかわったり、時差出勤をやめる人が出てきて、新たなマイカー流入が起きる可能性があるからである。この当たりは、都市の特性を把握した上で、普通のノーマイカーデー実験をして、どのような動きがあるのか、事前に良く観察する必要がある。

 また、新規のマイカー流入を防ぐなんらかの別の施策を併用する必要もある。


6.まとめ

 以上、曜日別ノーマイカーデーの効果を検討してきた。この施策は、お金の移動だけを取り上げると、「都心部の駐車場代という不労所得(不動産所得)を取り上げ、公共交通維持の補助金にぶち込む」制度とも言える。うまく機能すれば、都心部の活性化、公共交通維持、環境保全など、多方面に効果がある施策である。数々の利害調整を乗り越え、実施する都市が出てくることを望んで止まない。

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