東京-米子便にJALの参入を

By HIT[1999.10.5]

はじめに

 米子空港の活性化を考える上で、米子空港の利用の大半(7割以上)を占める東京-米子便の利用促進は欠かせません。そこで、私は、東京-米子線をダブルトラック化(同一路線を2社以上が運行すること)し、JALが新規参入するよう働きかけるよう提案します。

 新規参入によるダブルトラック化のメリットは、以下の通りです。

1.競争による実質運賃の低下
2.増便による輸送力強化
3.空港ビルの空きスペース対策

 順にダブルトラックが必要な理由を説明しましょう。


競争による実質運賃低下

 ダブルトラックの最大のメリットは、これです。独占路線よりも競合路線の方が、実質運賃が低くなるのは、経済の法則からいって当たり前であり、事実、航空運賃自由化以降の運賃の推移からも、これは如実に現れています。利用促進には、運賃の低下が一番であり、ダブルトラック化により、運賃低下が起これば、利用者はそれにつれて増えることが十分に期待されます。

増便による輸送力強化

いくら潜在利用者があっても、物理的に座席が供給されないと、利用は頭打ちになります。1998年度の東京-米子便の輸送実績は、342,011人です。東京-米子線は、近年毎年平均7%以上で利用が伸びており、今後は、機材の大型化か増便がないと需要が供給においつかない事態も予想されています。

 とはいえ、1999年7月からANKの親会社であるANAが運行を肩代わりし、A320より大型の機材が投入されることになり、1日4便のままでも、米子空港乗り入れが可能な最大機材(B767-300,284座席)で運行すれば、年間829,280座席が供給できますから、このままのペースで需要が増えてもあと5年程度は、パンクする心配はありません。

 しかし、このホームページの各種提案(?)や、地元自治体や経済界が行う利用促進策が功を奏して、想定以上に利用者が増えることは十分に考えられます。そうなれば、東京-米子便の増便は避けて通れません。

 常識的に考えて、増便の要望は、現在運行している全日空(ANA)に行うのが筋です。しかし、ANAによる増便は、羽田空港の発着枠が限られている現状から、ハードルが高いです。

 羽田空港の発着枠は、現在満杯であり、ぎりぎりで運用されています。2000年春に、新滑走路が供用開始され、1日40往復の枠が拡大します。この時がチャンスですが、実はANAに割り当てられる枠はほとんどないことが今から予想されています。

 実は、1997年の春にも、羽田空港の発着枠は40往復増加しました。この時の各航空会社グループの割当ては、以下の通りでした。

ANAグループ3往復
JASグループ13往復
JALグループ12往復
新規参入6往復
(注:政策枠の9往復を除く。)

 これは、運輸省が競争を促すために、国内輸送の半数を占めるANAグループを冷遇し、他のグループに傾斜配分したためです。2000年の枠の配分でもこの原則は変わらないと思われ、ANAグループに割当てられるのは、3-4往復程度だと思われます。この貴重な枠が米子に回ってくるかというと、確率は低いと言わざるをえません。

 そこにいくと、JASやJALには、かなりの枠が今回も割当てられると思われ、米子便の増便を望むのであれば、ANAよりは、他の航空会社に要望した方が実現性が高いことになります。


空港ビルの空きスペース対策

 現在の米子空港ビルが建てられた時には、米子空港は山陰で唯一ANA,JASの両社が乗り入れている空港であり、事務スペース等が、2社分取って作られています。しかし、1999年春にJASが撤退したために、現在は、航空会社スペースが1社分丸々空き家になっています。

 空港ビルは、三セク会社が運営していますが、当然ながら、航空会社スペースは埋まることを前提に経営計画を立てているはずで、これらの家賃収入がなくなるのは、かなり痛いです。

 従って、新規参入航空会社が乗り入れて空港のスペースを借りるようになることは、空港ビルの経営安定にも大いに役立つのです。

 ただし、昨今の航空会社の経営合理化状態から見れば、東京-米子便の高々1日2往復(HIT予想)のために、新規参入航空会社が地上職員を張り付けるのは、かなり無理っぽいです。側面支援として、その会社およびグループ会社の米子空港乗り入れを支援して、コスト割れしないようにする必要があります。


なぜJALか

 東京-米子線に新規参入を促すとすると、JAL,JASでもどちらでもいいはずです。なぜJALがふさわしいのでしょうか。

 JASは、つい最近に米子空港から撤退したばかりであるのと、米子空港と競合する出雲空港は、JASの金城湯池であり、米子へ進出は、共食い状態になりますから、メリットよりもデメリットが多いことを考えると、JALの方がふさわしいと言えます。

 JALが乗り入れるとして、系列の他社の米子空港乗り入れを支援して、JALの地上職員がフルに働けるような状況を作り出す必要があるでしょう。

 想定される路線は以下のとおりです。

J-AIR広島西-米子1日2往復
J-AIR大阪-米子1日2往復
JTA沖縄-米子週4日運行(季節運行)

JALにとって魅力的な路線か

 航空業界も、需給調整が廃止され、路線への新規参入、撤退が自由になることから、地元から要望があったからといって、採算性を無視して、ホイホイ路線を開設することはありません。1997年の増便時には、自治体の航空会社詣でが話題になりましたが、今回は、それほど盛り上がっていないのも、そのためです。

 したがって、東京-米子便に新規参入を、と要望してみたところで、航空会社側にメリットがなければ、無駄です。では、JALにとって、東京-米子便は、魅力的な路線なのでしょうか。

ビジネス中心の路線であり、客単価が高い
米子空港利用者アンケートの結果を見ても、東京-米子便は、観光利用が2割以下と、観光地山陰にしては低く、ビジネス利用が5割以上を占めるビジネス路線です。したがって、団体割引旅客が少なく、客単価が高い路線(=儲かる路線)ということになります。事実、東京-米子便は、1999年7月までANAの子会社ANKのドル箱路線だったのですが、親会社のANAが路線委譲を受けて運行に乗り出したことからもそれはわかります。JALにとっても、客単価の高い旅客が多いこの路線は魅力的なはずです。
需要のパイが大きい
こういうと、そんなばかな、と言われるかも知れませんが、米子空港と出雲空港は、実質的に競合空港とみなしてもいい程の距離しか離れていません。つまり、営業の仕方次第では、東京-米子のANAの年間34万人だけでなく、東京-出雲の年間43万人すら、奪えるパイになりうる訳です。合計年間80万人近い路線という訳ですから、JALのブランド力からすれば、当初B767で1日1往復程度(搭乗率65%として年間12万人程度)、将来的には2往復(同25万人)程度の旅客を集めることは、不可能ではないと思われます。
空港施設が格安で利用できそう
新規参入で困ることとしては、空港施設に参入の余地がない場合がある、ということです。チェックインカウンターなど、どうしてもスペースがない場合には、既存航空会社にチェックインを委託することになりますが、重要な顧客情報がライバル企業の筒抜けになる可能性もあり、おいそれとはできません。

 そこに行くと、米子空港は、幸いにも(?)1999年春にJASが撤退したチェックインカウンターと事務室がそっくり空いています。新規参入会社が大きな工事をしなくても、そのまま空港施設が使えるのです。

 更にいえば、元JASが使っていたスペースは、完全な空き家になっている訳で、空港ビル会社にとっては、家賃収入が途絶えて、困っているはずです。そこで、家賃を大幅に値引いてでも、新規航空会社に貸そうという意欲が沸くのは当然ですから、家賃交渉は、航空会社有利に進むはずです。既存のANAへの影響を考えても、50%引きまでならば、空港ビルは、空き家にしておくよりも増収です。きっといい条件で借りられるでしょう。

 全国を見渡してみても、JALが新規参入するに足る条件を満たした路線はそれほどありません。空港施設の使用料や、地元の応援体制なども条件次第では、JALが山陰で初めて米子空港に乗り入れる可能性は、あると言えます。

実際の運行体制は

 では、JALが参入するとして、どのような運行形態になるのでしょうか。

 新規参入会社が採算を取るためには、1日2便程度の便数が必要になります。しかし、現在の米子-東京線の輸送実績(年間34万人)に、JALが1日2便で参入して、20万人以上の旅客を奪うというのは、想定しにくいため、当面は、1日1便の運行になるでしょう。そして、頃合を見て、1日2便へ増便する、というスタイルになると思います。


おわりに

 1997年の羽田空港の発着枠拡大時の自治体の航空会社詣でのすさまじさを知る身としては、今回の静けさは異様でさえあります。(本当は今回の姿が正常なんですが。)不況で、航空需要がそれほど伸びていないため、現状の発着枠で足りている、というのと、航空会社が採算性を重視しているので、要望の効果が低くなって来ている、という二つの理由があるようです。

 しかし、不況がいつまでも続く訳ではないですし、羽田空港の発着枠増加は、今度こそ打止めです。地元路線がパンク寸前になってから、航空会社に要望しても、手遅れになる可能性は高いのです。

 こういう時期だからこそ、積極的に航空会社に働きかけて、東京-米子線の新規参入による増便を実現する必要があると思います。

 また、新規参入してもらえば、それで終わり、という訳ではありません。採算の取れない1日1便時代をサポートするために、前述の系列航空会社の乗り入れへ補助金を出すほか、利用促進策など、地元としても、新しいパートナーを支援して盛り上げていく必要があります。

 地元と航空会社(既存の会社も新規参入の会社も)が手を取り合って、米子空港の利用促進により、山陰の振興を図っていく必要があると思います。


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